介護タクシーで1日いくら稼げるのか、あなたは具体的な数字を探しているはずです。 検索すると出てくるのは「月40〜80万円」という結論だけで、その根拠となる売上の内訳が見えない、という不満を感じている方は多いと思います。
ぺんすけ実際には、介護タクシーの売上は「運賃」「介助料」「介護報酬」の3層構造でできています。介護報酬97単位(970円)だけを見て計算すると、本当の売上は見えません。
キャリアアドバイザー時代に約300名の求職者と面談しましたが、脱サラして介護関連の仕事を検討している人が最も聞きたかったのは、「月いくら手元に残るか」という1点でした。
売上の表面ではなく、運賃・介助料・介護報酬を合算した本当の1件単価。そして経費と税金を引いた後の実収入。その数字を知っているかどうかで、開業後の現実認識は大きく変わります。



この記事では1件あたりの売上3層構造から組み立て、保険と自費の比率・1件の所要時間・経費を差し引いた手取りまで、3パターンで試算します。
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介護タクシーの1日売上を左右する単価と件数
1日売上の計算式はシンプルです:単価×件数。 ただし保険適用案件の単価は「運賃+介助料+介護報酬」の3層構造で、件数は1件あたりの所要時間で物理的な上限が決まります。



福祉タクシーの場合は、介護報酬がなくなるため「運賃+介助料」の2層構造です。
保険案件の単価は3層構造


介護保険適用の通院等乗降介助でも、事業者の売上は「介護報酬970円」では終わりません。
実際には①運賃、②介助料、③介護報酬の3層を合算したものが、1件あたりの売上です。
| 売上要素 | 内容 | 1件(往復)目安 |
|---|---|---|
| ① 運賃 | 国土交通省認可の距離・時間制運賃。利用者が全額自己負担 | 約3,000〜4,000円(5km往復目安) |
| ② 介助料 | 乗降介助・室内介助等。事業者が自由設定 | 約1,500〜2,500円 |
| ③ 介護報酬(通院等乗降介助) | 97単位×往復2回=194単位。要介護1以上+ケアプラン位置づけ案件のみ | 約1,940円 |
| 保険1件合計 | 約6,500〜8,500円 |
「97単位=970円」は介助行為に対する介護報酬であって、移送そのものの売上ではありません。 運賃と介助料を加えると、保険1件(往復)の事業者売上は6,500〜8,500円が現実的な水準です。
介護報酬の算定対象には条件があります。要介護1以上の認定者で、かつケアマネジャーがケアプランに位置づけたケースのみが対象です。 発着点は自宅⇔通院・指定の場所(病院、銀行、役所など日常生活に必要な場所)が原則で、理美容院・買い物など算定対象外の外出は自費案件として運営します。
自費案件の単価は2層構造
自費案件は介護報酬がない代わりに、事業者が運賃・介助料を自由に設定できます。
国土交通省「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送限定)」の枠組みに基づき、業界相場では1件4,000〜6,000円が目安とされています(運賃+介助料合算ベース)。
| 項目 | 介護保険適用 | 自費案件 |
|---|---|---|
| 1件あたり単価(往復) | 約6,500〜8,500円 | 4,000〜6,000円 |
| 1日件数の目安 | 4〜6件 | 1〜3件 |
| 主な利用者層 | 要介護・要支援認定者 | 認定なし家族・外出支援全般 |
| 売上構成 | 運賃+介助料+介護報酬 | 運賃+介助料 |
意外に見えるかもしれませんが、1件あたり単価は保険案件の方が高くなります。介護報酬1,940円が上乗せされるためです。 ただし自費案件は事業者が単価をコントロールできるため、長距離・冠婚葬祭等の特殊案件で1件1万円超の設定も可能です。



開業初期は保険案件だけで固定客を増やそうと考える事業者が多いですが、実は自費の方が利益率が良いケースがあります。ケアマネジャーからの紹介待ちだけでは稼働率は伸びず、むしろ自費顧客(家族や地域の口コミ)を開拓する事業者の方が安定しています。
1件あたりの所要時間と1日の件数上限


1件に何時間かかるかを正確に把握すると、1日の件数上限が自然に決まります。
病院送迎1往復の所要時間を積み上げると、以下が現実的な目安です。
| 作業 | 時間目安 |
|---|---|
| 準備・出発 | 10分 |
| 移動(行き) | 30分 |
| 乗降介助(行き) | 15分 |
| 病院内待機 | 30分〜60分 |
| 乗降介助(帰り) | 15分 |
| 移動(帰り) | 30分 |
| 1件(病院送迎1往復)の合計 | 約130分〜160分(約2〜2.5時間) |
稼働可能時間を8時間として、1件(往復)あたり所要時間2〜2.5時間を割ると、3〜4件が物理的な上限です。件数は努力や根性で増やすものではなく、1件あたりの時間が決める構造です。



例えば、朝の病院送迎で2時間使えば、残り6時間。その中で複数の病院をはしごするのは物理的に難しい。稼働時間=件数の上限という事実を先に知っておくことが重要です。
介護タクシーの1日売上シミュレーション


介護タクシーの1日稼働は、件数とミックス比率の違いで 保守的・標準・積極の3パターン に整理できます。
前提として、依頼は時間帯で偏ります。朝8〜10時に通院送迎のピーク、昼間(11〜14時)は閑散、夕方15〜17時に通院帰り・自費外出支援で再びピーク。
この朝夕の2山に件数を集中させるのが基本構造です。
| 時間帯 | 需要種別 | 稼働状況 |
|---|---|---|
| 7:00〜8:00 | 準備・移動 | 待機 |
| 8:00〜10:00 | 病院通院送迎(朝ピーク) | 高稼働 |
| 10:00〜12:00 | 通院送迎の継続 | 中稼働 |
| 12:00〜14:00 | 昼休み・待機 | 閑散 |
| 14:00〜17:00 | 通院帰り・買い物・自費外出支援(夕方ピーク) | 高稼働 |
| 17:00以降 | 終了・後処理 | 待機 |
また、年間で見ると稼働日数は月22日のフル稼働ではなく、実質18〜20日が現実的です。 GW・お盆・年末年始は施設利用者が自宅へ戻り、通院件数が減ります。冬の大雪や台風シーズン(8〜10月)は外出自粛も発生します。
年間収入を試算するときは「年間約220日稼働」を前提に計算してください。
以下、3パターンを順に見ていきます。



数値の前提として、保険1件(往復)は6,500円(運賃3,000円+介助料1,500円+介護報酬1,940円を丸めた値)、自費1件は5,000円(業界相場4,000〜6,000円の中央値)です。
保守的パターン(4件)の売上内訳
開業直後や、ケアマネジャーへの事業所案内が浸透していない時期に現実的なのが、この保守的パターンです。



ただし、集客はそんなに簡単ではありません。ケアマネに信頼してもらうために訪問したり、ホームページを整えて紹介されやすい体制を作ることが大事です。
計算式は 6,500円×3件+5,000円×1件=24,500円。朝8〜10時に保険送迎を2件、午前後半に保険1件、午後に自費1件という配分で、稼働時間は6〜7時間に収まります。
月22日稼働で約53.9万円。経費を引いた手取りは月40〜45万円で、開業初期の生活水準としては成立する水準です。
開業半年〜1年で標準パターンへ移行するロードマップを持つのが現実的です。
標準パターン(6件)の売上内訳
複数の開業支援情報で「現実的な目安」とされるのが標準パターンです。
計算式は 6,500円×4件+5,000円×2件=36,000円 です。 朝8〜10時の病院送迎で保険3件、昼間の営業で自費1件、夕方15〜17時の通院帰り・自費外出支援で保険1件+自費1件、という時間帯別の構成です。
例えば、朝8〜10時に保険の病院送迎で2件(13,000円)、 10〜12時に自費案件1件(5,000円)を稼働した場合、すでに18,000円の売上が出ています。 これは標準パターンの一日の半分の時間での実績です。
月22日稼働で約79.2万円。経費9〜14万円を引いた手残りは月65〜70万円で、ここで初めて事業として安定的に回り始める水準になります。
積極パターン(8件)の売上内訳
月100万円ラインを狙う場合に必要なのが積極パターンです。
計算式は 6,500円×5件+6,000円×3件=50,500円 です。 1日8件は待機時間ゼロを前提とした理論値に近く、稼働時間は10〜12時間とタイトです。 自費を3件確保するためには、ケアマネジャー経由ではない自前の集客導線(家族からの直接依頼・地域の口コミ・自費の定期送迎契約等)が必要です。
例えば、積極パターンを達成するには、自費の定期送迎(週1回×4週で月4件・1件5,000円)と 冠婚葬祭の単発依頼(月2件・1件8,000円)の併用が現実的です。 家族からの紹介で固定客を3〜5名抱えると、稼働率が安定します。
積極パターン(8件稼働・月100万売上)で初めて、年収700万円台が視野に入ります。 開業1〜2年目から到達するのは難しく、リピート顧客と自費比率の安定化が前提条件です。
介護タクシーの自費比率が売上に与える影響
件数が同じでも、保険と自費をどの比率で組み合わせるかで1日売上は変わります。 ただし、保険案件は運賃+介助料+介護報酬の3層構造になっており、保険1件単価は約6,500円と自費1件(5,000円)を上回ります。
自費の真価は、件数を増やしにくい昼間帯・特殊案件の単価コントロールにあります。 1件あたりの単価で見れば保険の方が高いものの、自費は時間外・長距離・冠婚葬祭等で単価1万円超の設定が可能です。
同じ6件稼働でも、保険のみと保険+自費ミックスでは売上にどのくらい差が出るのかを比較します。
| 構成 | 1日売上 | 差額 |
|---|---|---|
| 保険6件のみ | 6,500円×6=39,000円 | 基準 |
| 保険4件+自費2件 | 6,500円×4+5,000円×2=36,000円 | -3,000円 |
意外な結果ですが、単価だけで見れば保険6件の方が売上は高くなります(月22日換算で約85.8万円)。 ただし保険案件はケアマネジャー経由の予約が中心で、件数調整が事業者側でしにくいという制約があります。
実際には、保険だけで6件稼働するには、朝8〜10時で3件、昼12〜14時で1件、 夕方15〜17時で2件という分散になり、ケアマネジャーからの予約が安定的に入る必要があります。 これは開業1年目では困難で、保険4件+自費2件のミックスの方が現実的です。
ポイントは2つあります。
一つ目は、保険案件は単価が高いが、件数調整が効きにくいという点です。ケアマネジャーへの営業実績が固まるまでは、自費でカバーする必要があります。 二つ目は、自費は時間帯・特殊案件で単価コントロールができるという点です。
保険で件数を積み上げることが理想ですが、それまでは自費を時間帯の隙間に組み込み、稼働時間を埋める。 これが、開業初期から中期にかけての現実的な戦略です。
自費案件の獲得先として多いのは、要支援・要介護認定を持っていない高齢者の家族送迎や、介護保険が使えない外出支援(買い物・散髪・冠婚葬祭)です。 ケアマネジャーへの事業所案内・サービス担当者会議での実績共有だけでなく、こうした自費顧客層の開拓が稼働率を安定させます。



例えば、自費の買い物送迎を週2件(1件5,000円)確保できれば、月4万円の追加収入になりあmす。保険の予約が安定しない開業初期ほど、自費の比率を意識的に高める必要があります。
介護タクシーの月収・年収のリアルについて
売上が月70万あっても、手取りがいくら残るかは別の話です。 個人事業主は社会保険料・所得税・住民税をすべて自分で納めます。
これまで3つのパターンを見てきました。月売上と年収のおおよその目安を整理すると以下のとおりです。
| パターン | 1日売上 | 月売上(×22日) | 経費控除後(月) | 税引き後年収目安 |
|---|---|---|---|---|
| 保守的A(4件) | 約24,500円 | 約53.9万円 | 約40〜45万円 | 年収400〜450万円前後 |
| 標準B(6件) | 約36,000円 | 約79.2万円 | 約65〜70万円 | 年収600〜650万円前後 |
| 積極的C(8件) | 約50,500円 | 約111.1万円 | 約97〜102万円 | 年収800〜850万円前後 |
※経費月額の目安:月9〜14万円を使用
※税引き後年収は概算です。所得税・住民税・国民健康保険料の詳細は税理士・社会保険労務士に確認してください。
※実質稼働日数は月18〜20日が現実的なため、上記の8〜9割が実収入の目安です。
この記事では手取りまで落とし込んで、脱サラ後の実収入イメージを明確にします。



キャリアアドバイザー時代に「売上の数字だけを見て開業を決めた人ほど、税金と国民健康保険料を計算していなかった」というケースに繰り返し出会いました。月70万円の売上を確保できても、引かれる額を把握していないと、手取りの少なさに開業後に気づくことになります。月の売上だけで判断している人ほど要注意です。
月の固定費・変動費の内訳
介護タクシー開業後の月次経費を、出典・備考別に整理します。
| 費目 | 月額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 福祉車両リース料 | 1〜5万円 | |
| 業務用保険料(月割) | 約1.3〜2.2万円 | (年16〜26万円)÷12 |
| 燃料費 | 1〜4万円 | |
| 通信費 | 0.5〜1万円 | |
| 車庫代 | 0〜2万円 | 自宅駐車可なら不要 |
| メンテナンス費(月割) | 0.2〜0.7万円 | (年2〜8万円)÷12 |
| 車検・点検(月割) | 0.8〜1.7万円 | (年10〜20万円)÷12 |
リース料+保険料だけで月2.3〜7.2万円となります。 燃料費・通信費などを含めた経費合計は、業界の目安として月9〜14万円とされています。



経費を最小化したいなら、福祉車両を軽自動車リース(月2万円程度)にして、事務所を自宅兼用にすれば固定費を大きく削減できます。開業初期ほど、経費管理が手取りに直結します。
事務所賃料(業界相場では月3〜7万円)は、自宅兼事務所にすれば不要にできます。 一人開業であれば、経費を抑えるほど手取りが増える構造です。



例えば、福祉車両を軽自動車リース(月2万円程度)にして、事務所を自宅兼用にすれば、固定費を月5万円台に抑えられます。その分が直接、手取りになります。


1日売上から年収までの4段階計算


標準パターン(6件稼働・1日36,000円)を軸に、4段階で積み上げます。
| 段階 | 金額(目安) | 補足 |
|---|---|---|
| 1日売上 | 約36,000円 | 保険4件×6,500円+自費2件×5,000円 |
| 月売上(×22日) | 約79.2万円 | 業界相場の22日稼働前提 |
| 経費控除後(月) | 約65〜70万円 | 月経費9〜14万円を差し引き |
| 税引き後年収目安 | 約600〜650万円 | 所得税・住民税・国民健康保険料を概算で控除 |
この試算は概算です。税金・保険料の詳細は、税理士・社会保険労務士に確認してください。
具体的には、月79.2万円の売上から月11万円の経費 (リース料3万円+保険料2万円+燃料費2万円+その他4万円)を引くと、月68.2万円の手取り。 さらに所得税・住民税・国民健康保険料(月10〜15万円程度)を引いた実質年収は600万円前後になります。
「月30万の売上で十分」と思った方ほど、要注意です。 介護報酬97単位だけを見て計算すると、本当の売上は3分の1に過小評価されます。
運賃・介助料を含めた3層構造で見ると、標準パターンで月70万円台、積極パターンで月100万円台が現実的な水準です。
よくある質問
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