介護タクシーを1台・1人で開業したいのに、「運行管理者」という聞き慣れない資格が必要だと言われて、開業を迷っていませんか。
結論から言うと、5両未満の営業所では、運行管理者の選任義務そのものが生じません。1台からの開業であれば、この基準に当てはまります。
ただし、選任義務がないことと、何もしなくていいことは別の話です。点呼や記録などの義務は、運行管理者の有無にかかわらず、事業者本人に残ります。
ぺんすけ「運行管理者」という言葉だけで身構えてしまう方も多いのですが、台数の基準を知れば、自分が当てはまるかはすぐに判断できます。
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介護タクシーに運行管理者が必要になる台数
運行管理者とは、事業用自動車の運行の安全を確保するために、営業所ごとに選任が義務づけられる法定の担当者です。点呼や乗務員の指導など、運転に関わる安全管理を担います。
ただし、この選任義務は、すべての介護タクシー事業者に一律に課されるわけではありません。


車が4台までなら置かなくてよい
一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業を指す区分です)では、事業用自動車が5両以上の営業所にだけ、運行管理者の選任義務が生じます。
裏を返せば、4台以下の営業所では、資格者証を持つ運行管理者を選任する義務そのものがありません。
介護タクシー(福祉輸送事業限定許可)も、事業の区分としては一般乗用旅客自動車運送事業に含まれるため、同じ基準がそのまま適用されます。
福祉輸送事業限定許可は1両からの開業が認められており、車両1両で申請する場合は、運行管理者・整備管理者とも有資格者を選任する計画自体が審査で求められません。



1台・1人で開業する場合は、この基準にそのまま当てはまります。ここで一旦、肩の荷が下りるはずです。
台数は営業所ごとに数える
5両という基準は、会社全体の車両合計数ではなく、営業所(使用の本拠)ごとに数えます。複数の営業所を展開していても、1つの営業所に配置する車両が4台以下であれば、その営業所では選任義務が生じません。
将来的に営業所を増やす予定がある場合は、営業所単位で台数を管理する視点を持っておくと安心です。
自宅を営業所にして開業する方法は、介護タクシーは自宅で開業できる?必要資格についても解説で詳しく解説しています。
運行管理者がいなくても事業者がやること
「5両未満だから関係ない」と思っている方ほど、要注意です。選任義務が生じないことと、運行管理そのものが不要になることは、まったく別の話です。
点呼・業務記録・乗務員等台帳・指導監督は、いずれも運行管理者の選任義務とは独立して、事業者本人に課される義務です。
乗る前後の点呼と記録は自分で行う
旅客自動車運送事業者は、運転者に乗務前と乗務後の点呼を行い、酒気帯びの有無を確認したうえで指示を与えなければなりません。営業所にはアルコール検知器を備え、常に使える状態にしておく必要があります。
点呼の記録は1年間保存します。
運転者が乗務した記録(氏名・区間・走行距離など)も同様です。事業用自動車ごとに整理して1年間保存する義務があります。これらの主語は旅客自動車運送事業者であり、運行管理者を選任しているかどうかとは関係ありません。
1台で開業したばかりのオーナードライバーが、「運行管理者がいないから点呼の記録も不要」と思い込み、アルコール検知器を用意しないまま営業を始めてしまうケースがあります。しかし点呼と記録の義務は、選任義務の有無にかかわらず事業者本人に課されるため、1台開業でも欠かせません。



点呼の記録もアルコール検知器も、選任義務とは別に必要になります。ここを見落とすと、後から慌てて対応することになりがちです。
運転する人の名簿と指導も必要
運転者ごとに、氏名・生年月日・住所・運転免許の情報・事故歴・健康状態などを記載した乗務員等台帳を作成し、営業所に備え置く義務もあります。
あわせて、運行する路線や営業区域の状態について運転者へ適切な指導監督を行い、記録を3年間保存します。
65歳以上の運転者には特別な指導がいる
指導監督の対象者のうち、死傷事故を起こした運転者・新たに雇い入れた運転者・乗務経験のない運転者に加え、65歳以上の運転者には、特別な指導と適性診断を受けさせる義務があります。
開業する本人が65歳以上の場合、自分自身がこの対象になる点は見落としやすいポイントです。1人で開業する場合でも、対象から外れるわけではありません。



開業する本人の年齢が対象になるという点は、法令の条文を読んだだけでは気づきにくいところです。
介護タクシーの運行管理者と整備管理者の違い
運行管理者と整備管理者は、選任が必要になる車両数の基準がどちらも5両のため、同じ制度だと誤解されがちです。
しかし、根拠となる法律・資格要件の中身・届出先は、それぞれ別のものです。



「基準が5両で同じだから、中身も同じだろう」と考えるのは自然な発想です。ここは混同しないようにしましょう。
運行管理者は運転を、整備管理者は車を見る
運行管理者は運転者の安全管理を担う担当者で、道路運送法にもとづいて選任されます。一方、整備管理者は車両の点検・整備・車庫管理を担う担当者で、道路運送車両法にもとづいて選任されます。
見ている対象が「人」か「車」かという違いです。
両者の違いを整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 運行管理者 | 整備管理者 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 道路運送法 | 道路運送車両法 |
| 資格要件 | 5年実務+5回講習、または1年実務(基礎講習で代替可)+試験合格 | 2年実務+研修修了、または整備士技能検定合格 |
| 届出先 | 運輸監理部長または運輸支局長 | 地方運輸局長 |
運行管理者の届出だけを済ませて、整備管理者の選任を後回しにしてしまうと、車両整備の体制が整わないまま営業を始めることになります。両方を並行して準備しておくと安心です。
資格の取り方と届け先も違う
整備管理者になるには、対象車種の点検・整備に関し2年以上の実務経験を積んで地方運輸局長が行う研修を修了するか、自動車整備士技能検定(1〜3級のいずれか)に合格する必要があります。
運行管理者の要件とは中身が異なります。
選任したときの届出先も別です。運行管理者は選任した日(届出の事由が生じた日)から15日以内に運輸監理部長または運輸支局長へ、整備管理者は選任した日から15日以内に地方運輸局長へ、それぞれ届け出ます。



どちらも「5両」という数字だけを覚えていると足りません。中身と届け先まで押さえておきましょう。
運行管理者の資格の取り方
5両以上の営業所を持つ場合や、将来の事業拡大に備えて資格を取っておきたい場合、運行管理者資格者証を得る方法があります。
ここでは、開業前の個人事業主でも進めやすい順に、2つのルートを紹介します。
経験がなくても講習と試験で取れる
実務経験がなくても進められるルートです。運行管理者試験は、試験日前日までに1年以上の運行管理実務経験が必要ですが、この経験は運行管理者等基礎講習の修了で代えることができます。
基礎講習の受講料は8,900円(税込)で、16時間・3日間の日程です。受験手数料は6,000円とシステム利用料660円です。
試験時間は90分、出題は30問です。合格には総得点60%(18問)以上に加えて、分野(1)〜(4)で各1問以上、分野(5)で2問以上の正解が必要です。
日程は地域によって異なるため、運行管理者試験センターの公式サイトで最新の情報を確認してください。
実務経験がない状態で開業を目指す場合、まず基礎講習(16時間・3日間)を受けてから、運行管理者試験(90分・30問)に臨む流れになります。試験に合格すれば、資格者証の交付を受けられます。
5年の経験があれば試験なしで取れる
一般乗用旅客自動車運送事業の運行管理に関して5年以上の実務経験があり、その間に国が認定する講習を5回以上受講したことがある場合、試験を受けずに資格者証を得られるルートです。
乗合旅客の運送に関する経験は対象に含まれません。
このルートは、すでに運行管理の実務経験がある人向けです。これから介護タクシーを開業する人にとっては、基礎講習から試験に進むルートのほうが現実的です。



実務経験がある人には5年ルートも選択肢になりますが、これから開業する方には、基礎講習から試験に進むルートのほうが現実的です。
2つのルートを費用の目安まで整理すると、次のとおりです。
| ルート | 必要な経験・講習 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 基礎講習→試験 | 実務経験なしでも可(基礎講習で代替) | 合計15,560円(受講料8,900円+受験手数料6,000円+システム利用料660円) |
| 実務経験ルート | 5年以上の実務経験+講習5回以上 | 講習費用のみ(試験・受験料なし) |
資格取得や開業準備にかかる費用は、介護タクシー事業者が使える補助金・助成金4選で紹介している制度を活用できる場合があります。
介護タクシーで運行管理者を置かないときの罰則
選任義務があるにもかかわらず運行管理者を置かない場合、刑事罰と行政処分の両方が科される可能性があります。重さの異なる2つの処分体系があります。



「義務があるのは知っていたけれど、ここまで重い処分になるとは思っていなかった」と感じる方は少なくないはずです。


100万円以下の罰金になることがある
運行管理者の選任義務に違反すると、道路運送法にもとづき100万円以下の罰金が科されます。拘禁刑の規定はありません。
法人の代表者などが違反行為をした場合は、行為者本人が罰せられるほか、法人にも同額の罰金刑が科されます。
1人もいなければ30日間、事業を止められる
運行管理者が1人も選任されていない状態は、累積点数によらず、営業所単位で30日間の事業停止処分の対象になります。整備管理者が1人もいない場合も、同じく30日間の事業停止です。
運行管理者を選任する義務があるのに、費用や手間を理由に選任を後回しにしてしまうと、営業所単位で30日間の事業停止という重い処分につながります。
売上が発生しない30日間も、車両の維持費や生活費の負担だけが続きます。
人数が足りないと処分が積み重なる
すでに選任している運行管理者の人数が、必要な人数より1人でも不足している場合は、「全く不在」とは扱いが異なります。初違反で20日車、再違反で40日車という、累積点数制の処分になります。
日車は、止められる車の台数に日数をかけて数える単位です。1台だけで営業している場合は、日車の数がそのまま車を使えない日数になると考えるとわかりやすいでしょう。
選任・解任の届出を忘れた場合は初違反で警告、再違反で10日車です。虚偽の届出をした場合は初違反で40日車、再違反で80日車と、さらに重くなります。



「あと1人足りないだけ」と軽く考えず、早めに補充しておくことをおすすめします。
介護タクシー運行管理者に関するよくある質問
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運行管理者・整備管理者の要否が整理できたら、次はそれを事業者情報としてどう見せるかです。
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まとめ|4台までなら運行管理者は不要
介護タクシーを1台・1人で開業する場合、事業用自動車が5両未満の営業所であれば、資格者証を持つ運行管理者を選任する義務そのものはありません。
しかし、点呼・業務記録・乗務員等台帳・指導監督といった日常の義務は、運行管理者の有無にかかわらず事業者本人に残ります。
整備管理者とは、閾値の5両は同じでも、根拠法・資格要件・届出先が異なります。混同せずに、それぞれ別の制度として押さえておきましょう。
選任義務があるのに運行管理者を置かないと、100万円以下の罰金や、30日間の事業停止といった重い処分につながります。
開業までの全体の流れは、介護タクシー開業の流れを9STEPで解説でも紹介しています。小規模事業者にとって、予算も時間も限られる中で何を優先すべきかを見極めることが、開業を軌道に乗せる近道です。
参考文献
法令(e-Gov法令検索)
- 道路運送法(第23条の2・第98条・第99条)
- 旅客自動車運送事業運輸規則(第24条・第25条・第37条・第38条・第47条の9・第48条の5・第68条)
- 道路運送車両法(第52条)
- 道路運送車両法施行規則(第31条の4)
国土交通省の通達・基準
試験・講習









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