2025年、老人福祉・介護事業者の倒産は176件と2年連続で過去最多を更新しました。同年の休廃業・解散は653件と4年連続の過去最多です。倒産するのは資金繰りに行き詰まった施設だけと考えているとすれば、その認識は半分しか正しくありません。
閉鎖に至る原因の多くは、採用できないという状態から始まり収益悪化という悪循環で終わります。
筆者はかつて介護特化型の人材紹介会社でキャリアアドバイザーとして全国の介護施設を訪問し、その後Teraceとして介護施設専門のホームページ制作を手がけています。
閉鎖に追い込まれた施設と踏みとどまった施設の違いは何か。施設を横断して見てきた視点からお伝えします。
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介護施設の倒産・休廃業の実態
介護事業者が事業をやめる形には「倒産」と「休廃業・解散」の2種類があります。
どちらも施設がなくなるという意味では同じですが、経緯と背景が大きく異なります。
倒産は負債を抱えたまま破産・民事再生などの法的整理に入るケースです。一方の休廃業・解散は、資産超過の状態でも経営者が自らの判断で事業を終了させるケースです。
現在の介護施設の状況がどのようになっているのか、具体的に説明します。
倒産よりも休廃業が3倍以上多い
2025年の老人福祉・介護事業者の倒産は176件(前年172件・前年比2.3%増)、休廃業・解散は653件(前年612件・前年比6.6%増)でした。
ぺんすけ倒産に対して休廃業・解散は約3.7倍に上ります!
倒産176件の内訳を見ると、破産が160件(構成比90.9%)と大半を占め、ほぼ消滅型です。規模別では従業員10人未満の小・零細事業者が142件(構成比80.6%)と突出しています。
倒産の原因別では、売上不振(販売不振)が140件(構成比79.5%)と約8割を占めます。
2025年に注目すべきは、東京商工リサーチが初めて独立集計した人手不足倒産が29件(前年比45.0%増)と過去最多を更新した点です。うち求人難が15件で、採用できないことが直接の引き金となった倒産が増えていることが数字に表れています。
また、休廃業・解散の653件はすべてが経営難ではなく、後継者難・経営者の高齢化・将来への見通しの悪さから自ら幕を引くケースも含まれています。黒字でも閉める選択をした事業者が一定数存在するという実態を、まず理解しましょう。



「倒産=経営難で潰れた」という理解のまま経営を続けると、危機感が鈍ります。休廃業・解散が倒産の3.7倍という数字は、経営がまだ成立しているうちに幕を引く判断をした施設がそれだけ多いということです。将来への見通しが暗いほど、早期撤退を選ぶ経営者が増えるという業界の現実を示しています。
出典:東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』倒産 過去最多の176件」、東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』の休廃業・解散653件」
訪問介護が件数の5割以上を占める
サービス種別で見ると、訪問介護の件数が際立っています。
2025年の倒産176件のうち、訪問介護は91件(前年81件・前年比12.3%増)と3年連続で過去最多を更新しました。同年の休廃業・解散653件のうち、訪問介護は465件(前年448件・前年比3.7%増)と突出しています。
一方で、全サービスが増えたわけではありません。通所・短期入所の倒産は45件(前年56件)、有料老人ホームは16件(前年18件)とどちらも前年より減少していますが、過去2〜3番目の高水準であり安心できる状況ではありません。
グループホームについては、倒産が前年の2件から9件へと急増しました。グループホームの急増を見ると、同じ地域密着型サービスに属する小規模多機能型居宅介護なども、閉鎖リスクが高まっているとみられます。


| 区分 | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 倒産(全体) | 172件 | 176件 | +2.3% |
| 休廃業・解散(全体) | 612件 | 653件 | +6.6% |
| 訪問介護の倒産 | 81件 | 91件 | +12.3% |
| 訪問介護の休廃業・解散 | 448件 | 465件 | +3.7% |
| 通所・短期入所の倒産 | 56件 | 45件 | −19.6% |
| 有料老人ホームの倒産 | 18件 | 16件 | −11.1% |
| 認知症グループホームの倒産 | 2件 | 9件 | 急増 |
(注:TSRは2025年版で倒産と休廃業・解散の合計値を公表していないため、合計行は省略しています)



訪問介護の件数が突出している背景には、サービス特性があります。
ヘルパー1人の退職がサービス提供数の直接減少に結びつく訪問介護は、他のサービス種別よりも人手不足の影響を即座に収益に受けます。有料老人ホームなどは施設内で複数スタッフが対応できるため、1人の離職のインパクトが相対的に小さくなります!
出典:東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』倒産 過去最多の176件」、東京商工リサーチ「2025年『介護事業者』の休廃業・解散653件」
人手不足が閉鎖を招く悪循環のしくみ
人手不足が起きたから採用するというシンプルな対応がなぜ難しいのか。この章では閉鎖に至る悪循環のメカニズムを整理します。
令和7年度介護労働実態調査(令和8年7月29日公表)によると、従業員が不足していると感じている事業所は65.8%に上ります。
訪問介護員に限ると不足感はさらに高く、大いに不足・不足・やや不足の合計が82.9%に達します。約3事業所に1つ(32.0%)が深刻な不足を感じている状況です。
なお人手不足の深刻さや有効求人倍率の基礎知識については、以下の記事で詳しく検証しています。


出典:介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」結果の概要(令和8年7月29日公表)
離職が採用費を上げ収益を圧迫する
人手不足の悪循環は次の流れで進行します。
- 人員が少ない → 残った職員に業務負荷が集中する
- 過酷な勤務環境が続く → 職員が離職する
- 人員がさらに不足する → サービスの質が低下する
- 利用者・家族の信頼が落ちる → 利用者が減少する
- 収益が落ちる → 採用費を出す余力が消える
- 採用できない → 人員不足がさらに深刻化する
キャリアアドバイザー時代に求職者の転職相談を担当していた経験から言うと、離職の根本原因は業務量の多さよりも人間関係が大多数を占めていました。



転職活動中に求職者から最もよく聞かれた言葉は「お局がいないか」です。
それだけ誰と働くかが介護職の定着を左右しており、採用数を積み上げるだけでは悪循環は止まりません。
職場の人間関係やチームの雰囲気が変わらないかぎり、採用してもまた辞めるという連鎖が繰り返されます。
2025年の倒産176件のうち従業員10人未満の小・零細事業者が142件(構成比80.6%)を占めており、1回の採用コストが経営に直撃する規模の施設が閉鎖の多数を占めています。
訪問介護事業者の倒産91件に占める人手不足による倒産は13件で、求人難が7件・従業員退職が4件などです。ヘルパー不足が直接の引き金となって事業継続を断念した事業所が、訪問介護だけで13件あったことを示しています。
訪問介護事業所Aでは、ヘルパー10人体制で月150件のサービスを提供していました。
そのうち2人が半年以内に離職し、残り8人に負荷が集中しました。月20日以上の出勤が続いた中堅ヘルパー1人がさらに退職し、7人体制になりました。
求人サイトへの掲載を月8万円で始めたものの、応募は月1〜2件にとどまりました。採用まで3か月かかり、その間の求人掲載費・面接対応コストが積み重なって月20万円超の持ち出しになりました。
サービス件数を絞らざるを得なくなり、収益がさらに落ちるという悪循環が続きました。
このように人手不足になると悪循環になり、経営が傾くケースが出てきます。
出典:東京商工リサーチ「2025年『訪問介護』倒産 91件、3年連続で最多更新」
利益幅が薄すぎて採用費の余裕がない
介護事業の利益幅は他業種と比べてきわめて薄く設定されています。
厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算・税引前・物価高騰対策補助金を含まない)によると、サービス種別の収支差率(収益から支出を引いた額÷収益×100で求める利益率)は次のとおりです。
| サービス種別 | 令和5年度 | 令和6年度 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 11.1% | 9.6% | −1.5ポイント |
| 通所介護 | 6.5% | 6.2% | −0.3ポイント |
| 介護老人福祉施設(特養) | 1.3% | 1.4% | +0.1ポイント |
訪問介護は前年度から−1.5ポイントと大きく落ち込んでいます。通所介護も−0.3ポイントです。特養は微増ですが、1.4%という水準では採用費が月10〜20万円増えるだけで赤字に転落するリスクがあります。
令和6年度決算で赤字(税引前収支差率が0%未満)だった事業所は、全サービス平均で37.5%に上ります。施設サービスでは44.8%、居宅サービスでも35.6%が赤字です。
約4割の事業所が赤字経営を続けている状況の中で、採用費の上昇や物価高騰は致命傷になり得ます。



訪問介護の収支差率9.6%は、売上の1割弱しか手元に残らない水準です。求人掲載費を1か月分積み増すだけで、利益のかなりの部分が消える薄さであることを、数字で実感しておいてください。


出典:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果(案)」第4表・第8表・第1表、厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」赤字事業所・黒字事業所数の割合
閉鎖リスクを測る4つの経営指標
自施設が今どのくらい閉鎖リスクにさらされているかを客観的に判断するには、数値に照らした自己診断が必要です。
他の記事では閉鎖の前兆として定性的なチェックリストを示していることが多いですが、この記事では数値基準を示します。


- 採用応募が3か月途絶えている
- 利益率3%割れが3か月続いている
- 離職率が業界平均12.4%を超えている
- 稼働率が危険ラインを下回っている
それぞれ具体的に説明します。
採用応募が3か月途絶えている
介護サービス職業従事者(常用・パート含む)の有効求人倍率は4.25倍(令和6年12月)に達しています。求職者1人に対して4件以上の求人がある環境では、施設に選ばれる明確な理由がないと応募は来ません。
3か月連続で応募がゼロの場合、求人票を出しているだけでは施設の魅力が伝わっていない可能性が高いです。賃金・勤務条件以外で求職者の心を動かす情報が、求職者の目に届いていないことが多くの場合の根本原因です。



キャリアアドバイザーとして施設を訪問していた頃に感じていたのは、「ホームページがないだけで紹介業者の候補リストから外れる」という現実でした。
求人票だけでは職場の雰囲気や人間関係が伝わらず、応募が集まらないから紹介もされないという状態が続く施設を、何件も見てきました。
通所介護E(定員20名)では、ハローワークと求人サイト1社に同時掲載していたにもかかわらず、3か月間で応募が1件もありませんでした。求人票には賃金・勤務時間・休暇日数が記載されているだけで、スタッフの顔写真・職場の雰囲気・子育て支援の実績は一切発信されていませんでした。施設名で検索しても公式ページが見つからない状態で、求職者が施設を評価する情報が求人票以外に存在しなかったことが、応募ゼロの根本原因でした。
有効求人倍率が高い介護業界では、採用サイトやホームページを用意して、キャリアアップの具体例や、実際に働いているスタッフの声を発信するなど、差別化することが大事になってきます。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年12月分及び令和6年分)」参考統計表6
利益率3%割れが3か月続いている
訪問介護9.6%・通所介護6.2%・特養1.4%が令和6年度決算の業界水準です。施設種別に応じた収支差率を把握し、3%を下回る状態が3か月以上続いているなら警戒が必要です。
3%割れの状態では、次のような事象が一つ起きるだけで収支が赤字に転落します。
- 職員の急な離職による臨時の採用費発生
- 設備の修繕・交換コストの発生
- 利用者数の一時的な減少(入院・転居など)
収支差率の計算式は(収益−支出)÷収益×100です。月次または四半期ごとに把握し、前の期と比べてどの方向に動いているかをトレンドで見ることが重要です。
訪問介護の一人当たり売上と採算ラインの詳細については、以下の記事で解説しています。


離職率が業界平均12.4%を超えている
令和7年度介護労働実態調査(令和8年7月29日公表)によると、訪問介護員・介護職員の2職種計の離職率は12.4%です。
自施設の離職率が12.4%を超えているなら、組織の定着に構造的な問題が起きていると考えるべきです。とくに29歳以下の離職率は17.3%と高く、若手の定着率が全体の離職率を押し上げているケースが多いです。
離職率の計算式は年間の離職者数÷在籍者数×100です。職員が10人いて年間2人離職すれば20%と、業界平均を大きく上回ります。月次で離職が1件出ている状態が続いているなら、年率換算では深刻な水準になっている可能性があります。
離職率の改善は採用コストの削減に直結します。10人体制で年間2人の離職が起きている場合(離職率20%)、採用のたびに求人掲載費や紹介手数料が積み上がります。
離職率を業界平均12.4%水準(10人中1人前後)に改善できれば、採用機会そのものが減り、採用費の負担を大幅に圧縮できます。



離職率の改善は採用費削減だけでなく、残った職員の業務負荷を下げ、さらなる離職を防ぐ循環改善につながります。人件費が逼迫している施設ほど、採用を増やすより離職を減らす取り組みを先に検討することをおすすめします。
出典:介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」結果の概要(令和8年7月29日公表)
稼働率が危険ラインを下回っている
デイサービスやグループホームなど定員制の施設では、稼働率が収益に直結します。一般に稼働率80%を下回る状態が3か月以上続くと、固定費(人件費・家賃・光熱費)を収益でまかなえなくなる可能性があります。
これは目安であり、施設の規模や固定費の水準によって閾値は異なります。
稼働率の低下と人手不足は連動しています。職員が足りないと受け入れられる利用者数が制限され、稼働率を上げられない状況が生まれます。人員不足→稼働率低下→収益悪化という流れが重なると、回復に必要な採用投資すら難しくなります。
稼働率が80%を下回り始めたら、次の点を確認してください。
- 定員割れが人員不足による受入制限から来ているか
- 利用者の自然減(入院・転居・死亡)によるものか
- 競合施設の新設や稼働増が影響しているか
原因によって打ち手が異なるため、まず原因を切り分けることが大切です。



稼働率の低下が人員不足起因か競合起因かで、対策が全く変わります。競合施設の新設が原因であれば採用を増やしても稼働率は戻りません。原因を混同すると、対策費だけが増えて状況が改善しない悪循環に入ります。
| 経営指標 | 危険ラインの目安 | 自施設の現状 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 採用応募数 | 3か月連続ゼロ | (記入欄) | |
| 収支差率 | 3%割れが3か月続く | (記入欄) | |
| 離職率 | 業界平均12.4%超 | (記入欄) | |
| 稼働率 | 80%未満が3か月以上 | (記入欄) |



4指標のうち2つ以上が危険ラインに入っているなら早急に手を打つ必要があります(訪問介護など定員制でない事業所は稼働率を除く3指標で判断します)。
1つだけなら対処の余地がありますが、指標が重なるほど回復に必要な時間とコストは急増します。まだ大丈夫と感じているうちに動くことが、閉鎖を回避できるかどうかの分かれ目です。
人手不足に追い打ちをかける報酬改定とコスト高
介護施設が苦境に立つ原因は人手不足だけではありません。
2024年前後から3つの要因が同時に経営を圧迫しており、人手不足だけを解消しようとしても他の要因が残れば経営改善は困難です。
競合記事の多くが人手不足から閉鎖という単線で描いていますが、現実は三重苦の構造です。次の表で整理します。
| 要因 | 具体的な影響 | 特に影響を受けるサービス |
|---|---|---|
| 報酬改定のマイナス | 訪問介護の収支差率が令和6年度決算で前年度比−1.5ポイント低下 | 訪問介護 |
| 物価・光熱費の高騰 | 食材費・光熱費の上昇が施設の固定費を直撃 | 通所介護・入所系施設 |
| 大手法人の参入による採用競争 | 高い賃金・充実した福利厚生で小規模施設の採用が不利に | 小規模・零細事業者全般 |
訪問介護は2024年度の介護報酬改定でマイナス改定を受けました。その影響が令和6年度決算の収支差率に直接表れており、前年度11.1%から9.6%と1.5ポイントも落ち込んでいます。
報酬が下がりながら物価は上がり、採用コストも増えるという三重苦の中で、特に小規模・零細の事業者には余力が失われています。
大手介護法人や医療法人系の施設が採用市場に参入し、賃金水準を引き上げた結果、中小の事業者は同じ土俵では戦いにくい採用環境になっています。施設の魅力を言語化し外部に発信できているかどうかが、この採用競争で生き残れるかの分かれ目になっています。



大手との賃金競争で勝つのは容易ではありません。だからこそ、職場の雰囲気・働き方の柔軟性・職場環境の良さという賃金以外の要素を発信できる施設が採用競争を生き残っています。
情報発信がないと、求職者には賃金だけで判断されます。
出典:厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果(案)」第4表
介護施設が選べる採用チャネルの特徴比較
採用を改善するためにどのチャネルから着手すべきかを判断するには、各チャネルの特徴を横並びで把握することが必要です。



報酬改定・物価高騰・採用競争という三重苦の中でも動ける事業者が共通して行っていたのは「比べられる前に選ばれる準備」です。
求職者が施設名で検索したときに職場の雰囲気が伝わるページを持ち、ケアマネジャーに営業した際に渡せる施設紹介資料があります。
その積み重ねが大手との差別化につながっていました。
採用チャネルを選ぶ前に把握しておきたいのが、採用と定着に効果があった方策です。
令和7年度介護労働実態調査によると、採用に効果があった方策の1位は賃金水準の向上(38.4%)です。定着に効果があった方策の1位は有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり(57.9%)で、実施率1位も同じ75.4%でした。これらはいずれも採用ホームページで発信できる内容です。
なお表中の特定技能は外国人が介護分野で就労するための在留資格の一種、EPAは日本が締結した経済連携協定に基づく受入れ枠組みです。詳細は後の節で説明します。
| 採用チャネル | 採用までの期間 | 費用の目安 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 求人媒体(ハローワーク・求人サイト) | 1〜3か月 | 無料〜十数万円/月 | 急いで募集したい | 応募単価が高くなりやすい |
| 人材紹介会社 | 1〜2か月 | 成功報酬(年収に対する一定割合) | 採用の手間を省きたい | 1件で百万円超になる場合も |
| 外国人材(特定技能・EPA等) | 6か月〜1年以上 | 支援機関費用等 | 中長期の安定を図りたい | 受入体制の整備が必要 |
| 施設の採用ホームページ | 3か月〜(徐々に増える) | 初期の制作費(一括払い)+月次の運用費(制作会社の規模により幅がある) | 中長期で自力採用を育てたい | 即効性は低い。公開後の継続更新が必要 |


出典:介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」結果の概要(令和8年7月29日公表)
求人媒体は速いが採用単価が高くなりやすい
ハローワークへの求人登録は無料ですが、介護専門の求人サイトへの掲載は月数万円〜十数万円が一般的です。スピードの面では即効性があり、掲載翌日から応募が来ることもあります。
ただし掲載形式の性質上、どの施設も同じ条件で並ぶため、賃金・休暇制度が特出していない場合は競合と差がつきにくいです。3か月掲載しても採用できない場合、掲載費だけが積み重なり収支がさらに悪化するリスクがあります。
施設の雰囲気・スタッフの人柄・子育て支援など、求職者が本当に知りたい情報は求人票の限られた文字数では伝わりにくいです。求人媒体への掲載を続けながら、情報発信の質を上げる並行対策が必要になります。



求人票を出して待つだけでは、施設の個性が伝わらず賃金だけで選ばれます。同じ賃金なら「どんな職場か」が決め手になりますが、それを伝える手段が求人票にはありません。
人材紹介は確実だが手数料が大きくなる
人材紹介会社は採用が決まるまで費用が発生しない成功報酬型が多く、採用リスクを抑えられる点が最大のメリットです。
また紹介会社が事前に条件や価値観のマッチングを行うため、ミスマッチによる早期離職が起きにくい傾向があります。
しかし成功報酬は年収に対する一定割合が請求される仕組みで、介護職員の場合でも採用1件ごとに数十万〜百万円超のコストになることがあります。
採用を紹介会社に頼り続けると、採用費が毎年の固定コストとして積み重なります。
訪問介護事業所H(ヘルパー12名体制)では、年間に3名を人材紹介経由で採用していました。
採用のたびに紹介会社へ成功報酬を支払う構造が続き、採用費が経営上の固定コストとして積み重なっていました。
紹介会社への依存を見直し、採用ホームページを整備した2年目からは、自力応募が月1〜2件生まれ始め、紹介経由の採用を年1件以下に抑えられています。



人材紹介会社は決して悪い採用手段ではありません。
ただし、活用し続けるほど施設が自力で採用できる力が育ちにくくなります。紹介会社を使いながら並行して採用ホームページを育てることで、数年後に採用コストを大幅に下げている施設を複数見てきました。
私はレバウェル介護でキャリアアドバイザーをやっていた経験がありますが、人材紹介や派遣はたしかにお金さえ払えば人員は補填できます。ただし、怖いのは経営状況が悪くなってきた時に、その紹介料や派遣料などの人件費が重くのしかかってくるところです。
人材紹介会社に頼りつつも、やはり自社の中で採用はできるようにしていくことがベストでといえます。
外国人材は長期安定だが受入準備が必要
特定技能・EPA(経済連携協定)などの制度を使った外国人材の採用は、日本語能力と介護の基礎知識を持つ人材を長期就労前提で確保できる点が強みです。
一度受入体制が整えば、安定した人員確保につながります。
一方で受入れ支援機関との契約・社内マニュアルの多言語対応・生活サポートの整備など、受入態勢の準備に6か月〜1年以上かかることが多いです。即時の人手不足解消には向かず、2〜3年計画での採用戦略として位置づけることが適切です。



外国人材の受入れを決断したなら、現場の既存スタッフへの事前説明が何より重要です。受け入れる側の理解と協力体制が整っていないと、採用できても定着しません。
また文化・言語の違いに対応できる現場の受入体制が整っていないと、せっかく採用しても定着しないケースもあります。受入前の現場研修や職員への意識づけも並行して進める必要があります。
特定技能1号で介護職員2名を受け入れた小規模有料老人ホームG(定員20名)を例に考えてみます。
受入前に日本語会話の勉強会を月2回実施し、多言語対応マニュアルを整備した場合、
受入から6か月後にはオンコール対応まで担えるようになり、夜勤の人員不足を解消できる可能性があります。
受入準備に8か月を要することが多いですが、長期就労前提の外国人材が定着することで、毎年繰り返していた採用費の負担を大幅に抑えられます。
施設の採用HPは中長期で応募を増やせる
採用がうまくいかない施設の多くは、ホームページに働く人の顔が見えていません。
求職者が施設名と求人ワードで検索したときに、施設の雰囲気・職員の声・勤務条件・子育て支援の実績が伝わるページがあるかどうかで、応募数は大きく変わります。
採用ホームページの整備は即効性こそ低いものの、広告費をかけずに継続的な応募を生み出す資産になります。



レバウェル介護のキャリアアドバイザーをやっている頃も、施設HPがあるサイト・ないサイトではまったく応募率が異なりました。
令和7年度調査で定着への効果が最も確認されていた有給休暇の取得や勤務時間の変更をしやすい職場づくり(57.9%)はホームページで発信できる内容です。採用前から定着要因を見せることで、入職後のミスマッチも減らせます。
グループホームB(入居定員18名)を例に考えてみます。採用ホームページを整備する前は年間採用費が約50万円(求人サイト3か月掲載)かかっていました。
採用ページにスタッフの一日の流れ・有給取得率・子育てしながら働く職員のインタビューを掲載したところ、施設名を含む採用関連キーワードでの検索から問い合わせが月2〜3件入るようになりました。
採用費を求人サイト掲載から採用ページの運用に切り替えることで、翌年の採用コストを半減できるという計算になります。
施設の人間関係や定着の良さを外部に伝える手段としてホームページが機能した場合の例です。
ただし採用ホームページには短所もあります。公開直後は検索順位が低く、応募につながるまで数か月かかる場合が多く、更新を続けなければ訪問者が増えても応募に至りません。
作るだけでなく継続的な情報発信が必要な点で、他のチャネルより手間がかかります。採用ホームページが施設の採用力に与える影響については、介護施設にホームページが必要な3つの理由で詳しく解説しています。
まとめ
2025年の介護事業者の倒産は176件(2年連続過去最多)、休廃業・解散は653件(4年連続過去最多)です。
倒産の80.6%が従業員10人未満の小・零細事業者であり、人手不足の直接的な影響を受けやすい規模の施設ほどリスクが高い状況です。
人手不足が閉鎖を招く悪循環の構造は、離職が採用費を増やし収益を悪化させ、サービス低下が利用者流出を招くという連鎖です。
自施設の閉鎖リスクを測る4指標として、次の状態が続いていないかを確認してください。
- 採用応募が3か月ゼロの状態
- 収支差率3%割れが続いている状態
- 離職率が業界平均12.4%(令和7年度・訪問介護員+介護職員の2職種計)を超えている状態
- 稼働率が目安80%を下回り続けている状態
厚生労働省の第9期介護保険事業計画によると、2040年度には現在より約57万人多い約272万人の介護職員が必要です。2026年度時点でもすでに約240万人が必要とされており、人手確保の競争は今後も続きます。
採用市場の構造的な需給逼迫は短期間で解消されるものではなく、各施設が自力で選ばれる仕組みを作ることが人手不足による閉鎖の回避策になります。



倒産・休廃業の実態を見てきた感想として、閉鎖した施設の多くは「施設として価値がなかった」わけではありません。
地域に必要とされながら、人材確保と情報発信が後手に回った結果として閉まっていった施設を何件も知っています。いい施設なのに伝え方が下手で埋もれていくのはもったいない、と感じ続けています。
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当メディアを運営する私達は、介護専門のホームページ制作サービス「かいごのヒカリ」を運営しています。



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