令和8年6月、訪問介護の処遇改善加算の加算率がまた変わります。
加算が全介護サービスの中で最も高い28.7%に引き上げられ、新区分も新設されます。 どの区分を取得できるのか、利用者の負担がどう変わるのかで悩む事業所は多いはずです。
訪問介護は全介護サービスで最も高い加算率が設定されています。本記事では、令和8年6月改定に対応した区分別加算率・算定要件・計算方法・利用者負担・分配ルール・申請手順を1本にまとめました。
訪問介護には処遇改善加算のほかにも、さまざまな加算があります。気になる方は、「【2026年版】訪問介護の加算一覧|要件なども詳しく解説!」をご覧ください。
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訪問介護の処遇改善加算とは
処遇改善加算は、介護職員の賃上げ原資として介護報酬に上乗せされる加算制度です。
令和6年6月に3つの異なる加算が統合され、さらに令和8年6月に加算率が引き上げられ、新区分が新設されました。 介護人材の不足が深刻化している訪問介護業界では、正しく取り切れるかどうかが採用・定着を大きく左右します。
令和6年6月以前の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」という3つの加算が、「介護職員等処遇改善加算」として統合されました。 管理の手間が削減され、区分I〜IVの一本化された体系で算定・申請ができます。
さらに令和8年6月から加算率が追加で引き上げられ、新区分Iロ・IIロが新設されます。 基本の月1.0万円(3.3%)に月0.7万円(2.4%)が上乗せされます。定期昇給0.2万円を含めると最大で月1.9万円(6.3%)の水準で、令和8年6月施行・令和8年3月13日付の老発0313第6号通知で確定済みです。
訪問介護の処遇改善加算率と全サービス比較

訪問介護の加算率は全介護サービスで最も高く設定されています。
令和8年6月以降、区分Iでは訪問介護が27.0%〜28.7%であるのに対し、訪問入浴は12.2%〜13.3%にとどまります。訪問介護の1人あたり売上と人件費の関係を考えると、加算率が数%変わるだけで人件費原資に大きな差が生まれます。
正確に把握することが経営判断の土台です。
訪問介護は他サービスの2倍近い加算率
| サービス種別 | 加算Iイ | 加算Iロ |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 27.0% | 28.7% |
| 夜間対応型・定期巡回 | 26.7% | 27.8% |
| 訪問入浴介護 | 12.2% | 13.3% |
訪問介護はこの加算率の高さから、同じ月間規模の事業所でも他サービスより大きな賃上げ原資を確保できる構造になっています。
ぺんすけこの加算率の差は単なる数字ではなく、採用競争力の差に直結します。訪問介護は加算を取り切ることで、他サービスの事業所にはできない水準の賃上げが可能になり、それが人材確保のアドバンテージになるわけです。
同じ月間規模の事業所でも、訪問介護の加算率は訪問入浴の2倍以上あり、賃上げ原資を厚く積める構造です。 この加算率の差がそのまま採用競争力の差になるため、加算を最大区分で取り切ることは採用戦略の最優先事項になります。
新区分Iロは28.7%に引き上げ
| 区分 | 加算率 | 内容 |
|---|---|---|
| Iイ | 27.0% | 基本区分 |
| Iロ(新設) | 28.7% | 生産性向上・協働化に取り組む事業者向け |
| IIイ | 24.9% | 基本区分 |
| IIロ(新設) | 26.6% | 生産性向上・協働化に取り組む事業者向け |
| III | 20.7% | − |
| IV | 17.0% | − |
インターネット検索でよく目にする「28.7%」は、令和8年6月以降の訪問介護における最高の加算Iロです。「ロ」は新設された上乗せ区分で、生産性向上や従事者間の協働化に取り組む事業所が取得できます。



新区分のイとロが分かりづらいという相談を受けることもあります。
簡単に言うと、イが基本区分で、ロが生産性向上に取り組む施設向けの上乗せ区分です。ロを取得するには基本のキャリアパス要件に加えて、業務効率化やスタッフ協働の取り組みが必要になります。
4〜5月は経過措置、6月に切り替わる
令和8年4月・5月は経過措置期間で、令和6年6月から適用されてきた加算率が続きます。
| 区分 | 加算率 |
|---|---|
| I | 24.5% |
| II | 22.4% |
| III | 18.2% |
| IV | 14.5% |
6月に切り替わる点に注意が必要です。上位区分をまだ取り切れていない事業所は、令和8年6月を機に訪問介護の初回加算の算定条件など他の加算も含めて要件を確認することをお勧めします。
訪問介護の処遇改善加算の算定要件
処遇改善加算を算定するには、3つの要件をすべて満たす必要があります。
上位区分ほど充足すべき要件が増えるため、現状どの区分を取れるかを把握することが出発点になります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ①月額賃金改善要件 | 加算を受け取った分を職員の月額賃金の引き上げに充てる |
| ②キャリアパス要件 | 任用・賃金体系の明確化、研修の実施、昇給の仕組みなどを整備する(I〜Vの段階あり) |
| ③職場環境等要件 | 賃金以外の労働環境改善(休暇・柔軟な勤務・ICT活用など)に取り組む |
3つの要件を全て満たした上で、どのキャリアパス要件段階まで充足できるかによって算定できる区分(I〜IV)が決まります。
キャリアパス要件の5段階(段階が高いほど上位区分の算定条件)
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| I | 任用・資格等に応じた賃金体系を書面で整備し、職員に周知 |
| II | 資質向上のための研修の機会確保または費用負担 |
| III | 昇給の仕組みを整備(経験・技能・評価に応じた昇給) |
| IV | 改善後の年額賃金440万円以上の職員を1名以上配置 |
| V | 介護福祉士(国家資格)等を一定割合以上配置 |



キャリアアドバイザー時代に多くの小規模訪問介護事業所の経営者と話しました。キャリアパス要件IVの「年額賃金440万円以上の職員を1名以上」という基準は、ヘルパー中心のスタッフ構成では達成が難しく、施設長が実際に多く悩んでいました。現実的なのは、まず加算IVの要件を満たすところから始めて、段階的に上位区分へ移行するロードマップです。
キャリアパス要件に関しては、カイポケ訪問介護の「訪問介護の介護職員等処遇改善加算とは?」の記事が参考になります。
職場環境等要件は、入職・採用支援・仕事と生活の両立支援・研修の実施・人員体制の充実・ICT活用などが対象になります。
上位区分ほど取り組む内容が増え、小規模事業所では充足がボトルネックになりやすいです。 ただし、この取組の内容自体が「働きやすい職場」「育成体制が整っている」という職場の魅力につながるため、整えた職場環境を採用サイトやホームページで発信することで、加算と採用が連動する仕組みが生まれます。
訪問介護の処遇改善加算の計算と利用者負担


処遇改善加算の額は、事業所の月間介護報酬の規模に比例し、総単位数に加算率を掛けることで算出されます。
計算式の仕組みを正確に理解した上で、利用者への説明・同意取得の準備が欠かせません。 新たに加算を取得する場合だけでなく、令和8年6月の改定で加算率が上がるときにも同意書の更新が実務上必要になるためです。
「単位数×加算率」で加算額が決まる
処遇改善加算の算定単位数は、以下の計算式で求めます。
加算単位数 = 1か月あたりの総単位数 × サービス類型別加算率
月あたりの総単位数は、前年度1月~12月の介護報酬総単位数を12で割った月平均値です。加算単位数に地域の単価(1単位 = 10~11.4円)を掛けることで、加算の金額が算出されます。
仮試算の例です(地域区分・単価により変動する仮の計算で、確定額ではありません)。 月間総単位数50,000単位(1単位10円換算で介護報酬およそ月50万円規模)の事業所が加算Iイ(27.0%)を算定すると、加算単位数は50,000×27.0%=13,500単位になります。 単価10円なら加算額は13,500単位×10円=135,000円(月)で、実際の金額は総単位数・地域区分・単価により異なります。



利用者対応で「加算が上がると自己負担も上がるのか」という質問を受けることがあります。重要なのは、利用者負担は増えますが、ケアプランの利用枠(支給限度基準額)には影響しないということです!
この違いを丁寧に説明できるかどうかで、利用者との信頼関係が大きく変わります。
加算が増えると利用者の支払う金額も増える
処遇改善加算は利用者の1〜3割自己負担の対象になるため、加算率が上がれば利用者が支払う金額も原則として増えます。
ただし、処遇改善加算は区分支給限度基準額の算定対象から除外されています。加算が増えても、ケアプランの利用枠を圧迫することはありません。
利用者負担の増え方の例です(実際の負担額は地域・単価・自己負担割合によって異なります)。 処遇改善加算が月10,000円増えた場合、自己負担1割の利用者なら月1,000円、2割なら月2,000円、3割なら月3,000円の増加になります。 区分支給限度基準額からは除外されるため、この増加分がサービス利用を制限することにはなりません。
加算を新たに取得したとき、または加算率が変わったときは、重要事項説明書・同意書の更新と、利用者への説明・同意取得が実務上必要になります。
説明のポイントは、自己負担が増える理由は介護職員の賃金改善のためであることと、区分支給限度基準額には影響しないことの2点を丁寧に伝えることです。
処遇改善加算の分配ルールと職種間配分
処遇改善加算で得た賃上げ原資をどう職員に配分するかは、事業所の裁量が認められています。
介護職員(ホームヘルパー)だけでなく、事務員・管理者・サービス提供責任者(サ責)といった職種が事業所を支えています。 加算の原資を介護職員だけに限らず、事業所全体の職員の賃金改善に活用できます。
介護職員以外にも柔軟に配分できる
加算の職種間配分は、事業所内で柔軟に行うことができます。
たとえば事務員が介護支援に関連する業務を担っている場合、その貢献に対して加算原資から賃金改善を行うことが可能です。 小規模事業所にとって、この職種間配分の柔軟性は実務的に重要です。
介護サービスが介護職員だけで成り立っているわけではないからです。たとえば事務員が、利用者からの電話対応や訪問スケジュールの調整、ヘルパーとの連絡といった、介護支援に関連する業務を担っている場合があります。
こうした業務は現場のケアを陰で支える大切な役割であり、その貢献に対して加算の原資から賃金改善を行うことが可能です。介護職員を直接支える働きをしている職員も、配分の対象に含められるということです。
著しく偏った配分は認められない
ただし、勤務実態に見合わない著しく偏った配分は不可とされています。
著しく偏った配分の具体的な基準は指定権者(都道府県・指定都市)の判断によりますが、 介護職員への配分が極端に少なく、管理者や事務員への配分が突出しているような場合は問題となる可能性があります。
分配計画を作成する際は、職種ごとの勤務実態(勤務時間・業務内容・関与度)を根拠として記録しておく必要があります。 配分の根拠を書面で残しておくことで、実地指導での説明に対応でき、信頼性も高まります。



小規模な訪問介護事業所では「事務員が少ないからヘルパーだけに全額配分したい」という相談を受けます。その気持ちもわかりますが、曖昧な配分は実地指導で指摘されるリスクがあります。
配分に根拠を持たせることで、事業所の信頼性も上がることを覚えておきましょう。
訪問介護の処遇改善加算の申請と計画書の出し方
処遇改善加算を算定するには、事前に計画書を提出し、年度末に実績報告を行う一連の手続きが必要です。
計画書には算定区分やキャリアパス要件の内容、賃金改善の配分計画などを記載します。 令和8年度は特例措置があり、通常より柔軟な対応が認められています。上位区分への切り替えを検討している事業所にとって、この手続きの理解が実行の第一歩です。
計画書を期限までに提出する
計画書には、算定を希望する区分・キャリアパス要件の充足内容・職場環境等要件で取り組む項目・賃金改善の配分計画などを記載します。
提出期限は指定権者によって異なるため、必ず管轄の都道府県や指定都市に確認してください。



訪問介護は昔から加算の対象なので、計画書提出期限は4月15日が目安です!
実績報告を年度末に提出する
計画書に基づいて加算を算定した後、年度末までに実績報告書を提出します。
実績報告では、実際に賃金を改善した金額・職種・配分内容などを記録・報告します。 計画書との乖離が大きい場合は追加の説明を求められることがあります。



記録は毎月行っておき、1年分をまとめて実績報告書として自治体に提出することが多いです!
令和8年度は特例でまとめて申請可能
令和8年度に限り、4〜5月分と6月以降分を1回の計画書提出でまとめて対応できる特例措置が設けられています。一部の要件については令和8年度中に対応するという誓約書の提出で算定を認める緩和措置もあります。
令和8年6月の改定から上位区分への切り替えを検討している事業所は、この特例を活用することで申請の手間を減らせます。
令和8年度の申請フローの一例です(提出期限や様式は指定権者によって異なるため、管轄自治体に確認してください)。 年度当初に計画書を提出し、4〜5月は従来の加算率、6月から新しい加算率で算定を開始、その後は月ごとに実績を記録して翌年度に前年度分の実績報告書を提出する、という一年間の流れです。 なお助成金の併用については年度・地域によって条件が変わるため、最寄りの自治体に確認してください。



令和8年度の特例を知らずに、従来の申請手続きのままやろうとしている事業所も見かけます。この特例があるおかげで、4月の改定対応と6月の再改定への対応を同時に計画書でまとめられるようになりました。管轄自治体に事前確認して、スケジュール感を掴むことが重要です。
出典:厚労省「令和8年度介護報酬改定(処遇改善加算の拡充)」
まとめ
訪問介護の処遇改善加算は、令和8年6月から加算率が引き上げられ、新区分Iロ(28.7%)・IIロが新設されました。
全介護サービスの中で最も高い加算率が設定されており、正しく取り切ることが賃上げ原資を確保する最短ルートです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年6月〜の最高加算率 | 訪問介護 加算Iロ 28.7%(新区分) |
| 令和8年4〜5月(経過措置) | 従来どおり 加算I 24.5%〜加算IV 14.5% |
| 算定要件 | 月額賃金改善要件・キャリアパス要件I〜V・職場環境等要件の3本柱 |
| 利用者負担 | 原則として増える(ただし区分支給限度基準額からは除外) |
| 分配ルール | 事業所内で柔軟な職種間配分が可。著しく偏った配分は不可 |
| 令和8年度の特例 | 4〜5月・6月以降分を1回の計画書提出でまとめて対応可 |
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