特定事業所加算の(Ⅰ)を取っている居宅介護支援事業所は、全体の1.71%です。最も多い(Ⅱ)でも23.84%にとどまります(令和7年11月審査分・事業所ベース)。
1.71%とは、100事業所のうち2事業所に満たない割合のことです。つまり、上の区分から順に目指すより、今の人数で届く区分を確実に取るほうが実態に合っています。
居宅介護支援事業所の特定事業所加算は、主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)とケアマネジャーの人数で、(Ⅰ)519・(Ⅱ)421・(Ⅲ)323・(A)114単位の4区分に分かれます。
うちの人数でどの区分に届くかは、すぐ下の4区分の表の人数の列で先に確かめられます。この記事は、4区分の単位数と13要件の満たし方、人数別の区分選び、届出と返還の順に説明します。
居宅介護支援の特定事業所加算の4区分と単位数
特定事業所加算とは、中重度の利用者や支援が難しいケースに積極的に対応し、質の高いケアマネジメントを続ける居宅介護支援事業所を評価する加算のことです。
区分は4つあり、区分ごとの必要な人数と単位数は次の表のとおりです。
| 区分 | 常勤専従の人数 | 単位数と算定率 |
|---|---|---|
| (Ⅰ) | 主任2人+ケアマネ3人(要介護3〜5が40%以上) | 519単位/1.71% |
| (Ⅱ) | 主任1人+ケアマネ3人 | 421単位/23.84% |
| (Ⅲ) | 主任1人+ケアマネ2人 | 323単位/14.08% |
| (A) | 主任1人+ケアマネ1人+常勤換算で1以上のケアマネ | 114単位/0.89% |
常勤専従とは、常勤で、その事業所の居宅介護支援の仕事に専ら就く人のことです。常勤換算とは、非常勤の人の勤務時間を常勤の人数に直した数のことです。
算定率とは、請求のあった事業所のうち、その区分を算定していた事業所の割合のことです(令和7年11月審査分・事業所ベース)。加算は、いずれか1区分だけを算定します。
区分が1つ上がると、居宅介護支援の利用者全員に毎月つく単位数が増えます。
たとえば、(Ⅱ)の421単位を利用者80人に算定すると、421単位×80人=33,680単位です。
その他地域の1単位10円で計算すると月に約33.7万円で、1級地など単価の高い地域ではさらに増えます。
令和6年度の改定で、各区分は14単位ずつ引き上げられました。令和8年6月の改定後も、単位数は同じです。
令和8年6月に新設された処遇改善加算の算定の基礎にも、特定事業所加算の単位数が入ります。区分が上がると、処遇改善加算の額にも響きます。
事業所の数で見ると、4区分を足して40.52%で、算定している事業所は約4割です。請求の件数で見ると、数え方は違いますが、(Ⅱ)が45.02%で最も多い区分です。
ぺんすけ訪問介護や障害福祉の居宅介護にも同じ名前の加算がありますが、別の加算で、この記事では扱いません。
居宅介護支援で特定事業所加算を取る13の要件
算定要件は全部で13あります。4区分で違うのは、主任とケアマネの人数と、(Ⅰ)だけにある要介護3〜5が40%以上という要件です。
残る10要件は4区分に共通で、(A)だけが、そのうち4つを連携先の事業所と分担できます。
| 要件 | 満たし方と残す記録 | (A)の連携 |
|---|---|---|
| (1)常勤専従の主任 | 区分の人数をそろえ、勤務表などで常勤専従を示す | 自前 |
| (2)常勤専従のケアマネ | 区分の人数をそろえ、勤務表などで常勤専従を示す | 自前 |
| (3)情報伝達等の会議 | おおむね週1回以上開き、議事録を2年間保存する | 自前 |
| (4)24時間連絡体制 | 携帯電話の輪番などで、連絡と相談に応じる体制を作る | 連携先と分担できる |
| (5)要介護3〜5が40% | 毎月の割合を記録する((Ⅰ)だけの要件) | (A)に要件なし |
| (6)計画的な研修 | ケアマネごとの研修計画を、次年度が始まるまでに作る | 連携先と共同できる |
| (7)支援困難事例 | 地域包括支援センターから紹介された事例も受ける | 自前 |
| (8)多様な対象者の研修 | 高齢者以外の支援の研修へ参加し、参加を記録する | 自前 |
| (9)集中減算 | 特定事業所集中減算の適用を受けない | 自前 |
| (10)1人あたり45名未満 | 事業所の平均で、ケアマネ1人あたりの担当を保つ | 自前 |
| (11)実習への協力 | 受け入れに同意した書面を示せるようにする | 連携先と分担できる |
| (12)共同の事例検討会 | 他法人と共同で行う計画を、次年度が始まるまでに作る | 連携先と共同できる |
| (13)インフォーマルサービス | 計画に位置付けた件数が0でも、理由を説明できるようにする | 自前 |
(9)の告示の条文は、令和6年度の改定で、特定事業所集中減算の適用を受けていないことだけになりました。
ただし通知は、減算にならないだけでなく、中立公正で、サービス事業者から実質的に独立した事業所であることも求めています。厚生労働省の分科会資料の要件表にも、改定前の書き方が残っています。
要件の点検は、資料の表ではなく告示の条文で行ってください。
加算の人数は、人員基準とは別に「常勤専従」で数えます。兼務の範囲を超えて働く人は、加算の人数に数えられません。
ここでは、13要件を事業所でやる作業ごとに6つに分けて、満たし方と残す記録を説明します。
常勤専従として数えられる人を確かめる
兼務の範囲と管理者の扱いを先に確かめないと、どの区分も届出できません。加算の人数は、常勤で、その事業所の仕事に専念する人だけで数えるからです。
告示は(Ⅰ)〜(A)のすべてで、常勤専従の主任とケアマネを何名以上置くかを決めています。
常勤専従とは、常勤で、その事業所の居宅介護支援の仕事に専ら就く人のことです(認められた範囲の兼務はできます)。主任は、ケアマネの人数とは別に数えます。
たとえば(Ⅲ)なら、主任1人とケアマネ2人で、合計3人の常勤専従が要ります。



主任として数える人が主任介護支援専門員であることを、書類で確かめられるようにしておきます。
兼務できる範囲は、主任とケアマネで次のように違います。
- 主任は同一敷地内の他事業所の仕事まで
- ケアマネは自法人の同一敷地内の介護予防支援まで
どちらも、支障がない範囲に限ります。
| 区分 | ケース |
|---|---|
| 満たす | 管理者を兼ねる主任ケアマネを、常勤専従の主任1名に数える |
| 満たす | 主任が、同一敷地内の訪問介護事業所の仕事を支障のない範囲で兼ねている |
| 満たす | 主任ではないケアマネが、自法人の同一敷地内の介護予防支援事業所の仕事を兼ねている |
| 満たさない | 管理者を兼ねる主任ではないケアマネを、常勤専従のケアマネに数える |
| 満たさない | 主任ではないケアマネが、同一敷地内の訪問介護の仕事を兼ねている |


管理者を兼ねる主任ケアマネは、常勤専従の主任に数えられます。管理者を兼ねる主任ではないケアマネは、常勤専従のケアマネには数えられません。
ただし、(A)の「常勤換算で1以上」には、常勤1人分として数えられます。
たとえば、管理者を兼ねる主任ケアマネと、常勤のケアマネ2人の事業所は、主任1人とケアマネ2人で(Ⅲ)の人数に数えられます。
管理者を兼ねるのが主任ではないケアマネなら、そのケアマネは常勤専従のケアマネには数えられません。
この数え方は、船橋市が厚生労働省に確認した取扱いとして公表しているものです。管理者の数え方は、名古屋市の事務連絡も同じ内容です。最終的には、指定権者である市町村に確認してください。
週1回の会議と24時間の連絡体制を整える
会議をおおむね週1回開いて議事録を残し、携帯電話の輪番で夜間・休日の相談を受ける形を作れば、この2要件は満たせます。通知が、会議の頻度と議題・記録の保存を定めているからです。
24時間体制も、事業所に人が常駐することではなく、連絡が取れることだと示されています。
会議の議題には、次の7つを含めます。
- 現に抱える処遇困難ケースの処遇方針
- 過去のケースの問題点と改善方策
- 地域の事業者や社会資源の状況
- 保健医療と福祉の諸制度
- ケアマネジメントの技術
- 苦情の内容と改善方針
- その他
オンライン開催でも構いません。議事録は2年間保存します。
24時間連絡体制とは、担当者が常時、携帯電話などで連絡を取れて、必要に応じて相談に応じられる体制のことです。事業所のケアマネによる輪番制でも構いません。
(A)だけは、携帯電話などの転送による対応も認められています。
転送を使うときは、連携先と利用者の情報を共有するため、利用者や家族への説明と同意が条件です。(A)でも、会議は自前で開きます。連携先と分担できるのは、24時間連絡体制のほうです。
| 区分 | ケース |
|---|---|
| 満たす | 毎週の会議をオンラインで開き、処遇困難ケースの方針などを議事録に残している |
| 満たす | ケアマネ3人が事業所の携帯電話を週替わりで持ち、夜間・休日の相談を受ける |
| 満たす | (A)の事業所が、利用者の同意を得て、夜間の電話を連携先の事業所へ転送する |
| 満たさない | 会議は月1回の全体ミーティングだけで、議事録を作っていない |
| 満たさない | (Ⅲ)の事業所が、夜間の電話を同一法人の訪問介護の事務所に転送して受けてもらう |
利用者の人数と内訳を毎月記録する
1人あたりの担当を45名未満に保ち、(Ⅰ)なら要介護3〜5の割合を毎月記録しておくと、運営指導で数字を求められても答えられます。
40%要件は毎月の割合の記録が求められ、45名未満も事業所全体の平均で見る数字だからです。
45名未満は事業所全体の平均で見る数字で、個人ごとの上限ではありません。ただし、特定のケアマネに担当が偏らないよう配慮が要ります。



基本報酬の居宅介護支援費(Ⅱ)(特定事業所加算の(Ⅱ)とは別のもの)を算定している事業所は、この45名未満が50名未満になります。
要介護3〜5が40%以上という要件は(Ⅰ)だけで、毎月の割合を記録します。その月の利用者全体のうち、要介護3〜5の人が占める割合を、月ごとに見ます。(Ⅱ)(Ⅲ)(A)にはありません。
地域包括支援センターから紹介された支援困難な事例も受けることが、要件の1つです。この紹介された事例は、割合を出すときに、利用者全体からも要介護3〜5の人数からも外して計算できます。
たとえば利用者100人のうち紹介された支援困難事例が仮に2人なら、残りの98人で要介護3〜5の割合を出します。
| 区分 | ケース |
|---|---|
| 満たす | ケアマネ4人で利用者168人(平均42名)。1人だけ47名でも、偏らないよう配慮している |
| 満たす | (Ⅱ)の事業所で、要介護3〜5が30%((Ⅱ)に40%の要件はない) |
| 満たす | (Ⅰ)の事業所が、地域包括支援センターの紹介事例を割合の計算から外し、毎月記録している |
| 満たさない | (Ⅰ)の事業所が、要介護3〜5の割合を毎月記録していない |
| 満たさない | 地域包括支援センターからの困難事例の紹介を、件数が多いからと断っている |
研修計画と事例検討会の計画を作る
研修計画と事例検討会の計画の2本を、次の年度が始まるまでに作っておけば、年度をまたいでも算定が途切れません。
2つは別々の要件で、どちらも「次年度が始まるまでに次年度の計画を定める」と期限が決まっているからです。
期限は、算定を始める時期で次のように変わります。
| 場面 | 研修計画 | 事例検討会の計画 |
|---|---|---|
| 毎年度続けるとき | 次年度が始まるまで | 次年度が始まるまで |
| 年度の途中から算定するとき | 届出まで | 届出まで |
| 4月から算定するとき | 届出まで(国のQ&A) | 届出までに作っておく |
国のQ&Aが4月算定の期限を示しているのは、研修計画だけです。事例検討会の計画の扱いは、市町村に確認しておくと確実です。
研修計画には、ケアマネごとに研修の目標・内容・期間・実施の時期を書きます。研修計画に、国が定めた様式はありません。市町村が参考様式を出している場合は、それを使うと書き方に迷いません。
事例検討会の計画には、内容・実施の時期・共同で行う他の事業所を書きます。「共同」とは、開催者かどうかを問わず、2つ以上の法人が参画することです。
市町村や職能団体との共催でも構いませんが、他の法人の居宅介護支援事業者が加わる必要があります。
たとえば、毎年度算定を続ける事業所は、翌年度の研修計画と事例検討会の計画を、年度が終わる3月中に作り直します。
4月に入ってから作り始めると、期限の次年度が始まるまでに間に合いません。
| 区分 | ケース |
|---|---|
| 満たす | 3月中に、翌年度のケアマネ4人分の研修目標・内容・時期を1枚ずつ作る |
| 満たす | 市の職能団体が開く事例検討会に、他法人の居宅介護支援事業所と一緒に参加者として加わる |
| 満たす | 年度途中の10月から算定するため、9月の届出までに両方の計画を作る |
| 満たさない | 研修計画が事業所全体で1枚だけで、ケアマネごとの目標・時期が無い |
| 満たさない | 同じ法人の居宅介護支援事業所どうしだけで、事例検討会を開いている |
外部の研修参加と実習協力を記録する
高齢者以外の支援の研修に出た記録と、実習を受け入れる同意の書面があれば、支援の実績が無くても要件を満たせます。国のQ&Aが、研修は参加の確認で足りるとしているからです。
実習も通知で、受け入れできる体制があればよいとされています。
(8)の研修は、介護保険以外の制度や対象者の支援を学ぶもので、令和6年度の改定で新しく加わりました。対象は、ヤングケアラー・障害者・生活困窮者・難病患者などの支援です。



ヤングケアラーとは、家族の介護などを日常的に行っている児童のことです。
(8)は参加だけでなく、自ら主催した場合や他法人と共同で開いた場合も含まれます。(12)の共同の事例検討会は、これとは別に、他法人の居宅介護支援事業所との共同が要ります。
仕事と介護の両立支援制度や生活保護制度の研修でも構いません。必要なのは、研修に参加した事実を確認できることで、その対象者を担当した実績までは求められません。
(11)の実習は、実務研修の実習を受け入れる要件です。実際に受け入れていなくても、受け入れられる体制があれば足ります。研修を行う機関と受け入れに同意していることを、書面などで示せるようにしておきます。
| 区分 | ケース |
|---|---|
| 満たす | ケアマネが市の生活困窮者支援の研修に参加し、参加記録を残す(その対象者を担当していなくてよい) |
| 満たす | (8)として、事業所が主催し、障害福祉の相談支援専門員を招いた事例検討会を開く |
| 満たす | 今年は実習生が来ていないが、研修を行う機関と受け入れに同意した書面がある |
| 満たさない | 実習の受け入れを口頭で引き受けただけで、示せる書面が無い |
| 満たさない | (A)の事業所が、(8)の研修参加を連携先の参加で代わりにしている |
集中減算を避けインフォーマルも検討する
集中減算を避け、インフォーマルサービスを検討した理由を残しておけば、残る2要件に応えられます。(9)は、告示の条文では特定事業所集中減算を受けていないことだけが条件だからです。
ただし通知は、中立公正で独立した事業所であることも前提にしています。(13)は、位置付けた計画が0件でも、理由を説明できれば算定できるとされています。
(9)は、特定事業所集中減算の適用を受けていないことです。適用を受けている期間は、特定事業所加算を算定できません。



集中減算の判定にかかる前から、紹介先が1つの事業者に偏っていないかを見ておくと、通知の求める中立公正に近づけます。
(13)のインフォーマルサービスとは、ボランティアや配食サービスなど、介護保険の外にある支えのことです。必要に応じて、こうした多様な主体のサービスが入ったケアプランを作ります。
支援経過に、検討した結果と理由を残しておくと、聞かれたときに答えやすくなります。
(13)も、第271回の分科会で見直しの案が出ています。計画にインフォーマルサービスを入れたかではなく、地域のさまざまな福祉の担い手と連携する体制を作っているかを要件にする案です。決まるまでは、今の要件で点検しておきましょう。
| 区分 | ケース |
|---|---|
| 満たす | 集中減算の判定で、どのサービスも特定の事業者への集中が基準を下回っている |
| 満たす | インフォーマルサービスを入れた計画は0件だが、検討した結果と入れなかった理由を支援経過に残している |
| 満たす | 地域の見守りボランティアや配食サービスをケアプランに位置付けている |
| 満たさない | 特定事業所集中減算の適用を受けている期間に、特定事業所加算を算定している |
| 満たさない | インフォーマルサービスを検討した形跡がどこにもなく、理由を聞かれても答えられない |
常勤の人数で決まる特定事業所加算の区分
13要件のうち、区分によって中身が変わるのは、人数と(Ⅰ)だけにある40%の要件です。人数に数える常勤専従とは、常勤で、その事業所の居宅介護支援の仕事に専ら就く人のことです。
うちの人数でどこまで届くかは、常勤専従の主任とケアマネが何人いるかで決まります。
| 体制 | 届く区分と単位数 | 利用者80人のときの月の目安 |
|---|---|---|
| 主任1人+常勤のケアマネ1人+非常勤 | (A)114単位 | 約9.1万円 |
| 主任1人+ケアマネ2人 | (Ⅲ)323単位 | 約25.8万円 |
| 主任1人+ケアマネ3人 | (Ⅱ)421単位 | 約33.7万円 |
| 主任2人+ケアマネ3人+要介護3〜5が40%以上 | (Ⅰ)519単位 | 約41.5万円 |
月の目安=単位数×利用者数×10円で出しています。たとえば(Ⅲ)なら、323単位×80人×10円=258,400円で、約25.8万円です。
1単位10円は、その他地域の単価です。万円は、小数第2位を四捨五入しています。利用者80人は、説明用に置いた数字です。
利用者1人あたりの月額は、次のとおりです。
| 区分 | 利用者1人あたりの月額 |
|---|---|
| (Ⅰ) | 約5,190円 |
| (Ⅱ) | 約4,210円 |
| (Ⅲ) | 約3,230円 |
| (A) | 約1,140円 |
自分の事業所の利用者数を掛ければ、増収の目安が出ます。


ここでは、体制の小さい順に、届く区分と毎月の増収を4つの段で説明します。
主任1人・ケアマネ1人+非常勤なら(A)
見出しの「非常勤」とは、常勤換算で1人分以上になるケアマネのことで、主任1人と常勤のケアマネ1人にその人を足せば(A)の人数に届きます。
(A)は主任1名と常勤専従のケアマネ1名に、常勤換算で1以上のケアマネを足せばよく、管理者を兼ねる主任も人数に数えられるからです。
常勤換算とは、非常勤の人の勤務時間を、常勤の人の勤務時間に直して人数として数える方法のことです。
たとえば、管理者を兼ねる主任と常勤のケアマネ1人の2人体制は、2人だけでは届かず、常勤換算で1人分の非常勤を足せば届きます。
(A)は114単位で、利用者80人なら月に約9.1万円です(114単位×80人×10円=91,200円)。(A)で連携先と分担できるのは4つの要件だけで、残りの6つは事業所が自前で満たします。
| 分け方 | 要件 |
|---|---|
| 連携先と分担できる | (4)24時間連絡体制/(6)研修/(11)実習協力/(12)共同の事例検討会 |
| 自前で満たす | (3)会議/(7)支援困難事例/(8)多様な対象者の研修/(9)集中減算/(10)45名未満/(13)インフォーマル |
連携を使う場合、常勤換算で1人分にあたるケアマネは、連携先の居宅介護支援事業所の仕事と兼務できます。主任と常勤のケアマネの2人だけでは、(A)にも届きません。
(A)は、常勤換算の1人分を足した合計3人分の人数が必要だからです。
なお、第271回の分科会では、(A)を廃止する案も示されました。算定している事業所が少なく、作られたときの目的を果たせていないことが理由で、1年の経過措置を設ける案です。
あわせて、今は(A)だけに認められている他の事業所との連携(24時間の連絡体制や研修など)を、上の区分でも認める案が出ています。どちらも案の段階なので、これから(A)を取るなら、改定の行方を見ながら決めましょう。
主任1人・ケアマネ2人なら(Ⅲ)
主任1人とケアマネ2人の3人体制なら(Ⅲ)に届き、(A)より利用者1人あたり月209単位多く取れます。(Ⅲ)は323単位で、(A)は114単位だからです。
さらに、(A)では取れない医療介護連携加算の条件の1つも満たせます。
(Ⅲ)の323単位に利用者80人を掛けると、月に約25.8万円です。(A)との差は209単位で、209単位×80人×10円=167,200円、約16.7万円になります。
たとえば、(A)の事業所がケアマネをもう1人常勤で採ると、主任1人とケアマネ2人の(Ⅲ)に上がります。
差は、基本の単位数だけではありません。特定事業所加算を前提にする加算のひとつ、特定事業所医療介護連携加算(月125単位)は、(Ⅰ)〜(Ⅲ)のどれかを算定していることが条件で、(A)は対象外です。



医療介護連携加算は、(Ⅲ)の人数がそろってから考えれば十分です。
(Ⅰ)〜(Ⅲ)の算定は、医療介護連携加算の条件の1つにすぎません。ほかに、前々年度3月から前年度2月の実績として、次の2つが要ります。
- 退院・退所加算に係る病院等との連携が35回以上
- ターミナルケアマネジメント加算の算定が15回以上
実績が足りないうちは、採用の収支に医療介護連携加算を入れないでおきましょう。常勤のケアマネをもう1人採るか、非常勤のまま(A)にとどめるかは、基本の単位数の差と、この実績を見て決められます。
主任1人・ケアマネ3人なら(Ⅱ)
(Ⅲ)の事業所がケアマネを1人増やして(Ⅱ)に上がると、利用者80人なら月に約7.8万円の増収になります。(Ⅱ)と(Ⅲ)の差は利用者1人あたり月98単位で、利用者全員に毎月付くからです。



ただし、加算の増収だけで採用は決めません。増えたケアマネが担当を持つ分の基本報酬と合わせて考えます。
(Ⅱ)は421単位で、利用者80人なら月に約33.7万円です。98単位×80人×10円=78,400円が、(Ⅲ)との差になります。
(Ⅱ)にも、常勤専従の主任が1人以上要ります。
たとえば、利用者が仮に100人の(Ⅲ)の事業所が、3人目のケアマネを常勤で採って(Ⅱ)になるとします。
98単位×100人×10円=98,000円で、加算は月に約9.8万円増えます。
主任2人・ケアマネ3人+重度4割なら(Ⅰ)
見出しの「重度4割」とは要介護3〜5の利用者が40%以上のことで、主任2人とケアマネ3人がいても毎月この割合を保てなければ(Ⅰ)は取れません。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いは主任の人数と、この40%の要件だけだからです。
(Ⅰ)は519単位で、利用者80人なら月に約41.5万円です。(Ⅱ)から(Ⅰ)に上がる差も、(Ⅲ)から(Ⅱ)と同じ98単位です。



たとえば、利用者が100人で要介護3〜5が39人なら39%で、主任が2人いても(Ⅰ)は取れません。
(Ⅰ)の40%の要件は、令和9年度の介護報酬改定に向けた審議で見直しの対象になっています。第271回の分科会(令和8年10月19日)で、厚生労働省はこの40%の要件を廃止する案を示しました。
利用者1人にかかる時間が、要介護1・2と要介護3〜5で大きく変わらなくなってきたことが理由に挙げられています。主任ケアマネや常勤の人を手厚く置いていることを、重く評価する考え方です。
ただし、これは案の段階で、決まったわけではありません。決まるまでは、今の40%の要件で算定します。
特定事業所加算の届出から算定開始までの流れ
区分が決まったら、次は市町村への届出です。算定を始めたあとも、利用者への説明と表示、毎月の記録が続きます。
届出の前に、13要件の表で、常勤専従の人数・会議・24時間の連絡体制・研修計画などを満たしているかを点検しておきましょう。
ここでは、届け出てから算定を続けるまでを3つの段で説明します。
①:算定したい月の前月15日までに体制届を出す
15日までに市町村へ届け出れば翌月から、16日以降だと翌々月からの算定になり、1日の遅れで1か月分を取り逃します。
単位数が増える加算の届出は、毎月15日以前なら翌月、16日以降なら翌々月から算定すると通知で決まっているからです。体制届とは、加算を取る体制が整ったことを市町村に知らせる届出のことです。
たとえば10月から算定したい事業所は、9月15日までに届け出ます。9月16日に出すと、算定は11月からになります。


届出の宛先は、事業所のある市町村長になります。電子申請で、国が定めた様式を使って出します。提出方法と受付の運用は市町村ごとに違うことがあるため、各市町村の手引きを確認しておきましょう。



15日ぎりぎりでなく、前の週には出すつもりで動きましょう。
研修計画と事例検討会の計画を作る期限は、次のとおりです。
- 年度の途中から算定するなら、届出まで
- 毎年度続けるなら、次年度が始まるまで
②:算定を始めたら利用者に説明し表示する
算定を始めたら、重要事項説明書や事業所の案内に取得事業所であることを書き、利用者にその内容を説明しておく必要があります。
通知が取得事業所に、加算を取っている旨の表示と、利用者が内容を理解できる説明を求めているからです。
表示の決まりは、通知の「積極的に特定事業所加算取得事業所である旨を表示するなど」という一文にあります。どこに表示するかは事業所に任されているので、利用者や家族の目に触れる場所に出します。
載せ先の例は、次のとおりです。
- 重要事項説明書と契約時の説明
- 事業所の案内(パンフレット)
- 事業所のホームページの事業所紹介
- 求人票(あわせて載せてもよい場所)
たとえば、新しい利用者に契約を説明する場面で、重要事項説明書の加算の欄を示しながら、取得事業所であることと内容を口頭で伝えます。
表示先に求人票とホームページを挙げたのは、キャリアアドバイザー時代の経験があるからです。私が担当した求職者では、紹介した施設名を自分で検索してから応募を決める人が多くいました。



加算を取っている事業所ほど、その事実が検索した人に届かないのはもったいないと感じます。
取得事業所であることも、載せていなければ比べる材料に入りません。ホームページの事業所紹介や求人のページは、利用者や求職者が契約や応募の前に見る場所です。
取得事業所であることを、ホームページのどこに載せるかを先に決めておきましょう。
区分が変わるたびに、案内や求人の文言も直すことになります。ホームページを作る・作り直すなら、体制が変わっても自分で書き直せる作りにしておくと続けやすくなります。
私たちTeraceは、ノーコードのWeb制作ツール「Studio」のStudio Expertsに加盟しています。事業所紹介や採用情報のページを、自分で更新しやすい作りにするのが得意です。
ホームページ制作をご検討中の方は、介護事業所専門のホームページ制作をご覧ください。
③:毎月末に遵守状況の記録を作り2年残す
毎月末までに要件を守れたかの記録を作って2年保存しておけば、市町村から求められたときにすぐ出せます。通知が所定の記録を毎月作成して2年間保存し、市町村長の求めに応じて提出することを定めているからです。
この記録には、国が標準様式を示しています。毎月の記録とあわせて、次の記録も保管し、すぐ出せるようにしておきます。
- 週1回の会議の議事録
- 要介護3〜5の割合((Ⅰ)だけ)
- 1人あたりの担当件数
- 研修と事例検討会の実施の記録
たとえば10月分の記録は、10月末までに作って保存します。
特定事業所加算が返還になるケース
要件を欠いたのに請求を続けると、返還になります。悪質な場合は、指定の取消しになることもあります。
要件を満たさなくなったら、速やかに届け出て、満たさなくなった日から算定しないのが基本です。
| ケース | 起きること | 正しい届け方 |
|---|---|---|
| 主任やケアマネが退職して人数が欠けた | 欠けた日から算定できない | 速やかに届け出る(下の区分への変更は市町村に確認) |
| 要介護3〜5が40%を下回った | (Ⅰ)で請求すると返還になる | (Ⅱ)への変更の届出を出す |
| 兼務できない人を数えていた | 要件を満たしていなかった月になり、返還を求められることがある | 速やかに届け出て、返還の範囲は市町村に確認する |
ここでは、返還につながりやすい3つの場合を説明します。
主任やケアマネが退職して人数が欠けたとき
退職で人数が欠けた日から、その区分は算定できなくなります。要件を満たさなくなったら速やかに届け出て、その事実が起きた日から算定しないと通知で決まっているからです。
届け出ずに請求を続けると、不正な請求として返還になります。
主任が1人もいなくなると、(Ⅰ)〜(Ⅲ)も(A)も主任1名以上が要るため、どの区分にも届かなくなります。
たとえば主任が1人だけの(Ⅱ)の事業所で、その主任が辞めると、後任が入るまでは(Ⅱ)を算定できません。



ケアマネが1人辞めて、(Ⅱ)の人数が(Ⅲ)の人数になる場面もあります。下の区分への変更の届け方と、月の途中で欠けた月の扱いは、市町村に確認してください。
要介護3〜5が40%を下回ったとき
40%を下回った月でも、すぐに(Ⅱ)への変更の届出を出せば、その月は(Ⅱ)で算定できます。
国のQ&Aが、(Ⅰ)の要件だけ欠けたときは、加算をやめる届出ではなく(Ⅱ)への変更の届出でよいとしているからです。その月を(Ⅰ)のまま請求すると、返還の対象になります。
すでに(Ⅰ)で請求してしまった分の直し方は、市町村に確認してください。
(Ⅱ)に40%の要件はないので、人数がそろっていれば(Ⅱ)を算定できます。届出日にかかわらず、その月から(Ⅱ)を算定できます。
たとえば、(Ⅰ)を算定している事業所が、ある月だけ要介護3〜5の割合が仮に38%に下がったとします。
その月に(Ⅰ)で請求すると、返還の対象です。
すぐに(Ⅱ)への変更の届出を出せば、その月から(Ⅱ)の421単位で算定できます。
(Ⅱ)から(Ⅰ)に戻すときは、15日の締めが通常どおり当てはまります。その月から下の区分で算定できると国のQ&Aに書かれているのは、(Ⅰ)から(Ⅱ)に下がる場合です。
(Ⅲ)や(A)に下がる場合は、市町村に確認してください。
兼務できない人を人数に数えていたとき
認められない兼務の人を数えて請求していた月は、要件を満たしていなかったことになり、返還を求められることがあります。
主任は同一敷地内の他事業所まで兼務できますが、主任以外のケアマネは介護予防支援などに限られ、範囲が違うからです。
たとえば、管理者を兼ねる主任ではないケアマネを、常勤専従のケアマネ3人の1人に数えていた事業所があります。返還の範囲は、市町村に確認してください。
数え方に迷うときは、届出の前に市町村に確認しておくのが安全です。
まとめ|特定事業所加算は人数で区分を選び記録で守る
特定事業所加算は、人数で届く区分を選び、13要件を記録で証明して守る加算です。押さえたいのは、次の5点です。
- 4区分の違いは、人数と40%だけ
- (A)だけ4要件を連携先と分担できる
- 13要件は、6つの作業と記録で証明する
- まず、今の人数で届く区分から取る
- 届出は前月15日まで、外れたら速やかに届ける
算定を始める前に、最新の告示と、事業所のある市町村の手引きを開いて確かめておきましょう。まず、常勤専従の主任とケアマネが何人いるかを数え、届く区分を決めてから、13要件の表を上から点検しましょう。
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参考文献
法令・告示
省庁の通達・Q&A
- 老企第36号 居宅介護支援の解釈通知(第一の1・第一の5・第三の14・第三の15)
- 令和6年度介護報酬改定における改定事項
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1・問116・問117)
- 介護サービス関係Q&A集(令和8年9月掲載)
- 船橋市「特定事業所加算の算定に係る管理者と介護支援専門員の兼務について」(令和5年1月31日付)
- 名古屋市 介護保険課長の事務連絡(令和3年11月5日付)
審議会の資料









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