訪問介護の人員基準は、管理者1名・サービス提供責任者(以下、サ責)・訪問介護員等(常勤換算2.5以上)の3職種を揃えることです。サ責は、前3か月の平均利用者数40人ごとに1人以上が必要です。
基準を下回った状態が続くと、行政指導や指定の取消しにつながるおそれがあります。
この記事を読むとわかることは、次の3点です。
- 常勤換算2.5の計算手順
- サ責の必要人数の求め方
- 令和6年4月に変わった管理者の兼務範囲
訪問介護の人員基準で揃える3職種
訪問介護事業所が指定を受けて運営するには、3職種の配置要件を満たし続けることが必要です。まず3職種の要件を一覧で確認してください。
| 職種 | 配置要件 | 資格要件 |
|---|---|---|
| 管理者 | 常勤専従1名(支障なき場合は兼務可) | なし(常勤であること) |
| サービス提供責任者 | 原則として常勤の訪問介護員等から、前3月平均利用者数40人ごとに1名以上 | 介護福祉士・実務者研修修了者・旧基礎研修修了者・旧1級課程修了者 |
| 訪問介護員等 | 常勤換算方法で2.5以上(サ責含む) | 介護福祉士・介護職員初任者研修修了者・実務者研修修了者・旧2級課程修了者など |
表の「旧」が付く資格は、いまは新たに取れない以前の制度の資格です。補足が3点あります。
- 管理者に資格の定めはなし
- 初任者研修修了者はサ責になれない
- 生活援助従事者研修は生活援助のみ
ぺんすけ管理者って、介護の資格がなくてもなれるんですか?
管理者に資格要件はありません。厚生労働省の解釈通知(老企第25号)には「管理者は訪問介護員等である必要はない」と明記されています。常勤で専従の体制を維持できることが唯一の条件です。
初任者研修修了者はサ責になれません。訪問介護員等としては算入できますが、サ責には介護福祉士か実務者研修修了者(またはこれに相当する旧資格)が必要です。採用時に資格を確認してください。
生活援助従事者研修は、掃除・調理などの生活援助だけを担当できる資格です。修了者は身体介護を担えないため、身体介護が中心の事業所では別にヘルパーを配置する必要があります。



キャリアアドバイザー時代の経験からいうと、ぴったり基準をクリアしているだけの職場より、少し余裕をもって人員を揃えている職場のほうが、ヒヤリハットが少なくスタッフも長続きしていました。
訪問介護員等の常勤換算2.5の数え方
常勤換算とは、職員全員の勤務時間を合わせると、フルタイムの職員何人分になるかを表す数字です。
計算式は「事業所全体の総勤務時間数 ÷ 常勤所定時間数」です。常勤所定時間数とは、就業規則で決めたフルタイム職員1人の勤務時間のことです。


ここでは常勤換算2.5の数え方を、3ステップで紹介します。
①:全員の月間勤務時間数を合計する
常勤・非常勤・登録ヘルパーを問わず、訪問介護に従事した時間を1つの数字にまとめることが出発点です。常勤換算は個人の雇用形態ではなく、事業所全体の総勤務時間数を分子にする計算だからです。
1人あたり算入できる上限は、自事業所の常勤所定時間数までです。常勤所定時間が月160時間なら、どれだけ多く働いても1人分の算入は160時間が上限になります。管理者を兼ねて訪問に出る人も同じ上限です。
合計できる時間の範囲は、次の2つです。
- サービス提供に従事する時間
- 提供のための準備等の時間(待機を含む)
登録ヘルパーだけは数え方が別なので、3つ目のステップで説明します。
たとえば常勤ヘルパーAさんが月160時間、非常勤ヘルパーBさんが月60時間勤務したとします。
合計の分子は160+60=220時間で、常勤所定時間が160時間なら220÷160=1.375です。
2.5に届かないため、残りの1.125以上を登録ヘルパーなどで確保する必要があります。
②:合計を事業所の常勤所定時間で割る
合計した時間数を、自事業所の常勤所定時間(1か月分)で割ると常勤換算値が出ます。指定居宅サービス等基準が「勤務延時間数÷常勤の従業者が勤務すべき時間数」という計算式を定めているからです。
2.5以上なら人員基準を満たしています。小数点以下は切り捨てせず、計算値のままで2.5と比較してください。
常勤所定時間は事業所の就業規則によって異なります。注意点は2点です。
- 週所定時間が32時間未満なら32時間として計算する
- 月の常勤所定時間は就業規則の定めによる
1つ目は、割る数が小さくなりすぎないためのルールです。週30時間を常勤としている事業所でも、週32時間を基準に計算します。
仮に常勤の週所定時間が40時間(月160時間)の事業所で、全員の勤務延時間数の合計が410時間だとします。
410÷160=2.5625となり、2.5以上なので基準を満たしています。
常勤換算はこのように小数になるため、端数は切り捨てせず計算値のまま2.5と比較してください。
③:登録ヘルパーの稼働時間も加算する
登録ヘルパー(登録訪問介護員等)の勤務時間は、前年度の実績があるかどうかで、数え方が2通りに分かれます。解釈通知(老企第25号)が登録訪問介護員等の勤務時間の数え方をこの2通りに定めているからです。
2通りの計算方法をまとめると次のとおりです。
| 状況 | 加算できる時間 |
|---|---|
| 前年度の実績がある | 前年度の週当たりの平均稼働時間(提供時間+移動時間) |
| 開業直後など実績がない・極めて短い | 勤務表に確実に稼働できると明記した時間のみ |
登録ヘルパーの稼働時間を過大に見積もって基準をクリアしているように計算するのは、後から指摘を受けるリスクがあります。実態に即した数字で管理してください。
たとえば前年度に週平均10時間(提供8時間+移動2時間)稼働した登録ヘルパーが5人いるとします。
5人分を足すと、週10時間×5人=週50時間です。
常勤の週所定時間が40時間なら、50÷40=1.25として加算できます。月で数える場合も、常勤と同じ週数で揃えて換算します。
開業1年未満で前年度の実績がない場合は、勤務表で確実に稼働できる時間のみ(たとえば週8時間確定分だけ)を記載して計算します。
サービス提供責任者の必要人数の計算方法
サービス提供責任者(サ責)の必要人数は、今月の在籍者数ではなく前3か月の平均利用者数を基準に計算します。
利用者数が一時的に増えたり減ったりしても、3か月の平均で見るため、必要な人数はすぐには動きません。
ここではサ責の必要人数を決める3つの計算ルールを紹介します。
前3月の平均利用者数で必要数を計算する
サービス提供責任者は、前3か月の平均利用者数を40で割り、端数を切り上げた人数が必要です。
指定居宅サービス等基準が「前三月の平均値」を基礎と定め、解釈通知(老企第25号)が利用者の数え方を示しているからです。
計算は次の2ステップです。
- 前3か月の実利用者数を合計し、3で割る
- その数を40で割り、端数を切り上げる
通院等乗降介助のみを利用した人は、0.1人と数えます。
前3月平均利用者数ごとの必要サ責人数をまとめると次のとおりです。50人特例(次の見出しで説明)で人数が減るのは、利用者121人以上の事業所だけです。
| 前3月の平均利用者数 | 必要サ責数(基本) | 50人特例を使った場合 |
|---|---|---|
| 1〜40人 | 1名 | −(減らない) |
| 41〜80人 | 2名 | −(減らない) |
| 81〜120人 | 3名 | −(減らない) |
| 121〜150人 | 4名 | 3名 |
| 151〜160人 | 4名 | 4名 |
50人特例は常勤サ責3名以上が前提です。そのため利用者120人以下の事業所では、特例を使っても必要な人数は減りません。
たとえば、前3か月の実利用者数が4月50人・5月55人・6月51人だったとします。
合計156人÷3=52人が前3月平均です。52÷40=1.3で端数を切り上げると2名が必要サ責数になります。
ちなみに、通院等乗降介助のみの利用者が3人いたとすれば、その3人は3×0.1=0.3人と数えます。
新規に指定を受ける場合や事業を再開した場合は、実績がないため推定利用者数で計算します。
50人特例の3条件を同時に満たす
3条件をすべて満たすと、サ責の必要人数を40人ごとに1人から50人ごとに1人に緩和できます。
指定居宅サービス等基準が、この3条件を「かつ」の関係で求めているからです。
3条件は「かつ」の関係です。1つでも欠ければ特例は使えません。3条件の中身を確認してください。
- 常勤のサ責を3人以上配置していること
- サ責業務に主として従事する者が1人以上いること
- サ責の業務が効率的に行われていること
解釈通知(老企第25号)によると、「主として従事する者」とは、訪問介護員としての月間サービス提供時間が30時間以内の者です。
同じ解釈通知は、「業務が効率的に行われていること」の例として、シフト管理ソフトの導入・タブレットでの情報共有・主副担当制による複数対応などを挙げています。



特例を使えばサ責を減らせますか?
減らせるのは、前3か月の平均利用者数が121人以上の事業所です。特例を使っても、常勤サ責を3名未満にはできません。
たとえば常勤サ責が3名いて、前3か月の平均利用者数が110人の事業所があるとします。
基本計算(40人ごと)では110÷40=2.75→切り上げで3名必要です。
50人特例の3条件を満たしていれば110÷50=2.2→切り上げで3名必要と変わりません。
利用者が121人になると基本では4名、特例では121÷50=2.42→3名に緩和されます。
常勤サ責3名体制を維持できていれば、利用者121人以上で初めて特例のメリットが出ます。
総合事業の利用者数と合算する
訪問介護と第一号訪問事業を同じ事業所で一体運営しているなら、両方の利用者数を合算してサ責の必要人数を計算します。
指定居宅サービス等基準で、一体的に運営する場合の「利用者」に第一号訪問事業の利用者が含まれると定められているからです。
第一号訪問事業とは、総合事業のうち、以前の介護予防訪問介護にあたるサービスのことです。
なお、市町村が定める第一号訪問事業の人員基準を満たしていれば、訪問介護の人員基準も満たしているものとして扱えます。
たとえば訪問介護の利用者が30人で、同一事業所で第一号訪問事業の利用者が15人いるとします。
訪問介護だけなら30人でサ責1名ですが、合算すると45人になるため、サ責は2名必要です。
どちらか片方の人数ではなく、合算後の人数で判定する点に注意してください。



総合事業との一体運営は意外と見落としやすい点です。訪問介護とは別に第一号訪問事業の市町村基準も確認しておくと安心です。
訪問介護の管理者が別の拠点と兼務できる条件
令和6年4月1日の改定で、管理者が兼務できる事業所の範囲が変わりました。複数の拠点を運営している事業者向けの内容なので、1拠点だけの事業所は読み飛ばしても構いません。
| 改定前(〜令和6年3月31日) | 改定後(令和6年4月1日〜) | |
|---|---|---|
| 兼務できる事業所 | 同一敷地内(解釈通知は道路を隔てた隣接など近い範囲も含む) | 同一事業者が設置した事業所(敷地は問わない・事業内容も問わない) |
| 条件 | 管理業務に支障がないと認められる範囲内にあること | その時間帯も事業所で起きることを適時・適切に把握でき、一元的な管理・指揮命令に支障がないこと |


ここでは、兼務できる条件と、支障があるとみなされるケースを紹介します。
同一事業者の別拠点ならどこでも兼務できる
令和6年4月以降は、同じ法人が設置した事業所であれば、敷地が離れていても管理者が兼務できます。
改定前の省令は「同一敷地内にある他の事業所」という文言を含んでいましたが、令和6年厚生労働省令第16号によってこの「同一敷地内にある」が削除されたからです。
改定後の解釈通知は、次の3点をすべて満たす場合に兼務を認めています。
- 同一事業者の設置した事業所・施設であること
- 起きたことを適時・適切に把握できること
- 職員と業務をまとめて管理できること
たとえばA法人が県内の複数の訪問介護事業所を運営していて、管理者1人が2拠点を兼任するとします。
令和6年4月以降は建物や住所が離れていても兼務できますが、各拠点のシフトや利用者情報をリアルタイムで把握できる仕組みがあり、緊急時に速やかに駆けつけられる体制が整っていることが必要です。



管理者1人で何か所まで兼ねられますか?
数の上限は決まっていません。ただし、管理する事業所の数が過剰だと個別に判断されれば、支障ありとされます。
管理者に求められるその他の要件(常勤・専従・業務手順書の整備など)については、訪問介護の管理者に求められる要件で詳しく解説しています。
管理業務に支障があるとみなされる3ケース
管理業務に支障があると考えられる場合は3つあります。解釈通知(老企第25号)がこの3つを「支障がある場合」の例として挙げているからです。
兼務を検討する前に、次の3つを確認してください。
- 管理すべき事業所数が過剰と個別に判断される場合
- 併設の入所施設の介護・看護職員と兼務している場合
- 緊急時に速やかに駆けつけられない体制の場合
3つ目の「緊急時に駆けつけられない体制」は、令和6年改定で追加されました。
2つ目の入所施設との兼務は、施設での勤務時間が極めて限られる場合、この「支障があると考えられる例」から除かれます。
たとえば、訪問介護事業所に併設された同じ法人の入所施設で、管理者が介護職員としてもシフトに入っているとします。
施設での勤務時間が極めて限られる場合を除き、この兼務は支障があると考えられます。
兼務が認められるかどうかは、指定をした都道府県・指定都市・中核市(以下、指定権者)が個別に判断します。兼務を始める前に相談してください。
人員基準を下回ったときに知っておくべき3点
人員が欠けたとき、真っ先に「減算になる」と思う方は少なくありません。しかし訪問介護の場合、対応の流れはほかのサービスと異なります。
「人員基準欠如減算」とは、職員の数が基準を下回ったときに報酬を減らす仕組みで、デイサービスなど一部のサービスに設けられています。ここでは人員基準を下回ったときに押さえておくべき3点を解説します。
訪問介護に人員基準欠如減算は存在しない
「人員基準欠如減算」に相当する減算制度は、訪問介護には設けられていません。人員欠如減算を定める告示の対象に訪問介護は含まれていないからです。
訪問介護費の主な減算は、高齢者虐待防止措置未実施・業務継続計画未策定・同一建物等の減算です。どれも人員の不足を理由とするものではありません。



デイサービスの減算と同じだと思っていました
デイサービスなどには人員基準欠如減算がありますが、訪問介護にはありません。
訪問介護で人員基準を下回ったときの対応は、減算ではなく「変更届の提出と指定権者(都道府県など)への相談」です。ここを混同すると、慌てて誤った対処をすることになります。
たとえば常勤換算が2.3まで下がってしまった場合でも、訪問介護には減算の仕組みがありません。
速やかに指定権者へ相談し、必要な届出を出したうえで、2.5以上に戻す採用を進めるのが正しい対応です。
変更から10日以内に変更届の提出が必要になる
管理者やサ責が替わったとき、または運営規程に記載した従業者の員数などに変更があったときは、10日以内に指定権者(都道府県・指定都市など)への届出が必要です。
介護保険法が変更の届出期限を「十日以内」と定め、届け出る事項の中に管理者・サ責の氏名と運営規程(従業者の職種・員数)が含まれているからです。
届出が必要になる主な変更は次のとおりです。
- 管理者の交代(氏名・住所などの変更)
- サービス提供責任者の交代(氏名・経歴などの変更)
- 運営規程に記載した従業者の員数の変更
たとえば常勤サ責の退職が決まったら、サ責が替わった日から10日以内に届出が必要になります。
いつの時点で何を出すかは、退職が決まった段階で指定権者の窓口に確認し、あわせて採用活動を始めます。



10日はかなり短い期限です。管理者やサ責の退職が決まった時点で、先に指定権者へ電話で一報を入れておくと、書式の確認もでき一石二鳥です。
変更届の書式と提出先は指定権者ごとに異なります。
改善できないと指定取消になることがある
人員基準を下回った状態を改善できないままにしておくと、勧告・命令を経て指定の取消しや効力の停止に至ることがあります。介護保険法が、人員を満たせなくなったときの指定取消・効力停止を定めているからです。
また、介護保険法は不正な請求への対応も定めています。偽りその他不正の行為で報酬を受けたと判断されれば、返還額に40%を上乗せして徴収されることがあります。
行政対応の流れは、次の4段階です。
- 人員基準割れ → 変更届と指定権者への相談
- 改善しないまま → 勧告・公表・命令
- さらに改善なし → 指定取消・効力停止
- 不正請求の場合 → 返還額+40%の徴収がありうる


人員基準割れが分かったら、速やかに指定権者へ報告・相談することが、最悪の事態を避ける最初の一歩です。
たとえば管理者が長期入院し、後任の採用もすぐには難しい場合です。
このときは状況を指定権者へすぐ報告し、いつまでに誰を配置するかを相談します。
知らせずに放置すると、勧告・命令から指定取消へ進む流れに乗ってしまいます。
よくある質問
人員基準について、相談の多い3つの質問に答えます。
まとめ|訪問介護の人員基準は3職種の人数から確認する
訪問介護の人員基準のポイントは、次の7点です。
- 3職種(管理者・サ責・訪問介護員等)の配置が基本
- 訪問介護員等は常勤換算2.5以上を確保する
- サ責は利用者40人ごとに1名以上
- 令和6年4月から管理者の兼務範囲が拡大
- 訪問介護に人員基準欠如減算はない
- 人員が欠けたら変更届(10日以内)を提出
- 放置すると指定取消のリスクがある
開業時だけでなく、採用・退職のたびに人員基準を確認する習慣が大切です。変更が生じたときは指定後も届出を忘れずに行ってください。



正直に言います。人員基準は事業所を運営するための最低ラインです。ぎりぎり2.5をクリアすることを目標にすると、ヘルパーが1人抜けただけで基準割れになります。
勤務表を集計するタイミングで常勤換算とサ責の人数も確かめ、少し余裕をもった人員体制を目指してください。
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参考文献
法令
省庁の通達・基準
統計・告示









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