訪問介護の営業でつまずく原因は、訪問の回数ではありません。
顔を出す回数を増やしても紹介が動かないとき、足りていないのはケアマネジャーが手元で使える情報です。渡す紙の中身を入れ替えるだけで、依頼の入り方は変わります。
ここではケアマネジャー(介護支援専門員)が依頼先を絞り込む場面を起点に、明日の訪問から変えられる7つの手をまとめます。
なお、営業チラシそのものの作り方と記載項目は訪問介護の営業チラシを作るコツ|必須項目について解説で解説しています。この記事では、チラシを持って誰にどう渡すかという営業の組み立て方を扱います。

訪問介護の営業が欠かせなくなった背景
訪問介護の営業は、かつて開業時の挨拶回りで足りる仕事でした。現在は事業所数の増加と基本報酬の引き下げが同時に進み、紹介件数がそのまま経営を左右する構造に変わっています。
ここでは営業に時間を割く価値がどこから生まれているのかを、厚生労働省の統計と告示で確認します。
全国の訪問介護事業所は37,264事業所です(令和6年10月1日時点)。前年から359事業所、1.0%増えました(出典:厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」)。
令和2年からの5年間では、35,075事業所から37,264事業所へと2,189か所増えています。
介護保険制度では、利用者が事業所を選ぶ契約の形が取られています。どれだけ質の高いケアをしていても、対応できる範囲が相手の記憶に残っていなければ候補には並びません。
ぺんすけ3万7千という数字は、全国の中学校の数よりも多いんです。
このなかから思い出してもらう、と考えると営業の位置づけが変わってきます。
そこへ令和6年度の介護報酬改定が重なりました。身体介護も生活援助も、どの時間区分でも単位数が下がっています。
| 区分 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 身体介護 20分未満 | 167単位 | 163単位 |
| 身体介護 20分以上30分未満 | 250単位 | 244単位 |
| 身体介護 30分以上1時間未満 | 396単位 | 387単位 |
| 生活援助 20分以上45分未満 | 183単位 | 179単位 |
| 生活援助 45分以上 | 225単位 | 220単位 |
| 通院等のための乗車・降車の介助 | 99単位 | 97単位 |
(出典:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定 新旧対照表 別紙1-1」・令和6年4月施行)
1回あたりの下げ幅は数単位です。しかし訪問は回数を重ねるサービスなので、月単位では無視できない差になります。
利用者30人が週2回の身体介護(30分以上1時間未満)を利用している事業所で考えます。
月の訪問はおよそ240回です。
1回あたり9単位の減が240回分で2,160単位となり、1単位10円で計算すると月21,600円、年間では約26万円の差になります。
1単位の金額は地域区分で変わるので、上の数字はあくまで目安として見てください。
同じ売上を保つには、訪問の件数を増やすしかありません。報酬改定は、営業を後回しにできる事業所を減らしたといえます。
改定が収支のどこに効くか、採算ラインをいくらに置くかは訪問介護の一人当たりの売上相場はいくら?採算ラインも解説で扱っています。この記事では、件数を積むための営業に話を絞ります。


訪問介護の営業先3選と回る優先順位
営業先は3つに絞れます。
ただし3つを同じ頻度で回ると、時間だけが減って紹介は増えません。紹介が生まれる密度が高い順に、回る間隔を変えます。下の表の順番で回ると、限られた訪問の時間を紹介につながりやすい相手に寄せられます。
| 営業先 | 訪問の間隔 | 持って行くもの |
|---|---|---|
| 居宅介護支援事業所 | 月1回 | 空き枠表・受け入れ実績シート |
| 地域包括支援センター | 3か月に1回 | パンフレット・対応エリア地図 |
| 病院の医療相談員 | 半年に1回 | 医療的ケアの対応一覧 |





ケアマネから一番紹介が生まれる構造であるため、なるべくケアマネに営業をかけるのがおすすめ!
居宅介護支援事業所
利用者の生活課題を把握し、必要なサービスを組み合わせて計画に落とすのがケアマネジャーの役割です。
訪問介護がその計画に載って、ようやくサービスは利用者のもとへ届きます。つまりケアマネジャーが選ばなければ、紹介は生まれません。
担当する利用者の計画づくりと各所への調整で、一日の大半が埋まっています。ケアマネジャーが訪問介護事業所の情報を自分から集めて回る時間は、多くの場合ありません。
だからこそ、こちらから届け続ける必要があります。自事業所から車で15分程度の範囲をリスト化し、担当者の名前を覚えるところから始めてください。



人材紹介の仕事をしていた頃、依頼先が決まる瞬間に何度か立ち会いました。探して選んでいるように見えて、実際は頭に浮かんだ数件から絞っているだけなんです。
地域包括支援センター
高齢者やその家族が最初に相談を持ち込む先が、地域包括支援センターです。
要支援1・2の方の計画づくりを引き受けるほか、介護保険の枠に入る前の相談も広く抱えています。ここから直接依頼が来る頻度は高くありませんが、地域で名前が通っているかどうかはここで決まります。
相談を受けた職員が事業所名を挙げられるかどうかで、間接的な紹介の量が変わります。月1回ほど密に回る必要はないため、3か月に1回の顔つなぎを続けてください。



居宅介護支援事業所と比べると、紹介はグンと少なくなります!優先順位を下げるのがおすすめです。
病院の医療相談員
病院には医療相談員(MSW)が在籍し、入院患者の退院後の生活設計を支援しています。
退院してすぐに在宅の支援が必要になる方は少なくありません。MSWは退院調整の場でサービス事業所の候補を挙げるため、ケアマネジャーとは別の入口になります。
ただし病院は担当者が固定されにくく、訪問の難易度は上がります。エリアに規模の大きい病院がある場合に限り、半年に1回のペースで足を運ぶ形が現実的です。



病院は最初から成果を期待しないほうがいいと思います。
退院調整の場で名前が挙がるまで、時間がかかる相手なんです。
訪問介護の営業で成果が出るコツ7選
依頼先が絞られる瞬間に効いているのは、その場で受け入れの可否が読み取れるかという一点です。
手厚く対応します、という説明はどこも同じ言い方をします。判断材料になるのは、次の3つのような具体的な条件です。
- 訪問できる曜日
- 対応できる時間帯
- 受けられるケアの種類
以下の7つは、その条件をどう渡すかという観点で整理したものです。
空き枠は曜日と時間帯で伝える
紹介が来ない理由で最も多いのは、空きがないと思われていたという行き違いです。
訪問介護の空きは、事業所という単位では発生しません。発生するのは火曜の午前、木曜の夕方といった枠の単位です。
そのため空いていますという伝え方では、担当している利用者に当てはめられません。火曜と木曜の午前に2枠、というところまで書いて初めて相手が動けます。
空き枠を伝えるときは、次の3つの粒度で書き分けてください。この3つが揃うと、ケアマネジャーは手元の利用者を当てはめられます。
- 曜日と時間帯
- その枠で受けられる身体介護か生活援助かの別
- 医療的ケアの可否
なお、空き枠表の書式とどう届けるか(送る曜日の決め方、空きがない週の扱い、送付状の書き方)は訪問介護の空き情報テンプレートにまとめています。
対応できる医療的ケアを先に出す
ケアマネジャーが最も判断に迷うのは、医療的ケアが必要な利用者の受け入れ先です。
たん吸引や経管栄養に対応できる事業所は限られます。対応できるケアを先に明示している事業所は、それだけで候補が絞られた状態で相談を受けられます。
対応の可否は口頭ではなく紙に書いて渡してください。ケアマネジャーが後から見返せる形になっていないと、記憶からこぼれます。
早朝と夜間の対応可否を明記する
訪問介護は提供時間帯の幅がそのまま強みになります。
朝6時台の起床介助や、夜間の就寝介助に対応できるかどうかは、ケアプランの組み立てを大きく左右します。対応できる場合は、何時から何時までかを数字で書いてください。
対応できない場合も、書いておく価値があります。断られる前提が分かっていれば、ケアマネジャーは別の相談を持ってきてくれます。



「できません」を先に伝えると営業にならない、と思われがちです。
実際は逆で、条件がはっきりしている事業所ほど相談の数が増えます。
折り返せない時間帯を先に伝える
サービス提供責任者は訪問に出ている時間が長く、電話に出られない時間帯があります。
これは訪問介護の構造上避けられません。問題になるのは、いつ折り返せるかが相手に分からないことです。
午前は訪問のため折り返しが13時以降になる、と先に伝えておけば、急ぎの相談は別の連絡手段に回してもらえます。
メールやFAXなど、電話以外の受け口を1つ用意しておくとさらに動きやすくなります。



連絡が取りにくい事業所、という評判は実際の対応の速さより先に広がります。出られない時間帯を隠さずに伝えるほうが、印象は良くなるんです!
断るときは代案を添える
人員の都合で受けられない依頼は必ず発生します。
このとき断り方が次の紹介を決めます。受けられませんの一言で終える事業所には、次の相談が来なくなります。
次のような代案を1つ添えてください。
- 来月なら空く見込みがある
- この曜日なら調整できる
- この時間帯であれば受けられる
条件が合わずに断る場合も、どの条件なら受けられるかを伝えれば情報として残ります。
依頼を断るときに、受けられない理由と再開できる時期を1行で返している事業所があります。「今月は夕方の枠が埋まっていますが、来月からヘルパーが1名増えるため夕方も対応できます」という形です。断った相手から翌月に相談が戻ってくるため、結果として紹介の総数が減っていません。
受け入れ実績を1枚にまとめる
言葉で伝える強みより、実際に受け入れた利用者像のほうが説得力を持ちます。
次のような状態像を、A4横1枚の表にまとめてください。
- 独居で認知症のある方
- 週4回の身体介護が必要な方
- たん吸引が必要な方
個人が特定される情報は入れず、どのような状態の方を支えてきたかだけを示します。
ケアマネジャーは、自分の担当利用者と近いケースの経験があるかを見ています。



受け入れ実績があるとわかれば、ケアマネは安心です!なるべく情報は具体的に開示するようにしましょう!
訪問エリアの境界を地図で示す
対応エリアを町名の羅列で伝えると、ケアマネジャーは自分で地図と照らし合わせる必要が生まれます。
その手間が発生した時点で、判断は後回しになります。エリアは地図に線を引いた形で渡してください。



エリアの地図は、1度作れば何年も使えます。
手間の割に効き目が長い、数少ない営業ツールだと思います。
移動時間の扱いは事業所の収支にも直結します。考え方は訪問介護の移動時間は給料に入るのか?最低賃金との関係も解説で解説しています。
ケアマネジャーに残る訪問介護の営業ツール
営業で渡したものは、その場で読まれるとは限りません。多くはファイルに綴じられ、新しい依頼が出たときに初めて見返されます。
つまり営業ツールの役割は、その瞬間に思い出してもらうことにあり、渡した日に読まれるかどうかは重要ではありません。
名刺には対応範囲を3行入れる
ケアマネジャーは多くの事業所から名刺を受け取ります。
事業所名と電話番号しか書かれていない名刺は、綴じられても見返されません。名刺の裏面か余白に、対応範囲を3行入れておくだけで役割が変わります。
| 入れる項目 | 記載例 |
|---|---|
| 対応できる医療的ケア | たん吸引・経管栄養に対応 |
| サービス提供の時間帯 | 早朝6時から夜間21時まで |
| 訪問できるエリア | ◯◯区全域・◯◯市の一部 |
名刺の裏面に、対応する医療的ケア、提供時間帯、訪問エリアの3行だけを刷っている事業所があります。医療的ケアの必要な利用者を担当したケアマネジャーが、名刺ファイルをめくるだけで候補を見つけられる状態です。表面のデザインを変えるより、裏面に3行足すほうが早く効きます。
職種ごとの正しい肩書きの書き方は介護名刺の肩書きはどう書く?職種別の正式名称について解説にまとめています。
チラシとホームページは役割で分ける
チラシとホームページは、使われる場面が違います。
チラシは訪問時に手渡して机の上に残すもの、ホームページはケアマネジャーが後から確認するものです。どちらか一方だけでは、思い出してもらう導線が途切れます。
ホームページ側で押さえる情報は介護施設にホームページが必要な3つの理由|必須コンテンツ5選も解説で解説しています。



名刺を渡した後にホームページを見られている、という前提で作っておくと安心です。
訪問介護事業所の名刺制作は、介護に特化したかいごのヒカリにご相談ください。対応できる医療的ケア・提供時間帯・訪問エリアが一目で伝わる名刺をお作りします。ご興味のある方は、ぜひ以下のサービスサイトをご覧ください。


訪問介護の営業でやってはいけないこと
営業には、続けてはいけない形もあります。良い意図で始めた習慣が運営基準の違反にあたる場合もあり、運営指導で指摘を受けると営業そのものを止めることになります。
ここでは訪問介護事業者が直接の名宛人になっている2つの禁止規定を、条番号とあわせて確認します。
ケアマネジャーへの金品は基準違反になる
指定訪問介護事業者は、居宅介護支援事業者やその従業者に対し、特定の事業者のサービスを利用させることの対償として金品などの財産上の利益を供与してはならないと定められています。
根拠は指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)の第35条です(出典:e-Gov法令検索)。
紹介1件につき謝礼を渡す形は、この規定に触れます。紹介の見返りという性質を持つかどうかが判断の分かれ目です。判断に迷う場合は、自治体の指導担当窓口に確認してください。



手土産くらいなら、と考えてしまう場面はあると思います。ただ紹介の数と結びついた瞬間に、対償と見なされる余地が出てきます。
必要のないサービスを勧めてはいけない
同じ基準の第34条の2では、不当な働きかけが禁じられています。
ケアマネジャーや利用者に対して、利用者に必要のないサービスをケアプランに位置づけるよう求めることが対象です。
回数を増やしてほしい、この時間帯も入れてほしいといった依頼は、利用者の状態から必要性を説明できなければこの規定に触れます。
営業の場で件数を増やす相談を持ちかけるときは、必要性の根拠を先に用意してください。
訪問介護の営業に関するよくある質問
営業を始める前によく届く質問をまとめました。
まとめ|訪問介護の営業で紹介を安定させるために
訪問介護の営業で問われるのは、足を運んだ回数ではありません。
ケアマネジャーが受けられるかどうかをその場で判断できる情報を、繰り返し届ける仕事です。届けるのは次の3つです。
- 曜日と時間帯まで書いた空き枠
- 対応できる医療的ケア
- 訪問エリアの地図
この3つが揃っていれば、訪問の回数が少なくても候補に残ります。
事業所数は5年で2,189か所増え、基本報酬は全区分で引き下げられました。件数を積む力が、そのまま経営の安定につながる局面に入っています。今日から動くなら、近隣の居宅介護支援事業所を10か所リストにして、曜日別の空き枠表を1枚作るところからです。



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