訪問入浴介護の処遇改善加算を算定しようと様式を手元に広げたとき、「旧の加算1と新の加算Ⅰはどう違うのか」と手が止まる事業者は少なくありません。
数字(1・2)とローマ数字(Ⅰ・Ⅱ)が似ているため、新旧どちらの制度の話かがつかみにくいのです。旧3加算はすでに令和6年6月に廃止されています。今算定するのは介護職員等処遇改善加算(新加算)のⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳです。
令和8年6月の臨時改定でⅠロ・Ⅱロという上乗せ区分が新設され、現在は6区分の制度になっています。
本記事は2026年7月時点の情報にもとづいています。旧加算との対応関係、3職種チームへの配分設計、届出手順まで、訪問入浴専用の視点でまとめました。
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訪問入浴介護の処遇改善加算は一本化された
処遇改善加算という言葉で検索すると、令和6年度改定以前の旧制度情報が混在して表示されることがあります。
ぺんすけ昔の情報のまま、アップデートされていない記事などもあるので要注意です!
令和6年5月以前には、処遇改善を目的とした加算が以下の3種類に分かれていました。
| 旧加算名 | 主な対象 |
|---|---|
| 介護職員処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅲ) | 介護職員の賃金改善 |
| 介護職員等特定処遇改善加算 | 経験・技能ある介護職員の賃金改善 |
| 介護職員等ベースアップ等支援加算 | 介護職員のベースアップ支援 |
この3加算は令和6年6月から介護職員等処遇改善加算(以下、新加算)として一本化されました。





一本化直後はⅠ〜Ⅳの4区分と経過措置のⅤ(1)〜(14)が設けられたが、経過措置Ⅴは令和7年3月31日で終了しています!
旧介護職員処遇改善加算は一本化直前(令和6年5月時点)でⅠ〜Ⅲの3区分でした(Ⅳ・Ⅴは令和3年度改定で廃止済み)。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 処遇改善加算制度一本化リーフレット」
訪問入浴介護の処遇改善加算 区分別の加算率
訪問入浴介護の処遇改善加算は令和8年6月の臨時改定で加算率が引き上げられ、区分構成も変わりました。
令和8年4・5月は旧率据え置き、6月からは新率と上乗せ区分が加わる2フェーズ構成になっており、いずれの数値を使うかで加算額が変わります。
イは通常区分・ロは上乗せ区分


令和8年6月以降の区分は6種類あります。イは通常区分、ロは令和8年6月新設の上乗せ区分です。加算率が高い順に並べると次のとおりです。
| 区分 | 令和8年6月〜加算率 | 必要なキャリアパス要件 | 特例要件の要否 | 令和8年4・5月(旧率) |
|---|---|---|---|---|
| Ⅰロ(上乗せ区分) | 13.3% | Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ+Ⅴ | 必要((ア)または(ウ)) | —(当時は無し) |
| Ⅱロ(上乗せ区分) | 12.7% | Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ | 必要((ア)または(ウ)) | —(当時は無し) |
| Ⅰイ | 12.2% | Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ+Ⅴ | 不要 | Ⅰ:10.0% |
| Ⅱイ | 11.6% | Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ | 不要 | Ⅱ:9.4% |
| Ⅲ | 10.1% | Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ | 不要 | Ⅲ:7.9% |
| Ⅳ | 8.5% | Ⅰ+Ⅱ | 不要 | Ⅳ:6.3% |
表の「特例要件の要否」欄にある(ア)(ウ)は令和8年度だけの要件です。
- (ア):ケアプランデータ連携システムの利用
- (ウ):社会福祉連携推進法人への所属



詳しくは、記事の後半で解説します!
また「必要なキャリアパス要件」欄のⅠ〜Ⅴの内訳はこうです。
Ⅰが任用要件・賃金体系の文書化、Ⅱが研修機会の確保、Ⅲが昇給の仕組みの整備、Ⅳが年440万円以上の職員配置、Ⅴがサービス提供体制強化加算の届出となります(詳しくは後半で解説します)。
一点注目してほしいのが、Ⅱロ(12.7%)はⅠイ(12.2%)より加算率が高いという逆転です。
ⅠイはキャリアパスⅤが必要な代わりに特例要件は不要で、ⅡロはキャリアパスⅤの代わりに令和8年度特例要件((ア)または(ウ))が必要という入れ替えの関係にあります。
サービス提供体制強化加算の届出が難しい事業所は、Ⅰイ(12.2%)よりⅡロ(12.7%)が現実的な算定ルートになり得ます。



「加算率が高い順」に並んでいるため、Ⅰが一番上とは限らない点を意識してください。ⅡロがⅠイより上に来るのは、キャリアパス要件と特例要件を組み合わせた結果です。自事業所がどの要件を満たしやすいかで、目指す区分が変わってきます。
介護予防訪問入浴介護の加算率は訪問入浴介護と同率となっています。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 別紙1(表1-1・表1-2)
訪問入浴の加算率は8.5〜13.3%


訪問入浴介護の加算率は最下位区分Ⅳの8.5%から最上位区分Ⅰロの13.3%というレンジになっています。
ここで注意が必要なのは、訪問介護の加算率とは全く別物だという点です。
訪問介護の処遇改善加算Ⅰイは令和8年6月以降27.0%だが、訪問入浴介護のⅠイは12.2%と訪問介護の半分以下になっています。


制度解説サイトや介護ソフトのマニュアルでは訪問介護の率が示されていることが多いです。訪問入浴介護の加算率を参照する際は、必ず訪問入浴介護の行の数値を確認してください。



訪問介護と訪問入浴介護はサービス名が似て見えるが、処遇改善加算の加算率は全く異なります。届出書類や計算書に数値を入れる前に、サービス種別の列を必ず確認してください。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 別紙1(表1-2)
令和8年6月に加算率が引き上がった
令和8年4月・5月は旧率据え置きのフェーズで、最上位区分Ⅰが10.0%でした。令和8年6月から新率が適用されてⅠイが12.2%、新設のⅠロが13.3%に引き上がっています。
現時点で旧区分のまま算定している場合は、区分変更がいつから反映されるか(体制届の提出月と適用開始月の関係)を所管の自治体(保険者)に確認してください。



加算額を試算するときは、対象の月が4月・5月(旧率10.0%)と6月以降(新率)のどちらのフェーズかを最初に確かめてください。フェーズを取り違えると、試算額が実際の入金額と合わなくなります。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 別紙1(表1-1・表1-2) 同 通知本文 2⑴
訪問入浴介護の処遇改善加算の算定要件
新加算の算定要件はキャリアパス要件・月額賃金改善要件・職場環境等要件の3本柱で構成されています。さらにⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロを算定する場合は、取組内容の公表が4つ目の要件として加わります。
どの区分を算定するかによって満たすべき量が変わるため、自事業所が取れる区分を判断する前に各要件の内容を先に確認しておきましょう。
キャリアパス要件はⅠ〜Ⅴの5段階


キャリアパス要件はⅠからⅤの5段階あり、どの段階まで充足しているかで算定できる区分が決まります。加算Ⅳは必要なキャリアパス要件がⅠ+Ⅱのみという最もハードルの低い区分です。
ただし加算Ⅳにも月額賃金改善要件と職場環境等要件(各区分1項目以上・生産性向上区分2項目以上)は必要になります。
| 算定区分 | 必要なキャリアパス要件 |
|---|---|
| Ⅰイ・Ⅰロ | 要件Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ+Ⅴ(全段階) |
| Ⅱイ・Ⅱロ | 要件Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ+Ⅳ |
| Ⅲ | 要件Ⅰ+Ⅱ+Ⅲ |
| Ⅳ | 要件Ⅰ+Ⅱ |
各キャリアパス要件の内容は次の通りです。
| キャリアパス要件 | 内容 |
|---|---|
| Ⅰ | 任用要件と賃金体系の文書化・周知 |
| Ⅱ | 研修実施・参加の機会確保 |
| Ⅲ | 経験・資格・評価にもとづく昇給の仕組みの整備 |
| Ⅳ | 年額賃金440万円以上の経験・技能ある職員を1人以上配置 |
| Ⅴ | 訪問入浴介護ではサービス提供体制強化加算Ⅰ又はⅡを届け出ていること |
要件Ⅳの年440万円以上の配置が難しい場合でも、規模・地域・賃金水準について合理的な説明がある場合は例外的な扱いが認められます。
合理的な理由の有無は所管の自治体または社会保険労務士に確認してください。
訪問入浴介護事業所が加算Ⅱイを取れるかを判断する場面を考えます。
任用要件と賃金体系を就業規則に定めて全職員に周知し(Ⅰ)、資質向上の目標と計画を立てて研修機会を確保し全職員に周知すれば(Ⅱ)、評価にもとづく昇給規定があれば(Ⅲ)。年収440万円以上の職員が1名以上いれば(Ⅳ)、Ⅱイのキャリアパス申請ラインに達します。
ⅠイはさらにキャリアパスⅤ(サービス提供体制強化加算の届出)が必要です。ⅡロはキャリアパスⅣまでで済む代わりに令和8年度特例要件((ア)ケアプランデータ連携システムの利用、または(ウ)社会福祉連携推進法人への所属)が別途必要になります。
キャリアパス要件Ⅴが求める「サービス提供体制強化加算」は、訪問介護の「特定事業所加算」とは全く別の加算です。
訪問入浴介護でキャリアパス要件Ⅴを満たすルートを確認したい場合は、訪問入浴介護のサービス提供体制強化加算を参照してください。



キャリアパス要件は書類が整っているかどうかで決まる部分が大きいです。要件Ⅰ(賃金体系の文書化)は就業規則や賃金規程の文言を確認するだけで充足できる事業所も多いです。
まず現時点の書類と照らして、充足状況を整理するところから始めてください。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 通知本文
月額賃金改善要件は基本給等に半分以上
月額賃金改善要件として、基本給または決まって毎月支払われる手当(基本給等)の改善に処遇改善加算Ⅳ相当額の2分の1以上を充てる必要があります。
加算Ⅳ相当額とは、実際に算定している区分がⅣ以外でも、仮に加算Ⅳ(訪問入浴介護は8.5%)を算定した場合に見込まれる額です。
実際に算定する区分がⅠイでもⅢでも、この要件の基準額は常に加算Ⅳの率で出す点に注意してください。



基準額は常に加算Ⅳの率というのは、認識のずれが生じやすい部分です!
一時金だけで賃上げを完了させることは認められていません。
月間の処遇改善加算Ⅳ相当額が8万円の事業所を例に考えます。このうち少なくとも4万円以上は基本給か固定手当の形で上乗せが必要で、残りの4万円は一時金や業績連動型の手当として支給できます。介護職員等処遇改善計画書を作成する際はⅣ相当額の半額以上が基本給等に入るかを最初に確認してください。



登録ヘルパーが多い事業所は特に注意が必要です。一時金だけで賃金改善を完結させると、基本給等での改善額が加算Ⅳ相当額の2分の1に届かないおそれがあります。毎月支払われる形の改善分を先に積んでおくと計画が安定しやすくなります。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 通知本文(月額賃金改善要件)
職場環境等要件を満たすことも必須
処遇改善加算は、賃金を上げるだけで算定できる加算ではありません。賃上げと同時に職場そのものを改善することも条件で、その職場側の条件が職場環境等要件です。
キャリアパス要件と月額賃金改善要件を満たしていても、この要件を落とすと加算は算定できません。最も低い加算Ⅳでも必要です。
やることは、厚生労働省が示す28項目の取組リストから自事業所で実施するものを選び、実際に取り組んで介護職員等処遇改善計画書に記載することです。



一覧は「厚生労働省が示す28項目の取組リスト」から見れます。32ページに一覧が載っています。
28項目は入職促進・資質向上(キャリアアップ)・両立支援(多様な働き方)・腰痛を含む心身の健康管理・生産性向上・やりがい(働きがい)の醸成の6区分に分かれています。選ぶ数は算定する区分で変わります。
| 算定区分 | 生産性向上を除く5区分それぞれ | 生産性向上区分 |
|---|---|---|
| Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ | 各区分2項目以上 | 3項目以上(⑰か⑱必須) |
| Ⅲ・Ⅳ | 各区分1項目以上 | 2項目以上 |
生産性向上の区分だけは条件が1つ多く、Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロを算定するなら3項目の中に⑰か⑱を必ず含めます。丸数字は28項目の通し番号です。⑰は生産性向上ガイドラインに基づく業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ等)、⑱は現場の課題の見える化(課題の抽出・業務時間調査等)です。



新しい取組をゼロから始める必要はありません。腰痛対策のように、すでに実施していることが28項目に含まれている事業所も多いです。
一覧は出典PDFの別紙1 表4にあるので、まず現在の取組と照らし合わせてください。
なお、1法人あたり1施設・事業所のみを運営している小規模事業者には特例があります。項目㉔を実施すれば、生産性向上区分は項目数も⑰か⑱必須の条件も含めて満たしたものとして扱われます。
ただし残り5区分の項目数要件は引き続き必要です。
㉔は「協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組」です。各種委員会の共同設置・各種指針や計画の共同策定・物品の共同購入・ICTインフラの共同整備・人事管理システムの共通化等が例示されています。
1法人1事業所なら㉔の1取組で生産性向上区分の要件が満たせる可能性があるため、所管の自治体に確認する価値があります。



「うちは1事業所だから特例が使えるか」という質問をよく受けます。判断基準は「1法人あたり1施設・事業所のみの運営かどうか」で、同一法人が複数の事業所を持っていれば対象外です。迷ったら所管の自治体に確認してください。
訪問入浴介護で小規模運営している事業所が、他法人と衛生用品の共同購入と委員会の共同設置を始めた場面を考えます。これらは㉔の協働化として記録に残すことができます。「勉強会を開いた」だけでは不足で、委員会・計画・物品・ICT・システム等の共同実施が求められる点を確認しておきましょう。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 通知本文(職場環境等要件・小規模事業者特例)
公表要件はⅠイ以上の算定で必須
処遇改善加算Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロを算定する事業所は、職場環境等要件の取組内容をホームページ等(介護サービス情報公表システムを含む)で公表することが算定要件になっています。
情報公表制度の活用や自社ホームページへの掲載が認められた公表方法です。なお算定要件としての公表は介護サービス情報公表システムへの掲載でも満たせるので、そのためにホームページを作る必要はありません。
その上で、加算の取組を採用の場面でも使いたいときの選択肢がホームページになります。
取組内容の公表は制度上の義務であると同時に、職員を大切にしている事業所であることを求職者や家族に示す機会でもあります。加算を取得している事実と取り組み内容を自社ホームページで発信しておくと、求人票だけでは伝わらない情報を届けられます。



加算取得の実績を採用ページに書いておくと、求人票だけでは伝わらない情報を届けられます。処遇改善に取り組んでいる事業所というシグナルは、求職者の信頼につながります。取組の一言メモを1〜2行掲載するだけで十分です。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 通知本文(職場環境等要件)
上乗せ区分Ⅰロ・Ⅱロの令和8年度特例要件
ⅠロとⅡロは令和8年6月に新設された上乗せ区分で、キャリアパス要件や月額賃金改善要件を満たすだけでは算定できません。
この2区分には令和8年度だけの特例要件が別に設けられており、訪問入浴介護で選べる選択肢は限られます。
特例要件は(ア)と(ウ)の2択


Ⅰロ・Ⅱロの上乗せ区分を算定するには、通常の要件に加えて次の特例要件のいずれかを満たす必要があります。訪問入浴介護で実際に選べるのは(ア)と(ウ)の2択です。
| 選択肢 | 内容 | 訪問入浴介護での利用 |
|---|---|---|
| (ア) | ケアプランデータ連携システムを利用していること | 利用可 |
| (イ) | 生産性向上推進体制加算Ⅰ又はⅡを算定していること | 対象外(訪問入浴介護には当該加算が設定されていない) |
| (ウ) | 社会福祉連携推進法人に所属していること | 利用可(実際の所属が申請時点で必要) |



(ア)ケアプランデータ連携システムは現時点で未利用でも誓約で先に申請できるが、(ウ)社会福祉連携推進法人は実際の所属が申請時点で必要です。どちらのルートを選ぶかは算定開始のスケジュールに影響するため、早めに方針を決めてください。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 通知本文(令和8年度特例要件)
誓約すれば申請時点で充足扱いになる
誓約制度とは、申請の時点で要件が整っていなくても、令和9年3月31日までに実施する旨を計画書に記載して誓約すれば、申請時点から満たしているものとして扱う仕組みです。
誓約できるのはキャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳと職場環境等要件の不足分です。
ただし誰でも使えるわけではなく、令和8年度特例要件((ア)または(ウ))を満たす事業所に限られます。この条件は算定する区分に関係なく必要で、Ⅰロ・Ⅱロ専用の制度ではありません。
そして(ア)ケアプランデータ連携システムは、現時点で未利用でも加入・利用する旨を誓約すれば申請時点で満たしたものとして扱われます。
一方(ウ)社会福祉連携推進法人には誓約の規定がなく、申請時点で実際に所属していなければなりません。
つまり、まだ何も整っていない事業所の現実的な入口は(ア)の誓約です。
ここで加算率表の「特例要件の要否」欄と混同しないでください。あの欄の「不要」はその区分を算定するだけなら特例要件は要らないという意味です。
誓約を使うなら、申請する区分にかかわらず特例要件を満たすことが前提になります。誓約を使わずにⅡイを算定するなら特例要件はいりません。
誓約した場合は令和9年3月31日までに実際の整備を完了させ、実績報告書で報告する必要があります。



誓約は手続きの猶予であって義務の免除ではありません。令和9年3月末までに整備が間に合わなければ要件未達として扱われるリスクがあります。誓約した内容はスケジュールを立てて確実に進めてください。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 通知本文(令和8年度特例要件および各要件の誓約規定)
3職種チームへの処遇改善加算の配分
訪問入浴介護の提供は1回の訪問につき看護職員1人と介護職員2人の計3名体制が基本です。この3職種体制は処遇改善加算の配分設計に直接影響します。
新加算では職種間の配分ルールが統一されたため、3職種全員を対象にした賃金改善計画を1つの制度のもとで設計できるようになりました。



3職種全員を同一の制度で設計できるようになったとはいえ、職種・雇用形態・月次勤務時間が異なる分、実際の配分計算は複雑になりがちです。介護職員等処遇改善計画書を作成する前に、職員ごとの雇用区分と勤務実績を一覧にしておくと計算がスムーズになります。
出典:指定居宅サービス等基準(平成11年3月31日厚生省令第37号)第50条第6号
看護職員にも配分できるようになった


旧制度では処遇改善加算の配分対象が主に介護職員に限られており、看護職員への配分は別加算のルールで行われていました。
新加算(介護職員等処遇改善加算)では職種間の配分ルールが統一され、訪問入浴介護で毎回同行する看護職員も新加算の配分対象として明確に位置づけられました。
なお必ず配分しなければならない義務はなく、後述のとおり職務内容・勤務実態に見合った合理的な設計が求められます。
訪問系の事業所を回っていた頃、看護職員の待遇だけが介護職員と別ルートで決まる仕組みに違和感を持つ管理者に何度も会いました。3職種が同じ制度の中で処遇を語れることは、チームの一体感に効いてきます。
3人チームで月に80件の訪問入浴を担当する事業所を例に考えます。
旧制度では介護職員2名が主な対象で看護職員の賃上げは別のルートが必要だったが、新加算では3名全員の賃金改善計画を1つの制度のもとで設計できます。
役割が同じなのに処遇の仕組みが違うことで生じていた不満は、配分設計の見直しで解消につなげやすくなります。
出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 処遇改善加算制度一本化リーフレット」
3職種の配分比率は勤務実態を根拠にする
配分割合は合理的な根拠のもとで事業所が設計できるが、「職務の内容や勤務の実態に見合わない著しく偏った配分」は認められていません。
たとえば看護職員だけに加算額の大半を集中させる、または介護職員2名を配分対象から外すような設計は要件を満たさない可能性があります。
常勤職員は基本給の引き上げ、非常勤・登録職員は時間給への上乗せや一時金での配分が実務上多いです。勤務時間数を按分根拠にすると計画書に根拠を明記しやすくなります。
3職種チームで配分設計をする際は、職種・役割・経験年数を根拠にした合理的な割合を設定しておきましょう。
介護職員等処遇改善計画書には基本給等で行う賃金改善の総額を記載し、賃金改善の方法を全職員へ周知します。
看護職員1名・常勤介護職員1名・登録介護職員1名の3名チームを例に考えます。加算Ⅳ相当額が月6万円の場合、基本給等での改善が3万円以上必要です。
常勤看護職員の基本給を月1万5千円引き上げ、常勤介護職員も同額引き上げた上で、登録介護職員には時間給に上乗せすれば基本給等改善の合計が3万円を超えて月額賃金改善要件を満たします。



配分設計で悩んだら、看護1:介護1:介護1の比率で均等に分けるか、経験年数で傾斜をつけるかから考え始めてください。どちらを選ぶ場合も、配分の根拠を説明できるように整理しておきましょう。
迷ったら社会保険労務士に相談してください。
訪問入浴介護の処遇改善加算の届出手順


処遇改善加算を算定するには、介護職員等処遇改善計画書の作成・提出から始まる一連の届出手続きが必要になります。届出期限は通知に定められた全国ルールです(都道府県知事等が期日を延長することができる)。
届出先・様式・提出方法の詳細は所管の自治体に確認してください。
準備の4ステップで動き出しましょう。
- 就業規則・賃金規程でキャリアパス要件のどこまで充足しているかを確認する
- 充足状況から取れる区分を決める
- 所管の自治体窓口に今年度の様式と届出の詳細を確認する
- 介護職員等処遇改善計画書を作成して期限内に提出する
提出書類と期限の原則は次のとおりです。令和8年度の確定日付を括弧内に示します。
| 書類 | 期限(通知に定める原則) | 令和8年度の確定日付(臨時改定に伴う特例/⚠️は経過済み) |
|---|---|---|
| 介護職員等処遇改善計画書 | 算定開始月の前々月の末日まで(事業年度ごとに提出) | ⚠️令和8年4月15日(6月から算定開始の場合は6月15日) |
| 体制届(介護給付費算定に係る体制等に関する届出) | 算定開始月の前月15日まで(居宅系サービス) | ⚠️令和8年6月算定開始なら令和8年5月15日 |
| 実績報告書 | 最終加算支払月の翌々月の末日まで(事業年度ごとに提出) | 令和9年7月31日 |
⚠️の日付は本記事公開時点で経過済みで、これから算定を始める事業所が使う期限ではありません。その場合は右列ではなく、中央の原則列から逆算します。
令和8年度の計画書は臨時改定にあわせて期日が個別に定められており、原則の前々月の末日からは計算できません。
この当初期限はすでに過ぎているため、これから新規に算定を始める場合や区分を上げる場合は原則に戻って逆算します。
たとえば令和8年10月分から算定するなら、計画書は8月31日まで、体制届は9月15日までに提出することになります。
計画書と実績報告書は毎事業年度の提出が必要です。実績報告書の未提出は加算返還の対象になり得ます。都道府県知事等の判断で期日が延長されることがあるため、詳細は所管の自治体に確認してください。



介護職員等処遇改善計画書は締め切りギリギリに提出すると修正を求められた場合に対応できなくなります。計画書の完成は期限の1か月前を目安にしましょう。
加算Ⅳから始める場合を考えます。必要なキャリアパス要件はⅠ+Ⅱのみです。
要件Ⅰは任用要件と賃金体系を就業規則等に定めて全職員に周知すること、要件Ⅱは資質向上の目標と計画を立てて研修の実施または機会確保を行い全職員に周知することで満たせます。
月額賃金改善要件(加算Ⅳ相当額の2分の1以上を基本給等に充てる)と職場環境等要件(各区分1項目以上・生産性向上区分2項目以上)も同時に満たす必要があります。
加算Ⅳの8.5%から算定を始め、収益が安定してから上位区分へ段階的に引き上げるのが小規模事業所には現実的な進め方です。
出典:厚生労働省 令和8年3月13日老発0313第6号 通知本文(4⑵⑶・5⑴)
まとめ|訪問入浴介護の処遇改善加算の要点
まず3点を確認しておきましょう。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 加算率は8.5〜13.3% | 訪問介護(Ⅰイで27.0%)の数値を流用しないこと |
| 看護職員を含む3職種全員が配分対象 | 新加算で職種間ルールが統一された |
| 特例要件((ア)または(ウ))を満たす事業所は誓約制度で上位区分を先に取れる | 令和9年3月末までに整備・実績報告が必要 |
旧3加算は令和6年6月に介護職員等処遇改善加算へ一本化されました。現在は令和8年6月改定で新設されたⅠロ・Ⅱロを含む6区分があり、訪問入浴介護の加算率は8.5〜13.3%のレンジです。
3職種チームへの配分では看護職員も対象になりました。Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロを算定するには取組内容をホームページ等(介護サービス情報公表システムを含む)で公表することも要件になっています。
小規模事業所なら必要なキャリアパス要件がⅠ+Ⅱのみの加算Ⅳから始め、段階的に上の区分を目指すのが現実的な進め方です。
処遇改善加算を取っていることは、求職者に対するアピールにもなります。そのため、積極的に取得するように心がけましょう。
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