訪問介護の初回加算の対象者とは|要支援から要介護などの要件を解説

新規利用者を受け入れるたびに、初回加算を算定してよいのか迷う管理者やサービス提供責任者は少なくありません。

区分変更があったとき、過去のサービス提供がどの時点まで遡れるのか、判断に迷って算定を見送ってしまうケースもあります。

私はキャリアアドバイザー時代に、複数の訪問介護事業所の管理者・サービス提供責任者と面談する機会がありました。そのとき「請求まわりで正直よくわからないことがある」という声を、一人ではなく複数の方から聞きました。

ぺんすけ

初回加算はその代表例で、「算定してよいはずなのに確信が持てなくて見送ってしまう」という運用が現場に根付いているケースがあります。実はこの迷いの中に、収益を失っている事業所が多くあります。

算定漏れは事業所の収益を直接損ないます。記録が不十分であれば、実地指導で返戻のリスクも生じます。

この記事では、訪問介護の初回加算の算定要件・対象者の判定方法・算定漏れを防ぐポイントを、厚生労働省の一次情報をもとに解説します。

また初回加算にならんで、しっかり押さえておきたいのが「夜朝加算」です。早朝・夜間は25%上乗せ、深夜は50%上乗せになりますが、少しややこしい部分もあるので併せて読んでみてください!

目次

訪問介護の初回加算とは

訪問介護の初回加算とは、新規に訪問介護計画を作成した利用者にサービスを提供した月に算定できる加算です。

初回加算の単位数は、200単位/月です。単位とは、介護報酬の計算に使われる数値の単位です。

出典:厚生労働省 介護給付費単位数表サービスコード表(令和3年4月)

地域区分によって1単位あたりの単価が異なり、訪問介護は1級地で1単位11.40円、2級地で1単位11.12円、その他地域で10.00円となっています。

地域区分上乗せ割合1単位あたりの金額
1級地20%11.40円
2級地16%11.12円
3級地15%11.05円
4級地12%10.84円
5級地10%10.70円
6級地6%10.42円
7級地3%10.21円
その他0%10.00円

実際の加算額は、事業所が属する地域区分の単価によって変わります。

ぺんすけ

初回加算は200単位ですが、地域によって単価が変わるので、入ってくる報酬も高くなります!例えば、東京23区であれば一級地に入るため、1単位あたりの金額は11.40円になります。

訪問介護の初回加算が算定できる対象者

訪問介護の初回加算は、すべての利用者に毎月算定できるわけではありません。

新規利用者か、区分変更があったか、そして過去2か月のサービス提供の有無によって算定可否が決まります

算定できる対象者のパターンは、大きく3つに整理できます。

対象者対象パターン
新規利用者新規に訪問介護計画を作成した利用者
区分変更があった区分変更(要支援⇔要介護に伴う新規計画作成なら「新規」として対象)
過去2か月のサービス提供がない過去2か月間、その事業所からサービス提供がない利用者

条件が複雑な部分のみ、詳しく説明します。

ぺんすけ

今回は「過去2か月のサービス提供がない」の定義に関して、「区分変更」に関しては何が算定対象にあたるのかについて詳しく説明します。

過去2か月は暦月で数える

暦月計算の図解:4月15日にサービス提供する場合、起点は2月1日。2月1日以降にサービスがあれば算定不可、なければ初回加算を算定できる

訪問介護の初回加算は、利用者が過去2か月間(暦月)にわたって当該事業所からサービスの提供を受けていない場合に算定できます。

具体的には、4月15日の提供日を基準に、遡って2か月分(4月・3月)を確認し、その起点である2月1日以降にサービス提供がなければ算定可能です。

4月15日に利用者にサービスを提供した場合、初回加算が算定できるのは、同年の2月1日以降に当該事業所からサービスの提供を受けていない場合です。

つまり「直近2か月」は日数換算ではなく、カレンダーの月単位で数えます。4月15日が提供日であれば、2月・3月の2か月分を遡った起点は2月1日になります。

このケースだと2月1日〜3月31日までに、1回でもサービスを提供していれば、算定できません。

区分変更は支援⇔介護のみ算定できる

区分変更があった場合の算定可否は、変更の内容によって異なります。

区分変更の内容訪問介護の初回加算
要支援→要介護(例:要支援2→要介護1)算定できる
要介護→要支援(例:要介護1→要支援2)算定できる
要介護内の変更(例:要介護1→要介護2)算定できない
要支援内の変更(例:要支援1→要支援2)対象外(そもそも訪問介護の対象ではない)

要支援→要介護、要介護→要支援の変更で訪問介護に新規に切り替わる場合は、新たに訪問介護計画を作成するため初回加算を算定できます。一方、要介護内での区分変更は計画の継続となるため算定対象になりません。

ぺんすけ

この区分変更の判定は、実地指導で誤りが指摘されやすいポイントです。支援と介護をまたぐか、介護内の変更かの判定を間違えると、算定漏れや過誤請求につながります。迷った時は管轄の介護保険担当窓口に確認することをお勧めします。

訪問介護の初回加算の算定要件4つ

訪問介護の初回加算を算定するには、4つの要件をすべて満たす必要があります。管理者・サ責が見落としやすいのは、「サ責が全時間同行する必要がない」という要件と、「同行の記録が必須」という要件の2点です。

訪問介護計画を期間までに作成する

初回加算は、新規に訪問介護計画を作成した利用者に対して算定します。

新規の訪問介護計画が存在しない場合、他の要件を満たしていても算定できません。

計画の作成はサービス提供開始前または開始月中に完了させる必要があります。月をまたいで後から作成した計画では算定要件を満たしません。

ぺんすけ

4月中にサービスを開始したのに、訪問介護計画の作成を5月にずれ込ませてしまった場合。計画が「初回訪問月内」に存在しないため、ヘルパーの訪問実績など他の条件を満たしていても初回加算は算定できません!

過去2か月にわたって事業所からサービスを受けていない

算定前に、当該利用者が直近2か月(暦月)にわたって事業所からサービスを受けていないことを確認する必要があります。この確認を怠ると、算定できない利用者に誤って加算を請求するリスクが生じます。

新規受け入れ時の引き継ぎ情報だけに頼らず、事業所内の提供記録を必ず照合してください。

ぺんすけ

たとえばBさんが3月までよその事業所を使っていて、5月から自分の事業所に切り替えてきた場合は、自分の事業所では新規利用者にあたるので初回加算を算定できます!

「直近2か月、自分のところで提供していなければOK」という認識でOKです。

サ責が「自ら実施」か「同行」のどちらかを選ぶ

サ責の関わり方2パターン:パターンA(自ら実施)とパターンB(同行)の比較フロー。同行は途中退出OKだが記録必須

訪問介護の初回加算の算定には、次の2つのうちいずれかを満たす必要があります。

パターン内容
自ら実施サービス提供責任者(サ責)が自ら初回訪問のサービスを実施する
同行サ責以外のヘルパーが初回訪問する際に、サ責が同行する

複数のサービス訪問がある月であっても、「初回訪問日」か「初回訪問が属する月内」にいずれかを満たせば算定できます。

サ責は全時間の滞在をしなくてよい

ここが多くの管理者・サ責が見落としている点です。

老企第36号(全老健 法令・Q&A検索)には次の原文があります。

サービス提供責任者が、訪問介護に同行した場合については、指定居宅サービス基準第19条に基づき、同行訪問した旨を記録するものとする。 > また、この場合において、当該サービス提供責任者は、訪問介護に要する時間を通じて滞在することは必ずしも必要ではなく、利用者の状況等を確認した上で、途中で現場を離れた場合であっても、算定は可能である。

つまり、サ責が同行した際に途中で現場を離れても、算定の可否に影響しません

サ責は多忙なため、全時間同行できないと算定をあきらめているケースがあります。 利用者の状況確認ができれば途中退出は問題ないと明記されています。

ぺんすけ

ここで重要なのは、同行した事実は必ず記録に残す必要があるということです。記録のない同行訪問は算定の根拠として認められません。

サ責が他のヘルパーの初回訪問に30分だけ同行し、利用者の状態・環境を確認した後に退出した場合でも、同行の記録が残っていれば初回加算を算定できます。

ケアマネジャーとの連携が必要な初回加算の確認事項

訪問介護の初回加算は、ケアマネジャー(介護支援専門員)との情報連携の中で誤解が生まれやすい加算のひとつです。

競合の解説記事の多くは「算定要件」を中心に解説していますが、実務では訪問介護事業所とケアマネジャーの間で認識のズレが生じるケースがあります。

複数の事業所と話す中でわかったのは、ケアマネジャーは必ずしも個々の事業所の加算体系を詳しく把握しているわけではないということです。 施設入居であれば担当ケアマネジャーが情報を持っていることが多いです。 ただし在宅の訪問介護に関しては、事業所側から伝えない限り、ケアマネジャーはその加算の中身を知らないという状況が起きやすいのが実情です。

ぺんすけ

正直に言うと、情報を発信しない事業所が損をする構造です。

ここでは、ケアマネジャーとの間で確認しておくべきポイントを整理します。

ケアマネへの通知義務はなく連絡は任意

初回加算の算定についてケアマネジャーに通知する法的義務はありません。ただし、ケアプランの内容と加算の整合を確認するうえで、事前に連絡を取ることが実務上有効です。

特に注意が必要なのは、ケアマネジャーが初回加算の制度内容を詳しく把握していない場合です。 新規利用者の担当になった際、ケアマネジャーが単月の請求明細を見て「なぜ加算がついているのか」と疑問を持つことがあります。

重要事項説明書での事前説明は、事業所側の義務として明確に定められています。

厚生労働省Q&A(平21.3版 VOL69 問34)には次の記載があります。

居宅サービス基準第8条に基づき、事前にそれぞれの加算の算定要件及び趣旨について、重要事項説明書等により利用者に説明し、同意を得ておく必要がある。

利用者への説明と同意は義務です。ケアマネジャーへの報告は義務ではありませんが、円滑な連携のために新規契約時に算定予定の加算を共有しておくことをおすすめします。

複数事業所の算定はケアマネに伝える

同一月に複数の訪問介護事業所を利用している場合、それぞれの事業所が独立して初回加算を算定できます。

厚生労働省Q&A(平21.3版 VOL69 問33)には「初回加算は同一月内で複数の事業所が算定することも可能」と明記されています。

ただし、担当ケアマネジャーが複数事業所からの請求を整理する際に、同一月内の重複算定を誤りと判断して確認を求めてくるケースがあります。

ぺんすけ

新規受け入れ時に担当ケアマネジャーへ「初回加算を算定します」と一言伝えておくだけで、後からの問い合わせや返戻リスクを事前に防げます。情報発信の手間が事業所の信頼につながります。

初回加算に限らず、介護報酬の加算は「知っているかどうかで差がつきます」。

ぺんすけ

現場は多忙な中で運営されており、請求の細部まで手が回らないというのが実情です。だからこそ管理者・サ責がこの記事のような情報を定期的に確認し、チームで共有する仕組みをつくることが大切です。
積み重なると収益の差になります。

まとめ

訪問介護の初回加算(200単位)は、正しく算定すれば事業所の収益に直結する加算です。

以下に記事の要点を整理します。

項目ポイント
単位数200単位/月(令和6年改定で据え置き)
算定対象・新規利用者
・過去2か月サービス利用なし
・要支援→要介護の区分変更(要介護→要支援は総合事業側の対象)
2か月の計算暦月ベース(日数換算ではない)
サ責同行全時間の滞在不要、途中退出でも算定可
記録同行した旨を必ず記録(居宅サービス基準第19条)
ケアマネ連携通知義務なし、ただし事前連絡が実務上有効

訪問介護の初回加算は、要件の確認と記録の管理さえ徹底すれば確実に算定できます。

制度の詳細は随時更新されることがあるため、最新情報は厚生労働省ホームページでご確認ください。

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この記事を書いた人

レバウェル介護にて約2年間、介護業界専門のキャリアアドバイザーとして従事。これまでに300名以上の介護士の転職面談を担当。また介護施設への人材派遣を通じて採用側の課題解決にも従事。このような実務経験をもとに、介護事業者・求職者双方にとって信頼性の高いWeb制作を行っています。

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