訪問入浴介護の人員基準は、令和6年の改定で変わった。そう思っている事業者が少なくありません。 半分は正しく、半分は誤解です。
変わったのは、常勤の定義だけです。 看護職員・介護職員の必要人数や資格要件は、改定前と変わっていません。
訪問入浴介護の人員基準は、次の3点を押さえれば実務で迷いません。
まず、事業所に置くべき職員の種類と人数から確認します。
訪問入浴介護の人員基準とは(法令根拠と早見表)

訪問入浴介護の人員基準は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年3月31日厚生省令第37号。以下「指定基準」)で定められています。
事業所に配置すべき員数は、以下の早見表のとおりです。
| 職種 | 必要員数 | 資格要件 | 常勤要件 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|---|
| 看護職員 | 1名以上 | 看護師または准看護師 | 1名以上が常勤 | 第45条 |
| 介護職員 | 2名以上 | 資格要件なし | 常勤要件なし(看護職員との合計で1名以上が常勤) | 第45条 |
| 管理者 | 1名 | 資格要件なし | 常勤専従(兼務条件あり) | 第46条 |
事業所として常時配置すべき員数と、1回のサービス提供時に実際に同行する員数は、別のルールとして定められています。 この2つを混同しないことが、人員基準を正確に理解する最初のポイントです。
出典:e-Gov 指定居宅サービス等基準(平成11年厚生省令第37号)第45条・第50条
看護職員1名・介護職員2名が最低ライン
指定基準第45条第1項は「看護師又は准看護師一以上、介護職員二以上」と定めています。
看護職員1名と介護職員2名が、事業所として常時確保しなければならない最低ラインです。 ここで言う1名以上・2名以上は、事業所に在籍している人数を指します。 サービスに何人行くかは別のルールで扱われますので、この段階では在籍数として理解してください。
介護職員が2名しかおらず1名が退職した場合、残り1名では指定基準の員数を満たせません。 欠員が生じた時点で速やかに補充が必要になります。
ぺんすけ開業時の採用計画では、最低人数ぴったりで動き始めると1人の退職や病欠が即座に基準違反になります。最低でも看護職員2名・介護職員3名の体制を意識してほしいです。
常勤は全員でなく1名以上でよい
指定基準第45条第2項は「前項の従業者のうち一人以上は、常勤でなければならない」と定めています。
看護職員と介護職員を合計した従業者全体のうち、少なくとも1名が常勤であれば要件を満たします。全員を常勤にしなければならないという制約は、条文上存在しません。
ただし、非常勤しか在籍していない状態は違反になります。 常勤者が退職した場合は、ほかの職員が常勤に変更するか、常勤職員を新たに採用する必要があります。



「全員非常勤にしてコストを下げたい」という相談を受けることがあります。条文上は1名だけ常勤にすれば基準を満たしますが、その1名が辞めた瞬間に違反状態になるリスクは常に意識しておいてください。
職種別にみる訪問入浴介護の人員基準
ここからは職種ごとに、配置数・資格要件・常勤条件を整理します。
キャリアアドバイザー時代に施設長や事務長との面談を重ねる中で、介護職員の資格要件を誤解している管理者が少なくないことに気づきました。 訪問入浴介護の介護職員は、介護福祉士でないといけないんじゃないか。
そういう問いを何度か受けたことがあります。
ここで特に多い誤解が、介護職員には資格が必要というものと、管理者には介護福祉士が必要というものです。 人員基準と加算の算定要件は別物であることを意識しながら読み進めてください。 人員基準は配置の最低ラインを、加算はサービスの質に応じた上乗せを定めるもので、成り立ちが違います。
採用場面で「介護職員は介護福祉士が必須か」とよく聞かれます。人員基準上は無資格者でも配置できます。ただし加算算定には介護福祉士割合が要り、基準と加算は別物です。
看護師と准看護師は配置上同じ扱い
指定基準では、看護師と准看護師のどちらでも人員基準上の要件を満たします。
准看護師は医師または看護師の指示のもとでケアを行いますが、訪問入浴介護の人員配置という観点では看護師と同等に扱われます。
開業時や採用計画を立てる際に、准看護師では要件を満たせないと誤解することはありません。



人員基準という観点では、「看護師」と「准介護士」はどちらでも満たせます!
介護職員に資格要件は設けられていない
指定基準では、介護職員について資格要件の規定はありません。無資格者でも人員基準上は介護職員として配置できます。
ただし、算定できる加算の種類は職員の資格構成によって異なります。
サービス提供体制強化加算は介護福祉士の割合などが要件で、人員基準上の配置数とは別の話です。 人員基準クリアと加算算定を同じ議論に混ぜないように注意してください。



無資格の介護士でも人員基準を満たすことは可能ですが、加算を取得して売上を上げたい場合は、介護福祉士などの有資格者を採用することが大事になってきます!
管理者は資格不問・常勤専従が必須
指定基準は、管理者の要件を次のとおり定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 資格要件 | なし(介護福祉士・看護師等の資格は不要) |
| 勤務形態 | 常勤専従(フルタイムで管理業務に従事) |
| 兼務の可否 | 管理に支障がない場合に限り、事業所内の他職務または他の事業所の職務と兼務可 |
「管理に支障がない場合に限り」という条件は必ず確認してください。 管理業務に支障が出るほど現場に出続けることは、条文上認められていません。
管理者が看護職員や介護職員として現場に入る場合は、1回の訪問人数のルールとの関係も確認が必要です。



管理者の兼務は「支障がなければOK」という条文ですが、「支障がない」の証明が難しいんです。記録をしっかり残しておくことが、運営指導を乗り越えるいちばんの防御策になります。
1回の訪問入浴介護で必要な人員体制
事業所として常時確保すべき員数とは別に、1回のサービス提供時に必要な員数も定められています。
この2つをセットで理解することが、日常の運営管理には欠かせません。
| 条文 | 定める内容 | 員数 |
|---|---|---|
| 第45条 | 事業所の配置員数(常時) | 看護職員1名以上・介護職員2名以上 |
| 第50条 | 1回のサービス提供時 | 看護職員1名+介護職員2名(計3名) |
第45条は事業所に常時置く員数を定める
第45条が定めるのは、事業所として常時そろえておく在籍人数です。
看護職員1名以上・介護職員2名以上を、いつでも確保しておかなければなりません。 これは事業所に何人在籍しているかを見るルールで、実際の訪問に何人行くかとは切り離して考えます。
第50条は1回の訪問の同行員数を定める
指定基準第50条第6号は「一回の訪問につき、看護職員一人及び介護職員二人をもって行う」と定めています。
つまり、毎回のサービスに看護職員1名と介護職員2名の計3名が同行することが原則です。 事業所に従業者が3名以上いたとしても、1回の訪問には必ず3名を同行させる必要があります。



「在籍3名だから毎回3名で行く」という理解で正確です。3名以上いても同行は最低3名で、4名以上を常に連れて行く義務はありません。組み合わせは現場で判断できます。
ただし、看護職員が不在の場合には、代替体制として介護職員3名での訪問が認められるケースがあります。
看護職員が不在のとき訪問入浴介護はどうなるか


訪問入浴介護の事業所で実務上よく起きるのが、看護職員の急病や突発的な欠勤です。
当日の朝に看護師から連絡が来た、サービスをキャンセルするしかないか。この状況に困った管理者は少なくありません。



キャリアアドバイザーとして施設長と話す中で感じたのは、人員に余裕がある事業所ほど突発事態に落ち着いて対応できるということです。ギリギリの運営だと欠員1人が当日のサービス全体に波及します。
しかし、指定基準にはただし書きがあります。 一定の条件を満たせば、看護職員に代えて介護職員3名で訪問できます。 キャンセルだけが選択肢ではありません。
介護職員3名での訪問は5%減算で対応できる
指定基準第50条ただし書きは次のように定めています。
利用者の身体の状況が安定していること等から、当該訪問入浴介護の提供に支障を生ずるおそれがないと認められる場合においては、主治の医師の意見を確認した上で、看護職員に代えて介護職員を充てることができる
この代替体制で提供した場合、介護報酬は所定単位数の100分の95(5%減算)が適用されます。
5%の減算を受けてでもサービスを継続するか、利用者の状態等を考慮してキャンセルにするかは、状況に応じた判断が必要です。 法令上は、介護職員3名体制で継続するという選択肢もあります。知っているかどうかで対応の幅が変わります。
主治医の意見確認が代替体制の前提になる
介護職員3名での代替体制を取るためには、2つの前提条件があります。
1つ目は、利用者の身体の状況が安定していること等から支障を生ずるおそれがないと認められるという要件です。 看護師が医学的に問題ないと判断できる状態でなければ、代替体制は適用できません。
2つ目は主治の医師の意見を確認することです。 利用者の主治医に対し、当日の体制変更について意見を確認します。 毎回必ず対面で確認する必要はありませんが、主治医が状態の安定を判断していることを確かめる手続きが求められます。
看護職員が急病のたびキャンセルすると利用者の信頼を損ないます。主治医との連携フローを整え代替体制を素早く確認できれば当日キャンセルを避けられます。このただし書きを知るかで対応の幅が変わります。
利用者への説明と記録の残し方が重要になる
代替体制でサービスを提供する際には、利用者および家族への事前説明が必要です。
説明内容として最低限含めるべき事項は以下のとおりです。
| 説明事項 | 内容 |
|---|---|
| 体制変更の理由 | 看護職員が不在であること |
| 代替体制の内容 | 介護職員3名での対応になること |
| 主治医への確認 | 医師の意見を確認済みであること |
| 報酬への影響 | 当該回は5%減算となること |
記録については、サービス提供記録に代替体制での提供・主治医の意見確認日時・利用者への説明日時と同意の有無を明記します。 運営指導で最も確認されやすい書類の1つです。 記録が不十分な場合は、指摘を受けたり報酬返還を求められたりするリスクがあります。



「記録さえあれば大丈夫」とは言えませんが、記録がなければ言い訳もできません。代替体制を使った日は、その日のうちに記録を完成させる習慣をつけるのが安全です。
介護予防訪問入浴介護との人員基準の違い
訪問入浴介護の指定事業者が、介護予防訪問入浴介護の指定も受けるケースがあります。 この2つは対象者が異なります。
訪問入浴介護は要介護者、介護予防版は要支援者が対象で、人員基準にも違いがあります。
| 比較項目 | 訪問入浴介護(指定版) | 介護予防訪問入浴介護 |
|---|---|---|
| 対象者 | 要介護1〜5 | 要支援1〜2 |
| 看護職員 | 1名以上 | 1名以上(同じ) |
| 介護職員 | 2名以上 | 1名以上(1名少ない) |
| 常勤要件 | 従業者のうち1名以上 | 従業者のうち1名以上(同じ) |
出典:指定介護予防サービス等基準(平18厚労令35号)第47条
介護職員の必要人数が1名に緩和される
介護予防訪問入浴介護の対象者は要支援者です。
要支援者は要介護者と比べて身体状況が比較的安定しており、介護負荷が異なるため、介護職員の必要数が1名以上に緩和されています。
ただし、介護予防版の指定だけを持って要支援者に介護職員1名で対応する場合は、あくまで介護予防版の基準として事業を組み立てることになります。
両方指定なら指定版の基準だけ満たせばよい
訪問入浴介護と介護予防訪問入浴介護の両方の指定を受けている事業所は、指定版の人員基準を満たしていれば、介護予防版も同時に満たしていると扱われます。
2つの指定分の人員を別々に用意しなければならないと誤解されることがありますが、そうではありません。 指定版の基準が満たされていれば、介護予防版の利用者にも同じ人員体制でサービス提供できます。
したがって、両方の指定を取ることで必要な職員数が増えるわけではありません。



介護予防の指定も取っておくと、要支援者の受け入れができてサービス範囲が広がります。人員を別に用意する必要はありませんから、積極的に両方の指定を取ることをお勧めします。
令和6年改定で変わった訪問入浴介護の人員基準
令和6年度(2024年度)の介護報酬改定では、訪問入浴介護の人員基準について変わった部分と変わっていない部分があります。
「改定で配置数が変わった」という情報が出回ることがありますが、実際に変わったのは常勤の扱いだけです。
配置員数と資格要件は改定前と変わっていない
令和6年4月以降も、訪問入浴介護の員数要件は従来どおりです。
| 項目 | 員数・要件 | 改定の影響 |
|---|---|---|
| 看護職員 | 1名以上 | 変更なし |
| 介護職員 | 2名以上 | 変更なし |
| 常勤者 | 従業者のうち1名以上 | 変更なし |
| 管理者 | 常勤専従1名 | 変更なし |
| 1回のサービス | 看護職員1名+介護職員2名 | 変更なし |
介護職員の資格要件も改定前と同じで、人員基準上は資格不問のままです。 「令和6年改定で人員が増えた」「資格要件が厳しくなった」という情報は誤りです。
「令和6年改定で介護職員を3名から4名に増やすと聞いた」という相談があります。しかし介護職員は2名以上で変更ありません。迷ったら指定基準の条文を直接確認するのが確実です。
週30時間以上勤務で常勤扱いが認められた
令和6年4月施行の改定で唯一変わったのは、常勤の扱いに関するルールです。
育児・介護休業法等に基づく短時間勤務制度を利用している職員について、週30時間以上の勤務であれば常勤として扱えるようになりました。
簡単に言うと、育児中や介護中でフルタイム勤務が難しい職員であっても、週30時間以上働いていれば常勤1名以上の要件を満たせるようになりました。 フルタイム勤務者しか常勤としてカウントできなかった従来の運用からの緩和です。
育児中の看護師が週32時間で復職すれば、令和6年4月から常勤にカウントできます。以前は別途フルタイム職員が必要でしたが、特例で短時間勤務者を常勤に算入できます。育児中の人材を活かしやすい改定です。
人員基準の配置員数・資格要件・1回のサービス人数は改定前から変わっていません。 変わったのは、常勤と認める勤務時間の定義のみです。この点を混同しないようにしてください。



この特例は採用の幅を広げる意味でも使えます。育児中のナースに声をかけやすくなりましたし、週30時間でも常勤要件を満たせると伝えると、応募してくれる方が増えた事業所もあるようです。
詳細な適用条件については、都道府県の介護保険担当窓口または事業者団体にご確認ください。
出典:令和6年度介護報酬改定(両立支援配慮の常勤扱い特例)厚生労働省
まとめ
訪問入浴介護の人員基準を、実務のポイントとともに整理しました。
| 確認ポイント | 内容 |
|---|---|
| 事業所の配置員数(第45条) | 看護職員1名以上・介護職員2名以上・従業者のうち1名以上は常勤 |
| 管理者要件(第46条) | 常勤専従・資格不問・管理に支障がない場合に限り兼務可 |
| 1回のサービス(第50条) | 看護職員1名+介護職員2名の計3名が原則 |
| 看護職員不在時 | 主治医の意見確認後、介護職員3名で対応可(5%減算) |
| 令和6年改定の変更点 | 配置員数・資格要件は変更なし。常勤扱いの範囲が拡大 |
したがって、現在の体制を見直す際は配置員数・1回の同行人数・常勤者の有無の3点を軸に確認するのが確実です。
人員基準の条文は読み慣れない人には難しく見えますが、ポイントは事業所の配置数と1回の同行数を分けて理解することに尽きます。 この2つを混同したまま運営している事業所が、思ったより多いというのが実感です。



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