介護の人手不足は嘘なの?なぜ不採用になるのかを解説!

「人手不足と言うわりに賃金は上がらない。応募しても採ってくれない」。そう感じている現場の方は少なくありません。

正直に言います。介護の人手不足は、嘘の側面と本当の側面が同居しています。

キャリアアドバイザー時代に介護施設のホームページを毎日見ていた立場から、嘘と言われる理由と実態データを並べ、自施設の打ち手まで整理します。

ぺんすけ

実際、介護の現場は人手不足ではありますが、誰でも採用するという訳ではありません。人員がまったく足りていない施設でも、「未経験は採用しない」という声をよく聞いてきました。

そういった実体験も含めて、解説していけたらと思います。

目次

「介護の人手不足は嘘」と言われる4つの理由

知恵袋・SNS・現場の声で介護の人手不足は嘘だと語られる背景には、いくつかの構造的な不信があります。

言われている内容実態とのズレ
採用ハードルが高いだけ即戦力志向で未経験を弾く施設は実在する
条件の悪い施設だけが不足賃金水準・労務環境の差で偏りはある
処遇改善加算が現場に届かない加算分配の不透明感は職員の不信を生む
経営者だけが利益を抜いている介護報酬改定で訪問介護は基本報酬引き下げ

採用ハードルが高いだけという可能性

即戦力しか採らないから人が足りないだけ、という見方があります。

この見方には一理あります。

キャリアアドバイザー時代、約300名の介護職の転職支援をしてきた中で、「未経験は教える人がいないから今は無理」と紹介を断られた施設は珍しくありませんでした。

施設側の本音は、人手が足りないからこそ教育に回す余力がないという逆説です。

私はキャリアアドバイザー時代、未経験の30代男性を人手不足と公言する特養に紹介しました。 施設長の答えは「来月から夜勤に入れる経験者じゃないと、今は教える人がいない」でした。 求人広告では未経験歓迎と書きながら、現場の本音は真逆だったのです。

介護労働実態調査(介護労働安定センターが毎年実施する全国規模の調査)でも傾向は明らかです。令和6年度の採用率は14.4%にとどまり、3年ぶりに低下しています。

出典:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」

採用したいが採れない、採れても育てる余力がないという二重苦が、外からは採用基準を上げているだけと映ります。

ぺんすけ

採用基準を上げているわけではなく、教える側がパンクしている。私が現場で何度も聞いた話です。

ただし、これは人手不足が嘘なのではなく、人手不足が深刻だからこそ起きている現象です。

条件の悪い施設だけが不足という見方

条件のいい施設には応募が集まる、不足なのは条件の悪い施設だけだという見方も根強いです。この見方も部分的には正しいです。

メディア運営者

僕がレバウェル介護で法人営業をしていたときも、人員充足している施設と常に人員が足りていない施設で二極化していました。採用条件が悪かったり、人間関係が悪かったり、アクセスが悪かったりすると長期就業には繋がりません。

介護関係職種の有効求人倍率は地域・職種で大きく偏ります。

区分倍率
東京都(最高水準)7.65倍
埼玉県4.62倍
千葉県4.13倍
全国平均3.97倍
岩手県(最少)2.14倍

出典:厚生労働省 社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会 第1回資料(2025年5月9日公開)

都市部と地方、施設種別、賃金水準で募集の集まり方は確かに異なります。しかし全国平均が3.97倍であること自体、全産業の有効求人倍率1.11倍と比べて極端に高い数値です。

条件のいい施設だけは大丈夫と言える状況ではありません。

処遇改善加算が現場に届いていない実態

処遇改善加算(介護職員の賃金改善を目的に介護報酬に上乗せされる加算制度)は出ているのに、なぜ給与に反映されないのかという不信感は現場で根強くあります。

キャリアアドバイザー時代、面談した職員から「加算は出ているはずなのに手取りが増えていない」と漏らされた経験は一度や二度ではありません。

ぺんすけ

「加算が職員まで届いていない気がする」という不信は現場で本当に多く聞きました。

ただし、データを見ると現場の賃金は実際に上昇傾向にあります。

介護職員の基本給等は令和6年9月から令和7年7月にかけて上昇傾向にあります。平均給与額(基本給+手当+一時金)でも、わずかながら同期間でもプラスに転じています。

出典:厚労省委託 三菱総合研究所「令和7年度 介護職員等の職場環境や処遇に関する実態調査」

加算が現場に届く構造は改善の途上ですが、全く届いていないという見方は事実とずれます。なお、処遇改善加算は年度改定で内容が変わるため、最新は厚生労働省の公式発表で確認してください。

経営者だけが利益を抜いているという疑い

経営者が儲けを抜いているから職員の給料が上がらない、という見方もあります。

しかし、経営実態のデータはこの見方を支持しません。

2024年度の介護事業者倒産は179件で過去最多を更新しました(前年度比36.6%増)。倒産の主因は売上不振で133件(27.8%増)を占め、資本金規模の小さい事業者が大半(87.7%)を占めます。

出典:東京商工リサーチ 2025年4月16日発表「2024年度『介護事業者』倒産」

2024年度の介護報酬改定で訪問介護の基本報酬は引き下げになり、現場の経営余力はむしろ細っています。

私はキャリアアドバイザー時代、ある訪問介護事業所の管理者と何度か面談しました。 彼は「職員給与を上げたいが、報酬単価が下がる中で人件費を増やせば事業所が潰れる」とこぼしていました。

経営者だけが儲けているという単純な構図では、現実を説明できません。

ぺんすけ

訪問介護の倒産が前年比21.1%増。周辺でも事業所閉鎖の話は珍しくなくなりました。

介護の人手不足が嘘ではないことを表すデータ3選

訪問介護の有効求人倍率14.14倍・介護事業者倒産179件・全産業との月額賃金差8.2万円を並べた3指標カード

理由を並べたうえで、マクロデータを照合します。

結論を先に言うと、介護業界の人手不足はデータ上の事実です。

業界全体の指標を三つだけ抜き出して並べます。

指標数値何を意味するのか
訪問介護の有効求人倍率14.14倍1人の訪問介護員を、14社以上の企業が取り合っている状態。介護職員が足りていない。
介護事業者倒産件数179件人手不足が原因で、新規受け入れができなく売上が上がらなくて倒産。
介護と全産業の月額賃金差8.2万円賃金が低いため、介護職員になりたがる人が少ない。

訪問介護の有効求人倍率14.14倍

訪問介護員の有効求人倍率は14.14倍(令和5年度)に達しています。

ぺんすけ

簡単にいうと、1人の訪問介護員を、14社以上の企業が取り合っている状態です!圧倒的に労働力が足りていない状態です!

出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会発表(2024年9月12日/介護ニュースJoint転載)

全職業の有効求人倍率は1.11倍前後ですから、訪問介護との差は10倍以上です。求人を出しても応募がほとんど集まらない、極端な不足状態を示します。

訪問介護員の不足感は事業所自己評価でも83.4%に達し、全職種で最も深刻と報告されています(出典:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」)。

ぺんすけ

訪問介護の現場は、人がいないから新規依頼を断る事業所が本当に増えています。

データを見るかぎり、訪問介護の人手不足を嘘と呼べる余地はほぼありません。

施設の有効求人倍率も3倍以上あるため、全業界と比べても高い水準にあります。そのため、介護業界全体で人手不足が起きているといえる状況です。

2024年度の倒産179件で過去最多

介護事業者の倒産は2024年度に179件で過去最多を更新しました。

出典:東京商工リサーチ 2025年4月16日発表
ぺんすけ

前年度比36.6%増の数字であり、倒産が増えています!

業種別で最も多かったのは訪問介護で86件、前年比21.1%増、構成比48.0%です。また有料老人ホームの倒産も17件と前年比で大きく増加しています。

倒産の主因は売上不振で133件、人手不足を背景に新規受け入れができない事業所が経営難に陥っている構図です。

例えば、利用希望者から10件の依頼が来ても、ヘルパーが足りず5件しか受けられない。売上は半減なのに、家賃・人件費などの固定費は変わらない。断り続けるうちに経営が立ち行かなくなる。

これが典型的な、介護業界の倒産の構図です。

人手不足が経営の存続そのものを脅かしている事実は、データで裏付けられています。

介護と全産業の月額賃金差8.2万円

介護職員の月額賃金(賞与込み)は31.4万円、全産業平均は39.6万円で、差は8.2万円です。前年比では0.1万円縮小(8.3万円→8.2万円)と若干の改善が見られます。

出典:介護ニュースJoint報道

賃金格差が人手不足の構造的な原因の一つであることは、データを見ても否定できません。

ただし、令和8年6月の介護報酬臨時改定で処遇改善が予定されており、賃金水準の底上げは進行中です。

ぺんすけ

賃金差は縮まり始めていますが、月額8.2万円の差は採用現場でいまも重く響いています。

人手不足を根本的に解決していくには、全産業との賃金をなくすことが最優先になると思われます。

介護士が人手不足でも不採用になるケース3選

介護業界全体は人手不足ですが、不採用になるケースも少なくありません。

ぺんすけ

人数が足りていないのであれば「猫の手も借りたい」という状態ではと思われるかもしれませんが、それは違います!

理由は大きく3つあります。

理由背景
即戦力以外を採れない経営事情教育余力の枯渇
無資格者の育成負担OJT担当者の不在・OJTが整っていない
施設情報の不足応募前離脱・応募後の不安

それぞれ具体的に説明します。

即戦力しか採用できない経営事情というケース

人手不足でも不採用になる1つ目の理由は、即戦力以外を採れない経営事情です。

未経験歓迎と謳いながらも、実際は即戦力しか採れないケースがあります。理由は単純で、現場の人手が足りなさ過ぎて、新人に教える時間がないからです。

実際に「教える人がいないので今は経験者だけにせざるを得ない」と判断する施設は、私が見てきた中でも相当な数にのぼります。またデイサービスや特養では介護のスキルが全く異なり、どの施設形態で働いてきた経験があるのかも重要です。「デイで働いた経験は特養ではあまり発揮できない」と言われて断られた経験も多々あります。

求人票では未経験歓迎と打ち出しても、現場のシフトを守るためにはやむを得ない選別が起きます。人手不足が深刻だからこそ、教育投資ができず、結果として未経験者を採れなくなる逆説です。

採用率14.4%という低い数値の背景にも、こうした事情が影響しています。

出典:介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」

ぺんすけ

採用率14.4%という水準は、現場の深刻さを示す目安として覚えておいてください。

育成負担の大きい無資格を断っているケース

人手不足でも不採用になる2つ目の理由は、無資格者の育成負担が大きすぎることです。

無資格・未経験OKと書いた求人でも、書類選考で見送らざるを得ない事例は珍しくありません。施設としては育てる人を確保できず、結果的に介護職員初任者研修以上の方を優先したくなるのが本音です。

ぺんすけ

特養など介護度の高い施設では、資格よりも経験を重視する施設が多かったことも事実です!資格も大事ですが、同様に経験が重視されることも多いです。

OJT(職場内訓練)担当者を一人立てるには、現場のシフトを組み直す必要があります。

しかし、ぎりぎりの人員配置で回している施設にその余力はありません。

ぺんすけ

「未経験歓迎」と書きながら資格者を優先せざるを得ない。これは嘘ではなく、現場の悲鳴です。

結果として、求人票では未経験歓迎をうたいながら、書類選考の段階で資格保有者を優先せざるを得ない運用になります。

施設情報の不足で応募が続かないケース

情報発信が薄い施設と整った施設で応募の入り口がどう変わるかを示すフロー対比図

ここが最も重要な理由です。簡単に言うと、応募者は給与表だけでは判断しません。

働く人の顔・施設の雰囲気・1日の流れ・職員インタビュー・代表者の理念といった情報が見えない施設は、応募の入り口で外されます。

正直に言います。私はキャリアアドバイザー時代に紹介候補のリストを作る際、ホームページがない施設は最初から候補から外していました。求職者にキャリアアドバイザーから言葉で説明しても「実際はどうなんですか」と半信半疑になり、最終的に紹介が成立しないからです。

応募者は求人サイトで施設名を見たあと、必ず施設名で検索します。そこで施設のホームページが出てこない・出てきても採用情報が薄いと、応募はそこで止まります。

キャリアアドバイザー時代、求職者に「ここの施設は求人があります」とお伝えした時に、「ホームページがないから判断する基準がない」となって却下された経験が何度かあります。

採用面での人手不足を悪化させている最大の要因の一つは、応募が来る前の情報発信が足りないことにあります。

介護の人手不足に関するよくある質問

介護の人手不足はいつまで続くのか

厚生労働省の第9期介護保険事業計画に基づく推計を参照します。

2026年度に約25万人、2040年度に約57万人の介護職員が不足する見込みです。
当面は人手不足が続く前提で、自施設の採用力強化を進める必要があります。

訪問介護の人手不足が特に深刻なのはなぜか

訪問介護員の有効求人倍率は14.14倍(令和5年度/厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会発表)で、全職種でも最も極端な不足状態です。

理由は、およそ以下の3つが考えられます。

  • 初任者研修以上の資格取得が必要である
  • 拘束時間に対して給与が低い
  • ホームへルパーが高齢化している

また訪問介護では派遣が法律で禁止されているため、人材確保の手段が限られていることが原因の一つとも考えられます。

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この記事を書いた人

レバウェル介護にて約2年間、介護業界専門のキャリアアドバイザーとして従事。これまでに300名以上の介護士の転職面談を担当。また介護施設への人材派遣を通じて採用側の課題解決にも従事。このような実務経験をもとに、介護事業者・求職者双方にとって信頼性の高いWeb制作を行っています。

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