訪問介護の管理者の要件とは|資格・兼務について解説!

訪問介護の管理者になるには、特定の資格が必要だと思っていませんか。法律が求めているのは資格ではなく配置です。 無資格でも、法的な要件さえ満たせば管理者に就任できます。

この記事では資格・配置・兼務の要件を一次情報(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生省令第37号))をもとに整理します。

管理者を目指す介護職員の方も、事業所の開業を考えている経営者の方も、両方の疑問に答えられるよう構成しました。

ぜひ参考にしてみてください。

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目次

訪問介護の管理者の要件は資格より配置

訪問介護事業所の管理者に求められる要件は、資格ではなく「どう配置するか」です。

法律に「○○の資格を持つ者を置く」という記述はなく、満たすべきは3点の配置ルールだけです。

訪問介護管理者の配置要件3点:資格不問(法的根拠なし)・常勤専従1名(第6条)・従業者業務の一元管理(第28条)

それぞれ具体的に説明します。

特定の資格がなくても管理者になれる

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(厚生省令第37号)には管理者に求める資格の規定がありません。介護福祉士、初任者研修修了者、無資格者のいずれでも、法的に管理者になることができます

ですが、個人的には有資格者を置くことをおすすめしています。理由は下記のとおりです。

例えば、訪問介護事業所で5年働いたホームヘルパーが、無資格のまま管理者に昇進するケースがあります。 法的には何ら問題がありませんが、実務では採用候補者の目には初任者研修修了者のほうが信頼できる人材に見えることもあります。 法的要件と市場慣行は別物という典型例です。

ぺんすけ

介護士からすると、管理者も現場上がりの方が安心することが多いです!

常勤で専らその職務に就く人を1名置く

同基準の第6条は、「専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならない」と定めています。ここで重要なのは「常勤」と「専ら」の2つです。

常勤条件:週5日・所定労働時間を満たす常勤雇用であり、管理者の職務を主たる業務として担うことが求められます。最小配置数は常勤1名です。常勤換算2.5名以上のホームヘルパーを配置する事業所でも、管理者の常勤配置は必須です。

出典:e-Gov 指定居宅サービス等基準

事業所の従業者と業務を一元的に管理する

第28条は管理者の責務として、「当該指定訪問介護事業所の従業者及び業務の管理を、一元的に行わなければならない」と規定しています。

令和6年改定(介護保険最新情報 Vol.1225・2024年3月15日)では、「利用者本位のサービス提供」「事業所で生じた事象の適時把握」「従業者・業務の一元的管理と指揮命令」が明確化されました。

ぺんすけ

つまり、管理者は対応を現場で見つけたとき、即座に判断して改善指示を出せる立場ということです。

管理者は事業所の司令塔として、現場を俯瞰しながら適時の意思決定を下す立場です。

出典:e-Gov 指定居宅サービス等基準 第28条

訪問介護の管理者とサービス提供責任者の役割分担

訪問介護事業所で混同されやすい職種が、管理者サービス提供責任者です。

一般にはサ責と呼ばれることが多いですが、役割と責任範囲が異なり、両者の配置設計を誤ると運営上のトラブルにつながります。 具体的に何が違うのかを、法的根拠と実務の観点から整理します。

管理者は事業所全体の統括を担う

管理者とサービス提供責任者(サ責)の役割比較表:主な役割・法的根拠・資格要件・常勤義務・兼務の違い

管理者の職務は、事業所の運営全体を一元的に管理することです。スタッフの採用・配置・育成、法令対応、行政との連絡調整、経営方針の決定など、事業所という組織を動かすことが主軸です。

法律上は「第28条の責務を果たせる者」が求められており、現場サービスの直接提供は必須ではありません

例えば、常勤管理者1名が毎日9時に事務所に来て、スタッフのシフト調整や利用者へのクレーム対応、行政報告を行いながら、午後は時間があれば利用者宅の訪問に同行するという体制が典型的です。 管理者の主業務は事務所での管理業務にあり、実際の訪問は補助的です。

管理者とサービス提供責任者の比較は以下のとおりです。

項目管理者サービス提供責任者(サ責)
主な役割事業所全体の統括・一元管理訪問介護計画の作成・提供責任
法的根拠厚生省令第37号 第6条・第28条厚生省令第37号 第5条
資格要件不問実務者研修修了者等(法定)
常勤義務あり(常勤専従が原則)あり(常勤換算数で計算)
兼務条件付きで可管理者との兼務が可能

サービス提供責任者は訪問計画の責任を負う

サービス提供責任者は、利用者ごとの訪問介護計画の作成、ホームヘルパーへの業務指示、利用者・家族への説明と同意確認を担います。

サービス提供責任者には法定の資格要件があり、実務者研修修了者・介護福祉士・旧ヘルパー1級修了者などが対象です。

管理者とは異なり、資格が必須の職種です。

ぺんすけ

重要なのは誰が訪問計画を作るかという点です。法律はサービス提供責任者が責任を持つと明確に定めています。

管理者がこれを兼ねる場合は、サービス提供責任者の資格を別途取得する必要があります。また管理者とサービス提供責任者は管理業務に支障がない場合は兼務できます。

小規模事業所ではサービス提供責任者が管理者を兼ねるケースが多く見られます。

令和6年改定で変わった管理者の兼務範囲

令和6年(2024年)3月の改定で、訪問介護管理者の兼務に関するルールが変わりました。

経営者にとって最も実務に影響するポイントです。

出典:介護保険最新情報 Vol.1225(2024年3月15日)

同一敷地内の制限がなくなった

令和6年改定による管理者兼務範囲の変化:改定前(同一敷地内に限定・物理的距離基準)→改定後(敷地外・他事業所に拡大・運営上支障なし基準)

改定前は「同一敷地内」での他職務・他事業所との兼務が前提とされていました。物理的な場所が判断基準だったため、敷地外の事業所との兼務は実質的に困難でした。

令和6年改定でこの「同一敷地内」という制限が削除されました。

兼務の可否を判断する基準が、物理的距離から「運営上支障がないかどうか」へと変わっています

改定前後の比較は次のとおりです。

観点改定前改定後(令和6年〜)
兼務の範囲同一敷地内の職務が前提敷地外・他事業所にも拡大
判断基準物理的な同一敷地内運営上支障がないかどうか
根拠厚生省令第37号 旧第6条介護保険最新情報 Vol.1225

たとえば、隣接市に既存の訪問介護事業所を持つ事業者が新事業所を開設する場合、改定前は別事業所の管理者との兼務が認めにくい状況でした。 改定後は「運営上支障がない」と判断されれば、兼務の検討余地が生まれています。 ただし指定権者(都道府県・市区町村)の個別判断が入るため、開業前に管轄の指定権者に必ず確認してください。

運営に支障がなければ他の職務に就ける

改定後の基準では、「当該事業所の管理業務に支障がない場合は、当該事業所の他の職務、または他の事業所・施設等の職務に従事できる」とされています。

この支障がないの判断は抽象的です。

緊急時に利用者対応の現場へ速やかに駆け付けられる体制があるか、管理業務の質が維持できるかなど、実態をもとに指定権者が個別に判断します。

ぺんすけ

ここが実務の落とし穴です。支障がないを厚労省は基準で示しておらず、各都道府県・市区町村の指定権者が個別に判断するので、同じ兼務でも自治体によってOKとNGが分かれることがあります。

テレワークの可否や複数事業所の具体的な兼務パターンについては、厚労省基準だけでは断定できません。事業展開予定地の都道府県・指定権者に、事前に確認することを強くおすすめします。

出典:介護保険最新情報 Vol.1225

開業時に管理者を確保する三つの選択肢

開業時の管理者確保3つの選択肢:①内部昇進(定着しやすい)②経営者が管理者を兼務(小規模開業向き)③外部採用(即戦力確保)

訪問介護事業所を開業するとき、多くの経営者が最初につまずくのが管理者の確保です。資格のある人でないといけないと思い込んで採用に苦労するケースもありますが、法的には資格は不問です。

問題は常勤専従の条件を満たす人材をどこから連れてくるかです。

キャリアアドバイザーとして約300名の転職支援・施設長面談を俯瞰してきた立場から、現実的な三つの選択肢を整理します。

現場ヘルパーを内部昇進で登用する

もっとも定着しやすいのは、すでに働いているホームヘルパーを管理者に昇進させる方法です。事業所の運営スタイルや利用者の状況を熟知しており、管理者就任後の適応が早いのが特徴です。

ただし現場業務から管理業務への役割転換をどう支援するかがポイントです。 管理業務の経験がない職員を突然管理者に据えると、本人の負担が大きく定着しないケースもあります。

半年から1年かけて段階的に権限を移していく方法が現実的です。

内部昇進の場合、資格の有無よりも事業所のやり方を理解しているか、利用者やスタッフから信頼されているかのほうが実態に合った判断軸です。

ぺんすけ

内部昇進で成功する管理者と失敗する管理者の分かれ目は、本人の意欲よりも「昇進に向けた準備期間があったか」で決まることが多いです。いきなり管理業務を任せると、現場の信頼を失うことになります。

訪問介護は倒産率が非常に高く、開業で失敗するケースが多いです。ぜひ「訪問介護の開業で失敗するパターン5選」も合わせて確認してみてください。

経営者自身が管理者を兼ねる

小規模での開業であれば、経営者自身が管理者を兼ねるのが現実的な選択肢の一つです。資格不問の要件はここでも活きます。介護未経験の経営者でも法的には管理者に就任できます。

ただし常勤専従の原則との整合に注意が必要です。

ぺんすけ

経営者が複数事業所や他業種を兼業している場合、管理業務に専念できているかを指定権者に問われることがあります。管理者は事業所の司令塔なので、判断が甘いと現場が動かなくなります。

開業申請の段階で自分の勤務実態が常勤専従の要件を満たすかどうかを確認してください。

例えば、福祉用具販売と訪問介護の両事業を立ち上げる経営者が、訪問介護の管理者を兼ねるケースを想定してください。 この場合、訪問介護の管理業務に支障が出ないか、緊急時に即応できる体制があるかを事前に確認しておかないと、開業申請の段階で問題になることがあります。 指定権者に「管理者の勤務体制と業務分担」を事前相談するのが安全です。

外部から経験者を採用する

外部採用は、即戦力として管理者を確保できる一方、定着に課題が出やすいのが実態です。

ぺんすけ

外部から管理者を採用する場合、定着するかどうかの最大の分岐点は給与条件だけではありません。重要なのは「事業所のやり方・文化を候補者に正直に伝えているかどうか」です。

採用できても聞いていた話と違うという理由で入職から1ヶ月から半年で離職するケースが少なくありません。採用の際は管理者候補に事業所の運営方針・スタッフ構成・利用者層を隠さず伝えることが定着率を上げる一番の近道です。

ぺんすけ

求人を出す前に、採用サイトや事業所のホームページで職場の実像を先に見せることで、入職後のギャップを減らせます。

求人媒体への掲載と並行して採用サイトや事業所のホームページでどんな職場かを先に見せる情報発信が採用の質を高めます。

管理者候補を集めるために整えること

法的な要件を理解しても、実際に管理者候補を集められなければ事業所は動きません。採用がうまくいかない施設の9割は、ホームページに働く人の顔が見えない状態です。

管理者候補の採用も、発信の土台を整えることから始まります。

採用サイトで働く環境を先に見せる

管理者候補の採用で差がつくのは、求人票の条件ではなく「この職場がどんな場所か」が伝わるかどうかです。職員の声、日常の業務風景、職場の雰囲気を具体的に見せる採用サイトがあると応募前の離脱が減ります。

キャリアアドバイザー時代、私は日常的に施設のホームページを確認してから求職者に紹介していました。ホームページがない施設はキャリアアドバイザー経由でしか情報を伝えられず、求職者は半信半疑になる経験が多かったです。また求職者は紹介された後、ほとんどの人がホームページで実態を調べにいきます。

ぺんすけ

そのため、ホームページがない施設は紹介業者の候補リストから外れる傾向が多いだけでなく、求職者にも候補から外されることが多いです。

管理者採用においても同じです。外部採用を考えるなら、まず情報発信の土台を作ることが先です。ホームページがないだけで紹介業者の候補リストから外れる施設が確実に存在します。

求人を出す前にどんな職場かが外から見えるかどうかを確認してください。

昇進後の役割と処遇を言葉にして示す

管理者候補を内部昇進で育てる場合も外部から採用する場合も、管理者になった後どうなるのかを明文化する必要があります。

給与や役職名だけでなく、どんな権限が与えられるか、どんなサポートがあるか、キャリアパスをどう描けるかを言葉にして示すことで、候補者の不安が減ります。

ぺんすけ

昇進後の姿が見えないまま候補者を探しても、応募は来ません。候補者は「その後、大事にされるのか」を見ています。

発信の質が採用の質を決めます。

まとめ

この記事で解説した内容を整理します。

確認ポイント結論
資格は必要か法的に不問。無資格でも就任可
配置基準常勤管理者1名(第6条)
常勤専従の原則管理業務を主たる業務として担う
管理者の責務従業者・業務の一元的管理(第28条)
令和6年改定同一敷地内制限の削除→運営上支障なければ兼務可
実務上の慣行初任者研修・実務者研修の修了が推奨(義務ではない)

管理者を目指す介護職員の方は資格の有無よりも常勤専従の配置要件を満たせる事業所にいるかを確認することが先決です。開業を考えている経営者の方は、内部昇進・経営者自身の兼務・外部採用という三つの選択肢を現実的に検討してください。

令和6年改定で兼務の可能性は広がりましたが、具体的な可否は指定権者の判断が入ります。

事業展開予定地の都道府県・市区町村に開業申請前に必ず確認してください。

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この記事を書いた人

レバウェル介護にて約2年間、介護業界専門のキャリアアドバイザーとして従事。これまでに300名以上の介護士の転職面談を担当。また介護施設への人材派遣を通じて採用側の課題解決にも従事。このような実務経験をもとに、介護事業者・求職者双方にとって信頼性の高いWeb制作を行っています。

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