デイサービスの経営課題は「営業をどうするか」ではなく「ケアマネジャーが信頼する施設になるか」です。
2024年、デイサービスを含む通所サービスの倒産は56件に上り、倒産理由の72.6%が売上不振でした(出典:東京商工リサーチ:2024年介護事業者倒産)。

営業活動をしているのに紹介が増えない施設と、営業しなくても紹介が来る施設。その差は営業スキルではなく、事業運営そのものにあります。
この記事では、ケアマネ営業の本質と正しい営業設計を解説します。
ケアマネ営業しているのに紹介が増えない理由
営業を続けているのに紹介が増えない。この状況には、「営業の仕方」ではなく「営業の前提認識」に問題がある場合がほとんどです。
デイサービスの特徴は、利用者の通所継続や変更判断にケアマネジャー(介護支援専門員)が直接関わることです。毎月のモニタリング訪問で利用者の状況を把握し、ケアプラン作成時に「どのデイを選ぶか」を判断するのはケアマネジャーです。
ケアマネジャーとの信頼関係が、そのまま紹介数に直結するのがデイサービス営業の最大の特徴です。
それにもかかわらず紹介が増えない施設には、共通する3つの原因があります。
それぞれ具体的に説明します。
ケアマネの時間を奪う営業になっている
ケアマネジャー1人あたりの平均担当件数は約40件前後(出典:厚生労働省「ケアマネジメントに係る現状・課題」(2024年4月))で、報酬算定基準上の担当上限は44件です。
月1回以上の訪問義務があり、月末月初は給付管理業務が集中する最も多忙な時期です。
この業務量を知らずに「営業のためだけの訪問」を繰り返すと、ケアマネジャーにとって「また来た」という印象になります。
時間を取られる営業は、業務負担を増やす行為として認識されるため、結果として紹介先の候補からも外れていきます。
一人ケアマネの孤立を理解していない
居宅介護支援事業所の中には、ケアマネジャーが1人しかいない事業所が全体の30%超を占めます(出典:厚生労働省「居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の業務等の実態調査」)。
このような一人ケアマネ事業所では、利用者の対応について相談できる同僚がいません。
キャリアアドバイザー時代、私はケアマネジャー向けの求人紹介を担当したことがあります。一人ケアマネとして働いている人の多くが「何かあっても職場で相談できない」という孤立感を話してくれました。
メディア運営者日々の判断を1人で背負っている状況では、定期的に役立つ情報を届けてくれる施設の担当者が、そのまま「信頼できる相談先」になります。 この背景を理解せず一律の営業をかけている施設は、本来なら相談相手として選ばれるチャンスを逃しています。
紹介をもらう発想から抜け出せていない
従来型の営業は「紹介をもらいに行く」という発想です。
しかしケアマネジャーの立場から見ると、業務の役に立つ情報や連絡を届けてくれる施設の方が信頼できます。「紹介をもらう」発想のまま訪問を続けても、ケアマネジャーの業務負担を増やすだけで紹介にはつながりません。
営業の目的を「紹介をもらう」から「ケアマネジャーの仕事を楽にする相談相手になる」に転換することが、紹介増加への近道です。
ケアマネが「紹介したくなる施設」の条件5選


「信頼される施設」になるとはどういうことか。ケアマネジャーが実際に判断の基準にしている要素を整理すると、以下の5つに集約されます。「うちの施設はいくつ当てはまるか」という視点で確認してください。
| 条件 | ケアマネの視点 | 施設の対策 |
|---|---|---|
| 定期報告の充実 | 利用者の変化を知らせてくれるか | 月1回の簡潔なレポートを送る |
| 事業所の特徴が明確 | 何が得意な施設かが分かるか | 加算取得・対象利用者層を明示する |
| ニーズへの柔軟な対応 | 利用者に合わせてくれるか | 相談への返答スピードを上げる |
| 相談できる関係性 | 困ったとき頼れるか | 日常的な情報提供と提案を続ける |
| 見学・勉強会の質 | 空気感を確かめられるか | 見学しやすい導線と環境を整える |
①:月1回の報告を継続する
ケアマネジャーが最も重視するのは「定期報告の質」です。
利用者の体調変化・生活状況・デイでの様子を細かく伝えてくれる施設は、「利用者のことをしっかり見てくれている」という信頼に直結します。
逆に、何か大きな変化があったときだけ連絡してくる施設は、「普段は何をしているか分からない」という不安を与えます。月1回の簡潔なレポートを継続するだけで、信頼の積み上げは着実に進みます。
②:事業所の特徴を明示する
「うちはどんな施設か」が曖昧なデイサービスは、ケアマネジャーの選択肢に入りません。
取得している加算の種類(リハビリ・認知症対応・入浴等)、対象とする利用者層(要介護度・認知症の有無)、1日の活動内容を明示することが基本です。
加算情報はケアプラン作成時の判断材料の1つですが、実際の紹介の決め手は「空き状況」「送迎範囲」「利用者との相性」「スタッフの対応」など複合的な要素です。
加算を取得している=必ず紹介される、ではなく、他の施設との総合比較のなかで選ばれるという認識を持つことが大切です。
③:相談への返答スピードを上げる
「この利用者の場合はどう対応できますか?」というケアマネジャーの相談に素早く・丁寧に答えられる施設は信頼度が高いです。
「一度見学してからでないと…」と曖昧にするのではなく、電話口で概要を答えたうえで見学を提案する姿勢が重要です。
対応スピードも信頼の指標です。折り返しに2〜3日かかる施設より、当日中に返答できる施設の方がケアマネジャーの信頼を得やすくなります。
④:ケアマネの相談相手になる
特に一人ケアマネ事業所には「相談できる関係」が大きな価値を持ちます。
「この状態の方にはどう対応できますか?」という問い合わせに、素早く・丁寧に答えられる施設担当者は信頼されます。重要なのは、個別ケースの守秘義務に配慮しながら、一般論としての対応ノウハウやサービス連携の相談に乗ることです。
営業に来た人ではなく「サービス連携の相談ができる施設の人」という認識を持ってもらえれば、自然と紹介は増えていきます。
⑤:見学時の「自然な施設の姿」を届ける
実際に施設を見てもらうことは、言葉だけでは伝わらない空気感を届ける最短の手段です。
キャリアアドバイザー時代、私は求職者の施設見学に100回以上も同行しました。見学中のスタッフの動き・利用者への声かけ・施設の清潔感。これらすべてが「ここで働きたいかどうか」の判断材料になっていました。
ケアマネジャーが施設を訪れるときも、同じことが起きています。



コロナ禍で、感染対策を理由に見学を一切受け入れない施設と、工夫しながら見学を続ける施設を比較すると、その後の紹介つながり方に明確な差が出ていました。 見学前にホームページやブログで施設の日常を確認できる状態を整えておくと、見学の精度が上がります。 ホームページで見た雰囲気が実際と同じだという安心感が、信頼への第一歩になるんです。
ケアマネへの営業方法4選


営業の手段は大きく4つあります。それぞれに効果・負荷・頻度目安が異なり、向いている施設の状況も違います。「どれから始めるか」を判断するための比較表から確認してください。
| 手段 | 効果 | 負荷 | 頻度目安 | 向いている施設の状況 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問営業 | 中〜高 | 中 | 月1回 | 全施設・基本手段 |
| 内覧会・見学会 | 高 | 高 | 半年〜年1回 | 新規開業・リニューアル時 |
| 電話・FAX | 低 | 低 | 随時(補助) | 訪問と訪問の間をつなぐ |
| 勉強会 | 高 | 高 | 3〜6ヶ月に1回 | 専門性で差別化したい施設 |
4手段を同時にやろうとするのは現実的ではありません。
自施設のリソースと状況に応じて1〜2つに絞り、継続できる形を作ることが先決です。
訪問営業で関係性の基礎を作る
居宅介護支援事業所・地域包括支援センターへの定期訪問が、営業活動の基本です。月1回を目安に、アポイントメントを取ったうえで15分程度を上限に滞在するのが鉄則です。
持参する情報は「前回の訪問から施設で起きた変化」を1つ準備することを習慣にしてください。「先月から新しいリハビリプログラムを開始しました」「認知症対応の加算を取得しました」といった具体的なニュースが、訪問の目的と会話のきっかけを同時に作ります。
何も持たずに「よろしくお願いします」だけで来る施設と、毎回新しい情報を持ってくる施設では、ケアマネジャーの受け取り方が根本的に違います。
内覧会・見学会で空気感を伝える
新規開業時は、平日1週間程度の集中開催が効果的です。開業後も「常時見学受入可」という姿勢を示すことで、ケアマネジャーが利用者を連れて来やすい雰囲気を作れます。
見学時に重要なのは「スタッフが普通に働いている姿を見せること」です。キャリアアドバイザー時代に多くの施設を見てきた中で、見学時に現場スタッフが求職者に一切声をかけない施設が体感で3〜4割ありました。施設長の案内は丁寧でも、廊下ですれ違うスタッフが目を逸らす施設では、見学後に「なんとなく雰囲気が…」という言葉が出ていました。



特別に整えた見学用の演出より、日常の自然な姿の方がケアマネジャーにも信頼されます。見学後のフォローとして「ご来場ありがとうございました。気になる点があればいつでもご相談ください」という一言を入れるだけで、関係性のきっかけになるんです。
電話・FAXは補助チャネルに限定する
電話・FAX営業は単体では効果が薄いです。活用するなら「訪問と訪問の間をつなぐ情報共有」「イベント開催のお知らせ」「加算取得の報告」といった目的を絞って使うのが原則です。
不特定多数への一斉FAX送信は迷惑行為になりやすく、逆効果になる場合があります。対象のケアマネジャーを絞って個別送信するか、既に関係がある事業所への情報提供として使うのが適切です。電話も同様で、用件を簡潔にまとめてから掛けることが最低限のマナーです。
勉強会で専門性を発信する
勉強会は、効果が高い一方で準備の負荷も大きい手段です。成功の分かれ目は「ケアマネジャーが実務に役立つと感じる内容かどうか」にあります。制度解説は包括支援センターや協議会が既に行っているため、デイサービスが開く勉強会では自施設だからこそ話せる認知症ケア事例・現場の工夫・利用者変化の実例など、一次情報共有型の内容に絞ることが効果的です。
頻度は3〜6ヶ月に1回が現実的な目安です。「またあの施設が勉強会を開くらしい」という認知が定着すると、施設の名前と専門性が地域のケアマネジャーに自然と広がります。
ケアマネ営業の3パターン


4つの営業手段のうち「どれを選ぶか」は、相手の居宅介護支援事業所の規模によって変わります。
一人ケアマネ事業所・複数ケアマネ事業所・情報発信型の3つのパターン別に、営業設計の考え方を整理します。
一人ケアマネ事業所には相談相手として関わる
一人ケアマネ事業所に対しては、「営業」という発想より「相談相手」を目指すアプローチが効果的です。
相談相手のいない環境で業務をこなしているケアマネジャーにとって、定期的に役立つ情報を届けてくれる施設は、単純に「助かる存在」になります。
具体的な施策は次の3つが基本です。
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 月1回の定期レポート送付 | 利用者の様子・施設のニュースを簡潔にまとめる |
| 提案型の問いかけ | 「こういうケースではいかがでしょうか」と課題への選択肢を示す |
| 15分以内の情報交換訪問 | 時間を奪わず、相手の判断を尊重する姿勢で短時間に絞る |
ケアマネジャーの判断を尊重する姿勢を常に見せることが、信頼関係構築の要です。
複数ケアマネ事業所は口コミを広げる
複数のケアマネジャーが在籍する事業所では、事業所内の評判・口コミが紹介を左右します。1人のケアマネジャーに信頼されると、「あの施設のデイはいいよ」という言葉が事業所内に広がる波及効果が生まれます。
そのため、事業所内で相談役的な立場にあるベテランのケアマネジャーとの関係構築を優先することが戦略的です。見学会・勉強会を開いて複数人と顔と顔の関係を作ること、事業所のカンファレンスや会議の場を活用した情報提供も効果的です。
一度信頼を得たケアマネジャーが他のスタッフへの推薦者になることで、営業効率は飛躍的に上がります。
ホームページとブログで事前に知ってもらう
「営業に行かなくても紹介が来る施設」になるための第3のアプローチが、ホームページ・ブログを活用した情報発信です。デジタルを活用するケアマネジャーは、訪問を受ける前に施設のホームページやブログで事前リサーチをしています。
キャリアアドバイザー時代、私は求職者に施設を紹介する際、必ずホームページを確認していました
その経験から言うと、特にデイサービスは「1日の流れ」が載っているかどうかで、求職者の熱量が明らかに変わりました。「9時〜10時:送迎、10時〜12時:リハビリ体操と創作活動」のように具体的なタイムスケジュールが書いてある施設は、面談の段階ですでに「ここ気になっています」という状態になっていることが多かったです。
ケアマネジャーも同じ目線でホームページを見ています。
ケアマネジャーが特にチェックしている情報は、下記の4つです。
- 加算の取得状況
- 1日の流れと活動内容
- スタッフの様子
- 利用者の状態像
ホームページにこれらを明示しているだけで、「候補として見てもらえる施設」と「そもそも候補に入らない施設」に分かれます。ブログでは利用者の日常の変化・イベントの様子・ケアの工夫を月2〜4回程度のペースで発信することが目安です。
対面営業の前に「あの施設のブログ、いつも読んでいます」という状態を作れれば、訪問時の信頼スタートラインが全く異なります。
ケアマネ営業を効率化する情報発信チェックリスト
情報発信型営業の土台は「ホームページの整備」から始まります。
以下のチェックリストで、自施設のホームページが「ケアマネジャーの判断に使えるレベル」かどうかを確認してください。
ホームページの基本情報チェック
ケアマネジャーが初見のホームページで確認したい情報は次の6つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| サービス内容と対象利用者層 | 何を提供していて、どんな状態の方を受け入れているか |
| 取得加算の一覧 | リハビリ加算・認知症専門ケア加算・入浴介助加算など |
| 1日の流れ | 具体的な時間割と活動内容 |
| スタッフ構成 | 職種・人数・資格の概要 |
| 空き状況・見学の申込方法 | すぐに連絡できる窓口 |
| 施設の雰囲気が分かる写真 | スタッフ・利用者の自然な様子 |
この6点が揃っているだけで「情報がある施設」として初期評価が変わります。
逆に1つでも欠けていると、ケアマネジャーは問い合わせ前に候補から外すことがあります。
ブログの継続発信チェック
ホームページの静的な情報を補完するのが、ブログの定期発信です。次の4点を確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 更新頻度 | 月2回以上が目安。最終更新が半年以上前のブログは逆効果 |
| 利用者の日常描写 | 「楽しそうでした」ではなく「〇〇さんが久しぶりに外出し、笑顔が増えました」の粒度 |
| イベント・季節活動 | 施設の活動の幅が伝わる内容 |
| ケアの工夫・取り組み | 専門性と誠実さを示す内容 |
ブログは「営業資料」ではなく「施設の日常を伝える窓口」として機能します。「いい施設そうだ」という第一印象を作る場所として積み上げてください。
デイサービスのケアマネ営業に関するよくある質問
まとめ
この記事で解説した内容を整理します。
- 紹介が増えない本当の理由は、営業スキルではなく「ケアマネジャーに信頼される事業運営」の設計にある
- ケアマネジャーが信頼する施設の条件は「定期報告の質」「事業所の特徴の明確さ」「ニーズへの柔軟な対応」「相談できる関係性」「見学・勉強会の質」の5つ
- 営業手段は(訪問営業・内覧会・見学会・電話・FAX・勉強会)から、効果・負荷・頻度に応じて1〜2つに絞って継続することが重要
- 営業設計は事業所の規模で変える:一人ケアマネには相談相手型、複数ケアマネには口コミの波及設計が効果的
- 情報発信型営業(ホームページ・ブログ)は、対面営業の前提条件を整える。ケアマネジャーが「知っている施設」になるための最も継続しやすい手段
いい施設なのに伝え方が下手で埋もれていくのは、本当にもったいないと思っています。キャリアアドバイザーとして約300名の介護職者の転職支援をしながら、良いケアをしているのに情報がなく「判断できない施設」として候補から外れていく場面を何度も見てきました。ケアマネジャーとの信頼関係構築と、正しい情報発信の設計は、同じ根を持つ課題です。
デイサービスのケアマネ営業は「訪問営業のやり方」ではなく「信頼される施設の設計」がすべてです。ホームページとブログをどう整備するか、営業設計をどう改善するかについて、お気軽にご相談ください。
Teraceは介護施設特化のホームページ制作・運用サポートを通じて、ケアマネジャーに選ばれ続ける施設の情報発信をサポートしています。








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