訪問介護の開業で失敗するパターン5選|対策について解説!

2025年、訪問介護事業者の倒産件数は91件に達し、過去最多となりました。

休廃業・解散も465件にのぼり、介護事業全体の休廃業653件の約7割を訪問介護が占めています。それでも毎年多くの事業者が新規参入し、そして廃業していきます。

ぺんすけ

介護事業全体から見ても、訪問介護の倒産・廃業が多い状況です!

なぜそうなるのか、どうすれば防げるのか。この記事では廃業が急増する構造と、開業前に知っておくべき5つの失敗パターン・対策を整理します。

私はレバウェル介護でキャリアアドバイザーとして約2年間、約300名の介護職者の転職支援を担当していました。 その中で、訪問介護事業所から「ヘルパーが集まらない」「サービス提供責任者を採用したい」という依頼を複数受けてきました。これは、その経験をもとに書いた記事です。

ぜひ参考にしてみてください。

目次

訪問介護の廃業・倒産が過去最多になった現実

廃業や倒産という言葉は、他人事に聞こえるかもしれません。

しかし数字を見れば、今の訪問介護業界が置かれた状況の深刻さがわかります。2025年の倒産件数は91件で過去最高、休廃業・解散も465件にのぼります。

どのような状況なのかを、具体的に説明します。

倒産件数は3年連続で過去最多を更新した

2025年の訪問介護事業者の倒産件数は91件でした。 2024年の81件から約12%増加し、3年連続で過去最多を更新しています。

出典:東京商工リサーチ「2025年介護事業者倒産」

この数字には、利用者がいても経営が立ちゆかなくなった事業所が含まれています。

ぺんすけ

介護需要は増えているのに倒産が増える。この矛盾は、一部の事業所が成長している一方で、多くの新規開業者が対応しきれていない構造だと言えます!

休廃業は倒産件数の5倍以上で起きている

倒産より深刻なのが、休廃業・解散の多さです。

休廃業とは、倒産のように資金繰りに行き詰まって倒れるのではなく、経営者が自分の意思で事業をやめることです。後継者がいない、高齢で続けられない、先が見えないといった理由で、まだ余力があるうちに「店じまい」を選ぶケースが多く、法的な手続きを取らず静かに事業を終える状態を指します。

2025年に訪問介護で休廃業・解散した件数は465件にのぼり、介護事業全体の休廃業653件の約7割(71.2%)を訪問介護が占めています。

出典:東京商工リサーチ「2025年介護事業者の休廃業・解散」

倒産は裁判所が関与する正式な手続きですが、休廃業は法的手続きなしに事業をたたむケースです。倒産件数の5倍以上が静かに消えているという現実は、業界の疲弊度を物語っています。

4割超の事業所が赤字のまま運営している

2025年訪問介護の廃業・倒産の実態:倒産91件・休廃業465件・赤字約4割

廃業にまで至らなくても、経営の苦しさは広く共有されています。福祉医療機構(独立行政法人)の調査によると、訪問介護事業所の約4割が赤字経営の状態です

4割という数字は、業界全体の採算構造が機能していないことを意味します。利用者ゼロで廃業するのではなく、利用者がいても赤字のまま耐えているという状態が、業界の大前提になっています。

訪問介護事業所の1件あたりの収益構造については、こちらの記事で詳しくまとめています。

訪問介護が小規模に厳しい2つの理由

訪問介護が危機的な状況にあるのは事実ですが、そのリスクは全事業者に均等に分配されていません。

小規模の新規開業者ほど不利な構造が存在し、報酬改定による基本報酬削減と、黒字事業所との収入格差の拡大により、大手との差は年々大きく開いています。

そうした格差が拡大している中での開業は、平均的な経営見通しより大幅に困難な状況からのスタートを意味します。

人数が少ないと事務作業に時間が割けないから

2024年度の介護報酬改定では、訪問介護の基本報酬がマイナス改定されました。

生活援助・身体介護・通院等乗降介助のいずれの区分でも基本報酬が削減されており、特に訪問件数の少ない小規模事業所の収入に直撃しました。

サービス区分改定前(単位)改定後(単位)変化
身体介護20分未満167163−4単位
身体介護20〜30分未満250244−6単位
生活援助20〜45分未満183179−4単位
生活援助45分以上225220−5単位

同時に、2024年6月には処遇改善加算が一本化されました。既存の3種類の加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が介護職員等処遇改善加算に統合され、申請・管理の事務負担が増加しました。

大手事業者は専任の事務担当者が対応できますが、開業したばかりの事業所では管理者が兼務せざるを得ません。

ぺんすけ

この二重の負荷が、開業初期の経営者を追い詰める要因になっていました。新規開業者は採算確保に専念すべきなのに、行政手続きにも時間を奪われる現実があります。

出典:厚生労働省「2024年度介護報酬改定」

黒字と赤字の収入差は大きく開いているから

黒字事業所と赤字事業所では、収入に大きな開きがあります。 福祉医療機構(WAM)の介護経営リサーチが示すとおり、この格差は経営を左右する水準まで開いています。

出典:福祉医療機構「介護経営リサーチ」

黒字事業所の多くは、訪問件数が多い・集合住宅型(サービス付き高齢者向け住宅等への集中訪問)・加算取得率が高いという共通点があります。 一方、独立型の新規開業者は訪問件数が少なく・加算も少ない・集合住宅の恩恵を受けにくいという三重の不利があります。

こうした格差がすでに拡大している中で開業することは、平均的な見通しよりも困難な状況からのスタートを意味します。

ぺんすけ

採用支援の際に思ったのは、新規開業する方の多くが「利用者さえ集まれば何とかなる」と楽観的に考えていることです。でも現実は、最初の6ヶ月の運営費確保と、並行した人員確保が同時に必要になります。

訪問介護開業で失敗する5つのパターン

訪問介護開業で失敗する5つのパターン:資金・人員・ケアマネ営業・サ責・報酬改定への備え不足

廃業した事業者に共通するのは、特定の失敗パターンへの準備不足です。

競合記事の多くは原因を箇条書きにとどめていますが、ここでは「なぜそうなるのか」のメカニズムと合わせて整理します。

訪問介護開業で失敗する5つのパターン
  • 資金計画を運転資金6ヶ月分まで考えていない
  • 3ヶ月先の人員確保を考えずに開業する
  • ケアマネとの関係作りを後回しにする
  • サ責が1人だけで退職リスクを放置する
  • 2024年改定後の収支を読まずに開業する

キャリアアドバイザー時代に複数の事業所から相談を受けた失敗パターンをベースに、開業前の対策を具体化します。

資金計画を運転資金6ヶ月分まで考えていない

訪問介護報酬の翌々月払いによる資金ショートの仕組み:開業直後は収入ゼロで支出が続く

訪問介護の開業で最も多い失敗が、資金ショートです。

初期費用(指定申請費・事務所費・求人費等)は一般的な相場として445〜475万円程度かかります。それに加えて、開業後に収益が安定するまでの運転資金として、月150〜200万円×6ヶ月分が必要です。 つまり、総額1000万円程度の準備が安全ラインとされています

訪問介護は介護報酬の支払いが翌々月になります。サービスを提供してから約2ヶ月後に収入が入る仕組みのため、開業直後の2〜3ヶ月は収入がほぼゼロの状態で運営を続けなければなりません。

月の運営費が150万円かかる事業所が運転資金300万円で開業した場合、2ヶ月目には手元資金が底をつきます。 報酬が入るのはさらに2ヶ月後のため、このズレが資金ショートを引き起こします。 最低6ヶ月分を持ち、できれば9ヶ月〜1年分を目標に準備することが現実的です。

参考:介護事業開業サポートセンター複数介護開業支援企業

3ヶ月先の人員確保を考えずに開業する

訪問介護の開業には、常勤換算で2.5人以上のヘルパーが必要です。開業時点では基準を満たしていても、離職が1人出ると基準を下回る可能性があります。

人員基準を満たせなくなると、指定取消や業務停止命令の対象になります。 採用活動は時間がかかるため、開業前から3ヶ月先の人員を見越した採用計画が必要です。

ぺんすけ

人員基準を満たせなくなると、勧告・命令を経て、最終的に指定取消や業務停止命令の対象になり得ます!

現時点で人員確保が難しいと感じた方は、後述の対策セクションで具体的な準備方法を確認してください。

出典:厚生労働省令第37号 第5条(e-Gov法令検索)

ケアマネとの関係作りを後回しにする

訪問介護の利用者は、ほぼ全員がケアマネジャー(介護支援専門員)の紹介を通じてやってきます。 にもかかわらず、開業後にケアマネ営業を始める事業者が多く、利用者が安定するまでに3〜6ヶ月以上かかるケースが珍しくありません。

ぺんすけ

採用支援の中で「今月も利用者がゼロに近い」という相談を複数受けました。営業がいないまま開業してしまったケースです。最初の営業先確保なしに開業すると、その後の回復は本当に難しくなります。

ケアマネへの営業は、開業2〜3ヶ月前から始めるのが理想です。

サ責が1人だけで退職リスクを放置する

サービス提供責任者(サ責)は、利用者40人ごとに1人以上の常勤専従配置が義務づけられています。

重要なのは、サ責が辞めると事業継続が困難になることです。常勤専従のため代わりが見つかるまで事業を動かせない、あるいは他の職員で急場をしのいでも基準違反になるリスクがあります。

ぺんすけ

特に、サ責には資格要件(介護福祉士や実務者研修修了など)があるので、誰でもすぐ後任できる訳ではありません。

サ責候補を二人体制にできれば、一人の退職で即崩壊という事態は避けられます。

出典:厚生労働省令第37号 第5条(e-Gov法令検索)

2024年改定後の収支を読まずに開業する

2024年度の基本報酬削減前の数字で収支計画を立てている事業者が、今でも存在します。基本報酬がマイナスになった後のシミュレーションをしないまま開業すると、稼働率が同じでも手元に残る収入が想定を下回ります。

ぺんすけ

「稼働率は予想通りなのに赤字です」という話をよく聞きます。改定後の報酬単価で計算したことがなく、古いデータで経営判断をしていたケースばかりです。

「介護報酬の計算は専門家に」と丸投げせず、自事業所の収支の仕組みを理解しておくことが経営者の基本です。

介護報酬が数単位減っただけであれば大したことないと思われるかもしれませんが、「塵も積もれば山となる」です。例えば、5単位を引き下げられた場合で仮定します。

1単位=10円として概算した場合(実際の単価は地域区分で変わります)、1回当たりの収入差は50円です。 月間200回の訪問で換算すると、月あたり約10,000円の収入減になります。これが全ヘルパーに積み重なると、事業所全体の月間収益に数万円単位の影響が出ます。

訪問介護で開業する前に、現在の介護報酬で実際にシミュレーションを行うようにしましょう。

訪問介護で人員が足りなくなる構造的な理由

訪問介護 人員不足の悪循環:ヘルパー採用難→人員不足→残スタッフ過負荷→離職増加の負のループ

訪問介護員の人員不足は、個別の対策だけでは解決しにくい構造的な背景があります。

訪問介護員(ヘルパー職)の有効求人倍率は14倍超〜15倍超で推移しています。 2019年度のピーク時には15.53倍、直近の2023年度でも14.14倍です。施設介護職員の有効求人倍率が約4倍であることと比較すると、訪問ヘルパーの採用環境の厳しさが際立ちます。

長期的にも、この状況は改善しません。 厚生労働省の推計では、2040年度に必要な介護職員数は約272万人ですが、2022年度時点では約215万人しかいません。不足分は約57万人で、2040年度まで毎年約3.2万人を増員し続けなければ追いつきません。

加えて、訪問介護特有の課題があります。サービス提供責任者は常勤専従配置が必要なため、急な代替が効きません。

キャリアアドバイザー時代に多くの施設・事業所を見てきた経験から、正直に言います。

ぺんすけ

採用がうまくいかない施設の9割は、ホームページに働く人の顔が見えない状態でした。

求職者はまず求人票で応募を判断し、次にホームページで「ここで働けるか」を確かめようとします。 ホームページがない、あるいは事業所の情報がほとんど掲載されていないと、その段階で候補から外れます。

求人費をかける前に、まずホームページに事業所の顔を作ることが、採用効率を上げる最初の一手です。この構造的な難しさを前提に、採用・定着の対策を開業前から仕込む必要があります。

出典:厚生労働省 職業安定業務統計(社会保障審議会・介護給付費分科会 2024年9月報告)

訪問介護開業の失敗を防ぐ4つの対策

開業前から安定運営までの準備タイムライン:12ヶ月前から開業後6ヶ月までの4ステップ

廃業を避けるには、開業前から実行できる対策を戦略的に準備することが必須です。

訪問介護開業の失敗を防ぐ4つの対策
  • 運転資金を最低6ヶ月分まとめて確保する
  • サ責を複数人体制で採用する計画を立てる
  • ケアマネへの営業先リストを開業前に作る
  • 名刺とホームページで初回営業の印象を高める

上記4つの対策は、開業後の事後的な対応では効果が薄く、開業の6ヶ月〜1年前から計画して実行する必要があります。

運転資金を最低6ヶ月分まとめて確保する

前述のとおり、訪問介護の報酬は翌々月払いです。開業2〜3ヶ月は収入がほぼゼロの状態で、人件費・家賃・求人費を払い続けることになります。

初期費用445〜475万円に加え、月150〜200万円×6ヶ月分の運転資金を確保し、総額1,000万円を準備するのが安全ラインです

参考:介護事業開業サポートセンター複数介護開業支援企業

融資の活用も選択肢のひとつですが、助成金・補助金は年度・地域によって条件が変わるため、詳細は最寄りの商工会議所・自治体に確認してください。税務・財務計画については、税理士への相談をおすすめします。

サ責を複数人体制で採用する計画を立てる

サ責が1人の状態は、経営上の単点故障リスクです。

開業時点で2人のサ責を配置すれば、1人が退職しても即座に事業停止にはなりません。

サ責の要件は実務経験に基づくため、採用にも時間がかかります。 開業の6ヶ月〜1年前から、サ責候補の採用活動を始めることを計画に組み込んでください

ケアマネへの営業先リストを開業前に作る

利用者の紹介経路を確保せずに開業すると、収入がゼロのまま固定費だけが積み上がります。 訪問介護の利用者はほぼ全員がケアマネ紹介経由であるため、開業前から営業先リストを作り、内覧・挨拶訪問を始めることが重要です。

エリア内のケアマネジャー在籍事業所(居宅介護支援事業所)を調べて、開業2〜3ヶ月前から段階的にアプローチしてください。

ケアマネへの初回営業では、口頭での説明だけでは伝わりません。 「どんな事業所か」「何を強みにしているか」「スタッフはどんな人か」が1枚でわかる名刺やパンフレットがあると、印象が大きく変わります。 同じ地域に同時期に複数の新規事業所がある場合、ケアマネが紹介先を選ぶ基準は「信頼できそうか」の第一印象です。

名刺とホームページで初回営業の印象を高める

ケアマネへの営業は、初対面の印象で大きく結果が変わります。 口頭での説明だけでは差別化できません。

ぺんすけ

事業所の強み・スタッフの顔・対応できるサービス内容を整理した名刺とホームページがあると、信頼感が変わります。

キャリアアドバイザー時代に施設のホームページを日常的に確認していた立場から言えば、ホームページがない事業所はケアマネへの営業でも最初の一歩でつまずきやすくなります。 ケアマネが紹介業者に相談する際、「あの事業所のホームページを見てみてください」と案内できるかどうかで、紹介の継続率が変わります。

開業前にホームページと名刺を整えることは、集客の土台を作ることと同義です

Teraceでは、訪問介護事業所の開業・集客に特化したホームページ制作・名刺制作に対応しています。 ケアマネ営業での印象アップや、採用発信の強化について相談したい方はお気軽にご連絡ください。

まとめ

この記事で整理した重要ポイントは以下の3点です。

ポイント内容
廃業の構造を理解する2025年に訪問介護の倒産91件で過去最多、休廃業465件。赤字率は約4割。報酬改定と採用難が重なった構造的な問題
人員リスクを先手で管理するサ責単点故障・ヘルパー採用難は開業後に対処できない。複数体制の計画と採用は開業前から
ケアマネ営業の土台を作る利用者はケアマネ経由の紹介で確保。開業前から営業先リストを作り、名刺・ホームページで信頼の土台を整える

訪問介護の開業で失敗する事業者の多くは、知識が不足していたのではありません。知っていたのに準備する時間を確保できなかった、あるいは楽観的に見積もっていたケースが多いです

キャリアアドバイザー時代に見てきた、長く続く事業所に共通していたのは一つのことでした。

ぺんすけ

それは人員に余裕があるということです。

余裕があるから現場が安定し、スタッフが長く働き、利用者への対応の質が保たれる。逆に言えば、開業直後から人員が綱渡りの状態では、その後の建て直しは極めて難しくなります。廃業の多くは、この「余裕がない状態からのスタート」に起因しています。

廃業構造・失敗パターン・採用難の3点を理解した上で開業すれば、リスクの大半は準備で軽減できることを認識しておきましょう。

介護のホームページ制作はTeraceにお任せ!

当メディアを運営する私達は、介護専門のホームページ制作サービス「かいごのヒカリ」を運営しています。

ディレクター、デザイナー、フロントエンジニアの合計3名で、各分野のプロが協力してホームページを制作しています!

「かいごのヒカリ」の特徴
  • 介護業界で2年間採用に携わっていたスタッフが制作を担当
  • インターネット公表の義務化に対応(重要事項説明書・運営規定など)
  • サイト更新は丸投げしてもらってOK
  • ホームページ制作期間中は何度でも無料相談できる
  • 顔の出ているフリーランス3人が運営

現在の料金プランは、下記のとおりです。

2026年6月現在、先着3施設のみ制作費用を5万円割引で対応しています。

ホームページ制作を考えている方は、ぜひ介護特化のホームページ制作サービス「かいごのヒカリ」のサイトをご覧ください。

>>「かいごのヒカリ」のサービスサイトへ

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

レバウェル介護にて約2年間、介護業界専門のキャリアアドバイザーとして従事。これまでに300名以上の介護士の転職面談を担当。また介護施設への人材派遣を通じて採用側の課題解決にも従事。このような実務経験をもとに、介護事業者・求職者双方にとって信頼性の高いWeb制作を行っています。

コメント

コメントする

目次