2時間以内に複数回の訪問を入れると合算されるという基本は知っている。しかし、複数の事業所が関わるとき・緊急対応のとき・看取り期の利用者のときは、どう判定すればよいのか。
ぺんすけ判定を誤った請求は、指導監査での修正指導につながる可能性があります。制度を正確に理解することが、事業所の収益と信頼を守る基盤になるんです。
本記事では、ルールの定義から計算方法・令和6年改定の影響まで解説します。 なお本記事は、訪問介護における介護保険サービスの2時間ルールを対象としています。
訪問看護・訪問入浴など他の訪問系サービスのルールとは異なる点に注意してください。
訪問介護の2時間ルールとは
2時間ルールとは、同一の利用者に対し、前回のサービス終了時刻から次のサービス開始時刻までの間隔が「概ね2時間未満」の場合、複数のサービスを1つに合算して報酬単位を計算するルールです。
サービス終了から次の開始までが基準


時間計測の起点は「前回のサービス終了時刻」、終点は「次のサービス開始時刻」です。
訪問ヘルパーが利用者宅に到着した時刻や、移動開始時刻は含みません。
たとえば10:00に開始して10:25に終了した場合、次の訪問の開始時刻が12:25以降であれば2時間以上の間隔とみなします。
「概ね2時間」という文言には、一定の幅があります。 ぴったり2時間に満たない場合でも、状況次第で独立算定が認められるケースがあります。 迷った場合は、管轄の都道府県または国保連(国民健康保険団体連合会)に確認することを推奨します。



「概ね」と書かれている以上、ぴったり2時間で機械的に線を引けるわけではありません。判断に迷う時間帯のサービスは、事前に国保連や都道府県へ確認しておくと安心です。
複数回算定の不正防止が目的である
このルールが平成24年度の改定で設けられた背景には、短時間の訪問を細かく分割して複数回算定する不正請求を防ぐ目的があります。
たとえば実質的に1回でまとめて対応できるサービスを、意図的に20分ずつに分けて2回算定するという過剰な分割算定を防ぐためです。
制度の公平性を守るための措置として理解しておく必要があります。
2時間ルールの適用条件と計算方法
2時間ルールの核心は間隔が2時間以上か未満かで算定方法が完全に変わる点です。
ここでは令和6年4月1日施行後の単位数(介護報酬単位数一覧・令和6年度、carenote.jp)を使って具体的に説明します。



キャリアアドバイザー時代、訪問介護事業所の管理者から「同じ日に2回訪問するとどう計算するの?」という質問は本当によくされました。頭の中だけで追うと混乱しやすいからこそ、表で2パターンを比べることが実務理解の近道です。
2時間以上の間隔なら独立算定できる
前回のサービス終了から次の開始まで2時間以上あれば、それぞれを別の訪問として独立算定できます。
たとえば「9:00〜9:25(身体介護1相当)」と「14:00〜14:25(身体介護1相当)」の2回訪問した場合、間隔が4時間35分あるため独立算定が可能です。
2時間以上の間隔がある場合の計算例(令和6年度単位数)
| 訪問回 | 時間帯 | サービス区分 | 単位数 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 9:00〜9:25(25分) | 身体介護1(20分以上30分未満) | 244単位 |
| 2回目 | 14:00〜14:25(25分) | 身体介護1(20分以上30分未満) | 244単位 |
| 合計 | 間隔4時間35分(2時間以上) | 独立算定 | 488単位 |
2時間未満の間隔なら合算して1区分で請求する


間隔が2時間未満の場合、2回分の時間を合算し、合算後の時間に対応する1区分の単位数のみを請求します。
同一利用者に1回目10:00〜10:25、2回目11:10〜11:35で2回訪問した場合、間隔は45分で2時間未満のため合算対象になります。 合算すると50分(25分+25分)となり、「30分以上1時間未満」の身体介護2区分で算定します。 令和6年度では合算387単位です。
2時間未満の間隔がある場合の計算まとめ
| 条件 | 算定方法 | 令和6年度単位数 |
|---|---|---|
| 25分+25分(合計50分)間隔1時間未満 | 身体介護2(30分以上1時間未満)で算定 | 387単位 |
| 20分+20分(合計40分)間隔1時間未満 | 身体介護2(30分以上1時間未満)で算定 | 387単位 |
| 45分+30分(合計75分)間隔1時間未満 | 身体介護3(1時間以上)で算定 | 567単位 |
訪問介護の2時間ルールの例外ケース4選


2時間ルールには、2時間未満でも合算せず独立算定できる例外が4つあります。
以下のテーブルで要件・根拠・注意点を整理します。
| 例外ケース | 独立算定できる条件 | 実務上の注意点 |
|---|---|---|
| ①看取り期 | 医師が「回復見込みなし」と判断した利用者 | 医師の診断と記録が必須。自動的に適用されない |
| ②緊急時訪問介護加算の算定 | 緊急時訪問介護加算(100単位)を算定する場合 | 加算の算定要件を別途満たす必要がある |
| ③身体02(20分未満の頻回訪問) | 事業所要件+利用者要件の両方を満たす場合のみ | 要件が厳格。管轄の都道府県・国保連に事前確認必須 |
| ④通院等乗降介助 | 2時間ルールの計算対象外サービス | 往路・復路ともに独立算定可能 |
それぞれ具体的に説明します。
看取り期は令和3年改定から合算対象外になった
令和3年3月29日の厚生労働省事務連絡により、看取り期の弾力化が認められました
出典:WAM 公式PDF
医師が「回復見込みなし」と診断した看取り期の利用者については、2時間未満の訪問でも各訪問を独立算定できます。この弾力化により、看取り期に頻回の訪問を行う場合でも、適切な報酬を算定できるようになっています。
医師が回復見込みなしと診断した利用者に、訪問1(8:00〜8:20)と訪問2(9:30〜9:50)を行ったケースです。 間隔は1時間10分で2時間未満ですが、看取り期の弾力化により合算せず各訪問を独立算定できます。 ただし、医師の診断(回復見込みなしの判断)とケアプランへの記載が前提になります。



ただし、医師の診断と記録が明示的に必要です。「なんとなく状態が悪い」という判断では適用されません。ケアプランへの記載と医師による診断の記録を整備しておくと、指導監査での質問を未然に防げます。
緊急時加算があれば間隔を問わず算定できる
緊急時訪問介護加算を算定した訪問については、2時間ルールの適用から除外されます。
緊急時訪問介護加算は1回あたり100単位です。



ただし加算の算定には、利用者からの要請やサービス提供責任者の判断など、緊急時加算の要件を別途満たす必要があります。間隔を空けずに訪問したいという理由だけで加算を算定することは認められません。
身体02は2つの要件を同時に満たす必要がある
身体介護02(20分未満の身体介護)は、一定の条件を満たした場合に2時間ルールの例外として独立算定できます。
ただし、この例外は「事業所要件」と「利用者要件」の2つを同時に満たす必要があります。事業所要件と利用者要件の概要は以下の通りです。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 事業所要件 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護の指定を受けている(または準ずる24時間対応体制を有する) |
| 利用者要件 | 要介護1・2で認知症の方、または要介護3以上で日常生活自立度ランクB以上(屋内移動に介助が必要で日中も座位中心の状態)の方。さらにサービス担当者会議で週5日以上の頻回訪問が必要と判断されていることが条件 |
要件の詳細な判定は複雑です。管轄の都道府県または国保連に必ず事前確認を行ってください。
要件を満たしているかどうかの最終判断は、管轄機関が行います。
通院等乗降介助は対象外サービス
通院等乗降介助は、2時間ルールの計算対象となるサービス区分に含まれません。
令和6年度の通院等乗降介助の基本報酬は1回97単位です。病院への往路と復路は、それぞれ独立した1件として算定でき、間隔が2時間未満であっても合算の対象にはなりません。
複数事業所が関わる場合の2時間ルールの取り扱い
同一の利用者に複数の訪問介護事業所がサービスを提供している場合も、2時間ルールは事業所をまたいで適用されます。 「うちの事業所は関係ない」とはなりません。 他事業所のサービス時間を把握した上で間隔を管理する必要があります。



キャリアアドバイザーとして多くの管理者と話してきた中で、「利用者が他の事業所も使っているとき、請求でどう扱うか迷う」という声を実際に聞いていました。最も多いのは、按分について事前に取り決めをしていないという状況です。
いざ合算が発生してから慌てるのではなく、ケアプラン段階から訪問時間帯と按分の取り決めを行うことが現実的です。
他事業所の終了時刻が計算の起点


A事業所が10:25に終了し、B事業所が11:10に開始した場合、間隔は45分です。
これは2時間未満のため、両事業所の報酬を合算して請求する対象になります。
A事業所が10:00〜10:25、B事業所が11:10〜11:35にサービスを提供した場合、A終了からB開始までの間隔は45分です。 2時間未満のため合算対象となり、合算後の50分は身体介護2(令和6年度387単位)で算定します。 387単位を各25分ずつで均等に按分するとA・B事業所とも約193〜194単位ですが、按分方法は法令で定められておらず事業所間の協議で決めます。
合算が起きた場合は事業所間で按分協議が必要
合算が発生した報酬は、関係する事業所間で協議して配分する必要があります。 この按分協議が事前に行われていない場合、以下のリスクがあります。
| リスク | 具体的な問題 |
|---|---|
| 不当請求リスク | 合算せず各事業所が満額請求すると過剰請求になる |
| 事業所間トラブル | 按分比率を巡る事業所間の紛争 |
| 指導監査での指摘 | 按分協議の記録がない場合に修正指導を受ける可能性がある |
複数事業所が関わるケースでは、ケアプランの立案段階から各事業所の訪問時間帯を調整し、可能であれば2時間以上の間隔を確保する設計が現実的な対策です。 2時間未満の訪問が避けられない場合は、按分の取り決めを文書で残しておくことを推奨します。
令和6年改定後の2時間ルール適用における注意点
令和6年4月1日施行の介護報酬改定により、訪問介護の基本報酬が全サービス区分で引き下げられました。
2時間ルールそのものの内容は変わっていません。 ただし、計算に使う単位数が変わったため、具体的な算定金額と合算損失の絶対額は変動しています。
令和6年改定で合算損失の単位数が小さくなった
基本報酬の引き下げにより、令和5年度以前の計算例と数値が変わっています。
令和5年度以前と令和6年度の主要な単位数比較
| サービス区分 | 令和5年度以前(旧) | 令和6年度(新) | 削減幅 |
|---|---|---|---|
| 身体介護1(20分以上30分未満) | 250単位 | 244単位 | ▲6単位 |
| 身体介護2(30分以上1時間未満) | 396単位 | 387単位 | ▲9単位 |
| 生活援助2(20分以上45分未満) | 183単位 | 179単位 | ▲4単位 |
| 生活援助3(45分以上70分未満) | 225単位 | 220単位 | ▲5単位 |
| 通院等乗降介助 | 99単位 | 97単位 | ▲2単位 |
単位数が下がった結果、合算前も合算後も、いずれも改定前より単位数が少なくなっています。 「1回あたり数単位の差」と聞くと小さく感じるかもしれません。
身体介護1を間隔2時間未満で2回提供したケースです。 独立算定なら244単位×2=488単位ですが、合算すると身体介護2の387単位になります。 円換算は地域の単価によって異なるため、国保連・都道府県の単価表で確認してください。



しかし、事業所の経営を間近で見てきた立場からすると、数単位の積み重なりが月単位・年単位で経営に効いてきます。月100回の訪問のような実績に積み重なれば、経営への影響は無視できません。
地域によって1単位あたりの単価が異なるため(通常10〜11.4円程度)、実際の円換算は各都道府県・国保連の単価表で確認してください。
令和6年の新減算と重なると収益が二重に下がる
令和6年改定では基本報酬の引き下げに加え、新たな義務化減算が設けられました。
| 減算の種類 | 減算率 |
|---|---|
| 業務継続計画(BCP)未整備減算 | 1% |
| 高齢者虐待防止措置未実施減算 | 1% |
| 同一建物減算(特定条件) | 最大12% |
これらの減算が2時間ルールによる合算損失と重なると、収益への打撃は倍増する形になります。



業務継続計画と高齢者虐待防止措置の両方が未整備だと、全体の請求額が2%引き下げられます。そこに2時間ルールの合算による損失が積み重なります。複数の制度変化が一度に影響する年度だからこそ、BCP策定と虐待防止体制の整備は必須です。
制度の詳細は変更される可能性があるため、最新情報は厚生労働省の令和6年度介護報酬改定の公式資料で確認してください。
訪問介護の2時間ルールに関するよくある質問
まとめ
訪問介護の2時間ルールの要点を整理します。
- 間隔の計算は「前回のサービス終了時刻から次のサービス開始時刻まで」が基準。概ね2時間未満の場合は合算して1区分で算定する。
- 例外は4ケース(①看取り期、②緊急時加算算定時、③身体02の要件充足、④通院等乗降介助)。各ケースの要件を正確に把握し、記録を整備することが指導監査対策になる。
- 複数事業所が関わる場合も2時間ルールが適用される。按分協議の取り決めを事前に行い、文書に残しておく。
- 令和6年度改定でルール自体は変わっていないが、単位数が変更されたため計算例は最新の数値で確認する。新減算と重なると収益への影響が積み重なる。



正直に言うと、制度の細部を把握しているかどうかが、事業所の適正請求と指導監査への耐性を左右します。制度は毎年改定されますが、2時間ルールの基本は変わっていません。だからこそ、正確に理解している事業所とそうでない事業所で、経営の安定性に差が出ます。
ルールを正確に理解して適正請求を積み重ねることが、長期的な事業所経営の基盤になります。 次のアクションとして、サービス計画表の訪問時間間隔の見直しと、例外ケース適用時の記録整備の確認を行ってください。
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