「田舎で介護タクシーを開業しても食えるのか」という問いに正面から答えている記事はほとんどありません。
キャリアアドバイザー時代、地方の訪問介護事業所の管理者から「バスが1日2本しかなく、スタッフが送迎できないと通院をあきらめてしまう」という話を聞きました。
移動そのものが解決されていないのが、田舎の実情でした。
この記事では、田舎の介護タクシーの需要、田舎で介護タクシーを成功させるコツについて詳しく解説していきます。
田舎の介護タクシー需要の実態
田舎に介護タクシーの顧客はいるのか。この答えは、高齢化率・通院困難者数・公共交通の実態で示せます。
潜在需要は確かに存在します。ただし高齢者の絶対数が少ないため、マーケットサイズは都市部より小さく、1人の顧客喪失の影響が深刻になる構造です。
過疎地の高齢化が全国より進んでいる

データによれば、過疎関係市町村の高齢化率は39.7%です。これは令和5年4月1日現在の数字で、全国平均28.0%と比べると約1.4倍の水準です
田舎は総人口が少なくても比率が高いため、移動支援を必要とする人口の割合は構造的に高い状態が続きます。
田舎では施設の絶対数が少なく、在宅介護を選ばざるを得ない高齢者の比率も都市部より高くなります。在宅高齢者の通院・外出ニーズが、介護タクシーの主要な需要源です。
ぺんすけつまり、田舎では人口に対しての、介護タクシーの需要は高いといえます!
バス停がない地域は通院できない
医療機関への距離問題は深刻です。65歳以上の世帯員がいる世帯のうち、最寄りの医療機関まで1km以上ある世帯の割合は24.4%に達します。
全世帯の17.6%と比較すると、高齢者世帯では移動距離が長い割合が顕著に高い実態がわかります
廃止代替バスの空白地帯や、バスが1日数本しか走らない地域では、自家用車を手放した高齢者が通院すら困難になります。



家族が仕事で送迎できない昼間に通院を断念する高齢者は実際に多く、介護タクシーは「あったらいい」ではなく「生活維持に必須」の選択肢になります。
過疎地では医療機関自体が少なく、遠い専門病院への通院が必要なケースも多いのです。
定期的な透析・難病の外来治療・手術後のリハビリなど、生命に関わる移動ニーズこそが田舎の介護タクシーの真の顧客層です。特に透析患者は週3回・1回4時間の通院が必須で、家族の送迎では対応しきれないケースが多く、固定客になりやすい層と言えます。
田舎と都市部の介護タクシーの採算の違い
需要が存在することと、採算が合うことは別の問題です。
正直に言うと、走行距離が長いから売上が上がるという解説は採算の一面しか捉えていません。件数が減るトレードオフを見ておかなければなりません。
数字で見れば、単価と件数のバランスが崩れることで、田舎と都市部の月収は大きく変わらないのが実態です。
田舎は1日の運行件数が少ない


介護タクシーの1日の運行件数は、都市部と地方で明確に差があります。都市部では1日6〜8件、地方では3〜4件が現実的な上限です。
田舎では片道20kmを超える送迎も多く、1往復に1時間半近くかかるため、こなせる件数が物理的に減ります。



1件の単価は走行距離に比例して上がります。でも件数が半分になれば、月売上の天井もほぼ変わりません。「距離が長い=儲かる」が成立しない理由はここです。
詳しくは介護タクシー1日の売上シミュレーションで解説していますが、走行距離の長さによる単価上昇が、件数減少による売上減をカバーできていないのが田舎の現実です。
田舎だと手取り40〜50万円あたりが目安
介護タクシーの月間売上目安は40〜60万円、個人開業の月経費目安は9〜18万円です。田舎では燃料費・高速代が上乗せされます。
自宅車庫で開業すれば家賃ゼロで固定費を抑えられ、月売上60万円なら手残り40〜50万円が目安です。
ただし、介護タクシーの営業所を自宅にするには、「用途地域に該当するのか」や「建築基準法の観点から用途変更が必要なのか」などをチェックしなければなりません。
自宅開業を考えている方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。


顧客1人の離脱が経営を揺らす
田舎と都市部の1番の違いは、「顧客1人の離脱が経営を揺らす」ということです。



田舎の採算で最も見落とされているのが、顧客の絶対数の少なさです。田舎ではリピーター構造が脆弱なんです。
地方の事業者は月10〜15人のリピーターで売上を支える構造です。都市部なら月30〜50人規模の事業者もいますが、田舎ではその半分以下が現実的な水準です。
1人が施設入所・逝去・家族送迎への切り替えで離脱した際の収入減は、都市部の同規模離脱より比率で2倍以上になる試算です。
また口コミが地域全体に広がりやすい田舎では、評判の維持が採算と直結します。高齢者の相談ネットワークは狭く、評判が落ちると新規開拓も止まる構造です。
都市部であれば絶対数が多いため、1人顧客を逃しても立て直しは可能です。
ですが田舎では、介護タクシーを必要としている割合が多くても、人数で見ると少ないといえます。お客さんを1人逃すと、その穴を埋めるのは難しいということを理解しておきましょう。
田舎で介護タクシーを成功させるコツ


需要の実態と採算の厳しさを踏まえた上で、田舎で経営を成り立たせる方法は決まっています。
単価設計・固定費削減・複合サービスの3点を同時に実装することが、月売上60万円を維持する条件です。
さらに地方では、ケアマネジャーへの営業ルート確保がこの3点と同じくらい採算を左右します。
介護保険+自費を組み合わせる
介護保険適用の移送だけでは、田舎では件数が限られ、安定した収益を得るのは難しいです。そこでおすすめなのが、介護保険サービスと自費サービスを柔軟に組み合わせる仕組みづくりです。
たとえば通院介助は介護保険を使い、その前後の買い物の付き添いや院内での待機、自宅での乗降介助などは自費メニューとして提供します。冠婚葬祭やお墓参り、趣味の外出といった保険対象外のニーズも、自費なら自由に対応できます。



田舎では「足がない高齢者」が多く、こうした保険外のお出かけ需要は意外と大きいものです。
料金表を分かりやすく示して、ケアマネジャーや地域包括支援センターと信頼関係を築けば、紹介も増えていきます。保険と自費の両輪で、利用者にも事業者にもメリットのある運営を目指すことをおすすめします。
自宅開業で家賃月5〜15万円を削減する
事業所の家賃は採算を大きく左右します。営業所を外部に借りると月5〜15万円の固定費が発生しますが、自宅車庫を使えばこれがゼロです。
月経費9〜18万円(試算例)のうち家賃の比率は大きく、自宅開業だけで経費を半分以下に抑えられるケースもあります。
ただし介護保険タクシー(訪問介護事業所の指定)は法人化と営業所届出が必須です。福祉有償運送なら要件が緩い地域も多く、自宅開業がしやすい場合があります。



自費(保険を使わない福祉タクシー)で小さく始める → お客さんが増えてきたら、保険対応(法人化)に広げるのをおすすめします!
開業してすぐにランニングコストを上げるのは得策とはいえません。まずはスモールスタートで田舎に需要があるのかを見極めるのが先だといえます。
待機・買い物代行で売上を底上げする
田舎では病院の待合中に別の依頼を受けるのが難しいため、待機時間そのものを有料化する方法があります。
透析や手術後の外来に2〜3時間付き添う「病院待機」を時間課金にすると、移動以外の収入源が生まれます。
在宅高齢者は通院だけでなく買い物・銀行・役所といった日常的な外出需要を持っています。これらを介護保険外の自費サービスとして組み合わせると、1日あたりの売上を底上げできます。
透析患者の通院+透析中の2〜3時間待機+帰宅時の買い物代行を1セットで提供すると、移動だけの単発依頼に比べて1件の収入を2倍近くまで伸ばせます。週3回の通院が必須の透析患者を10人抱えるだけで、月の固定収入の基盤が組み上がります。
田舎では担当ケアマネジャーが地域全体で1〜3人しかいないケースもあります。そのため、地域包括支援センター・病院の医療ソーシャルワーカー・民生委員など複数の窓口を開拓することがリスク分散になります。
介護タクシーのケアマネ営業のコツに関しては、介護タクシーのケアマネ営業がうまくいかない原因3選でまとめています。



キャリアアドバイザー時代に感じたのは、ケアマネジャー自身は事業者を積極的に選ばないという実態でした。信頼している紹介ルートに乗れるかどうかが、田舎では決め手になります。
営業に行く際に名刺・ホームページを持っている事業者と持っていない事業者では、紹介を検討してもらえる確率が明らかに違います。法人としての継続性があると見なされる条件が整うことで、営業効率が大きく上がります。
田舎での介護タクシー開業に向けて動き出したら、次は地域内での認知が勝負です。
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田舎の介護タクシー運営に関するよくある質問
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